時代を越えてニュー・タイトルが続々と登場してくるソウルの世界。いろいろ動きはありますが、まずは2018年の収穫を総決算しておきましょう。さまざまなリイシューや発掘盤など膨大なリリースの宝の山から、いま拾い上げて聴いておきたい作品とは!?
例年は年明けに掲載しているソウル・リイシューの振り返りですが、2018年は諸事情につきその年のうちにやってしまいます。2018年のソウル界ではピーボ・ブライソンやタワー・オブ・パワー、チェンジにシック、テンプテーションズといった大御所たちが素晴らしい新作を発表する一方、そのテンプスで活躍したデニス・エドワーズや、かつて本連載でも大きく取り上げた名匠レジー・ルーカス、リック・ホール、ワー・ワー・ワトソン、JB'sのジョン“ジャボ”スタークス、イヴォンヌ・ステイプルズ、デニス・ラサール、そして女王アレサ・フランクリンらがこの世を去るという悲報も届きました。
リイシューは時代の時間軸から切り離されたタイムレスなものではありますが、その作品に初めて立ち会うリスナーには、そこがその人のリアルタイムなわけで……なんて当然のことを前提とするなら、やはり2018年も注目すべき復刻や発掘作品は多かったはずです。マニア向けでも入門編でも、いま扉の前に立ったリスナーにとっては、そこが入口なのですから。 *bounce編集部
2018年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/林 剛

ロイ・Cを後見人としたNYの男性4人組ヴォーカル・グループのアルバムは73年のマーキュリー盤のみだが、シングルはその前後に複数のレーベルから出されていた。うちオーティス・ブラウン主宰のOTB在籍中、75~77年に3つのセッションで録られた曲を集めたのがこれ。高値でも知られるグルーヴィーな表題曲のシングル(テンポ・アップしたヴァージョンも含む)は当時リリースされたが、大半の曲は未発表だったもので、雄大なシカゴ・ソウル風やスウィートなニュージャージー・ソウル風、ダンサブルなディスコなど、70sヴォーカル・グループの旨味を凝縮したような内容に惚れた。

VARIOUS ARTISTS For Discos Only: Indie Dance Music From Fantasy & Vanguard Records (1976-1981) Craft(2018)
ディスコのリイシューも相次いだ2018年、西のファンタジーと東のヴァンガード発となるダンス・クラシックを集めたCD3枚組(アナログは5枚組)は質と量、12インチ・ディスコ・ミックスのレア度という点で圧倒的だった。シルヴェスター、ブラックバーズ、サイド・エフェクトといった代表格のヒットをはじめ、アルフォンス・ムザーン参加のプセーによるテイスト・オブ・ハニー曲の換骨奪胎、アイク・ターナーが元妻ティナとホーム・グロウン・ファンクを迎えた猥雑なファンク、レインボウ・ブラウンのガラージ名曲など、ディスコ・サウンドの多様性を伝える快作。音質も良い。

MURO監修の〈Diggin' Universal Music〉シリーズにてマーズの82年作と共に世界初CD化されたこれは、長年リイシューを待っていたバリー・ホワイト絡みの一枚。制作を手掛けたヴァンス・ウィルソンを含む4人組ヴォーカル・グループ唯一のアルバム(75年)で、バリーの“I'm Gonna Love You Just A Little More Baby”やトム・ブロックの“Have A Nice Weekend Baby”などがファルセット~テナーのリードで歌われる。洗練しきらないイナタさも味だが、ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ流儀でフィリー・ソウルを真似た曲もあり、バリーの絶頂期を改めて実感した。

68年にスタックスから出されたシングル全134曲を5枚のCDに収めたブック型ボックスは、メンフィスでのキング牧師暗殺から50年という歴史的な節目も意識して制作されたのだろう。アトランティック配給期と指マークの新体制期がまざる転換の年で、前年に他界したオーティス・レディングの“(Sittin' On)The Dock Of The Bay”を筆頭に、トリビュートを含めて亡きオーティスの影響が色濃く滲む曲が多いのも同年ならでは。ステイプル・シンガーズやソウル・チルドレンの登場とともに、スワンプ・ロック、ジャズ、フィリー・ソウルまで拡張していくおもしろさがある。

近年はソウル系以外のリリースが目立つニュメロだが、オハイオ州クリーヴランドのローカル・レーベル、Saruのシングルを傍系のホロスコープやパイシーズなどの音源も含めてまとめた本盤は70年前後のモダンで熱いソウルが詰まった力作だ。彼の地を代表するルー・ラグランや初期のオージェイズにいたボビー・マッシーをブレーンとした楽曲は粒揃いで、熱血歌唱を聴かせるデヴィッド・ピープルズなどアーティストも実力派が揃う。クリーヴランド版ジャクソン5とでも言うべきポンデローサ・ツインズ+1の“Bound”はカニエ・ウェスト“Bound 2”で引用された名曲。

サルソウル原盤となる76年のフィリー録音作で有名な歌姫が79年にカナダのクォリティから出したセカンド・アルバムの初CD化もディスコ・リヴァイヴァルがもたらしたものだろう。前年に自身のオーケストラ・アルバムでキャロルを起用した名匠トニー・ヴェイラーの制作(NY録音)で、サルソウル盤のイメージを踏襲しつつ、前作よりもBPM速めの流麗なディスコ・サウンドで主役を出迎えている。“Dance The Night Away”を筆頭に、快活なヴォーカルでエレガンスを振りまきながらダンス・ビートに乗る感じはテルマ・ヒューストンの如し。未CD化のディスコ名作はまだまだある。

忘れ去られたベイエリア・ファンクの名作とでも言おうか。後にサンタナのヴォーカリスト/鍵盤奏者として活躍するリオン・パティーロが率いたサンフランシスコの男女/人種混成バンドのファースト(70年)。クリエイション名義による74年のアトコ盤より知名度は劣るが、サンプリングやレア・グルーヴ文脈で人気の“Mirage”など、スライ&ザ・ファミリー・ストーンとサンタナを繋ぐようなファンキーでポップな楽曲はこの時代にしか生まれ得ない熱気に満ちている。女声リードのやるせないスロウ・ファンクも上々の出来。英アシッド・ジャズのリイシューはいまも見逃せない。

VARIOUS ARTISTS Get down with the Philly Groove selected by Hiroshi Nagai ソニー(2018)
シグマ・サウンド・スタジオ設立50周年でもあった2018年。イラストレーターの永井博氏がフィラデルフィア・インターナショナルの音源を中心としたフィリー・ソウル曲からなるコンピを出したのも何かの導きだったのかもしれない。DJとしても活動する永井氏らしいモダンなダンス・ナンバーを有名・無名問わず並べた自由度の高い選曲で、カレイドスコープやロバート・アップチャーチなどのシングル曲も収録。本盤に登場する“Philly Jump”を収録したインスタント・ファンクの76年作『Get Down With The Philly Jump』が単体で世界初CD化されたのも快挙だった。

ハイ・ヴォルテージやラヴ・クラフトといったバンドで歌っていたレディー・ファンカーが77年に発表したパラシュート原盤の初作は今回が初の正規CD化。しかも7インチ・ヴァージョンなどを含む拡大盤で、ストリングスが響き渡るシングル“Two Sides”(78年)も収録された。Pファンクやノーマン・ホイットフィールドの向こうを張るようなサイ・ミッチェル制作のディスコ・ファンクを奏でたのは西海岸の腕利きで、そのファンキネスにワウ・ギターで貢献していたのは2018年に亡くなったワー・ワー・ワトソンだった。余裕な表情で歌うラロミーはもちろんカッコいい。

ARETHA FRANKLIN The Atlantic Singles Collection 1967-1970 Rhino(2018)
2018年の音楽界における最大の損失はアレサ・フランクリンの他界だろう。アトランティック初期にあたる67~70年のシングルA/B面(34曲)を発表順に並べたこの作品集は生前に企画されていたが、結果的に追悼盤となった。NYをベースにマッスル・ショールズやマイアミでも録音を行い、ジェリー・ウェクスラーの尽力によってアレサが〈女王〉の称号を手に入れたこの時期の楽曲はやはり至宝。全曲モノラル音源のリマスターとなる本盤では、キング・カーティス一派や南部の腕利きたちによるバック演奏とアレサのパンチのある声が塊となって響いてくる。続編にも期待。
2018年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ! 選・文/出嶌孝次

テンプテーションズの新作が素晴らしい収穫だった2018年……というところから繋げるのは強引だとしても、彼らと並ぶ60年代モータウンの看板グループがABC/ダンヒルに移籍してからのシングル集もまた大きな収穫であった。ロッキッシュなファンク感を纏った移籍ヒット“Keeper Of The Castle”(72年)をはじめ、エレガントな成熟味を湛えたこの時代最大のヒット“Ain't No Woman(Like The One I've Got)”など、72~79年のシングルA/B面を網羅した2枚組で、13曲は初CD化。後世から見た全盛期でなくても、その時代ごとの魅力が発見できるという好例。

2018年のソウル界における大ニュースといえば……エディ・リヴァートが示唆したオージェイズの2020年での引退。このタイミングでリイシューされたのが息子のジェラルドらを制作陣に起用してリフレッシュを図った80年代最後のアルバムだった。現時点で最後のNo.1ヒット“Have You Had Your Love Today”を含む意欲作で、ヴェテランなりに当時のストリート色を導入した熱い内容は、ニュー・ジャック・スウィング再評価の文脈でも楽しめるはず。そうでなくてもグループ結成60周年という節目ではあったわけで、新年に控えるラスト・アルバム『The Last Word』も楽しみでならない。

「サタデー・ナイト・フィーバー」上陸40周年に絡めて日本でも往年のディスコ関連リイシューは凄まじかったが、いろんな意味でのディスコ発掘は世界中で進行している。こちらは着々と復刻を進めるウエストバウンドのディスコ音源集で、その道の開祖となるトム・モウルトンのディスコ・ミックスを中心にコンパイルされたものだ。〈Studio 54〉で最初にプレイされたと言われるCJ &カンパニーの“Devil's Gun”をはじめ、デトロイト・エメラルズの“Feel The Need”、キング・エリソン“Manhattan Love Song”などが長尺で収録された強力な一枚となっている。

もはや聴ききれないほどの量が積み上がっているモータウンの蔵出しだが、エイスによる女性シンガー/女性グループの未発表音源を集めた〈Motown Girls〉シリーズ第3弾はやはり外せない内容になっていた。グラディス・ナイト&ザ・ピップスが66年にモータウンで初録音したという“In My Heart I Know It's Right”など数曲はかつて配信で蔵出しの済んでいる音源ながら、すべて初CD化となる大半の楽曲は完全未発表だったものだ。録音年代の幅が61~69年と広いだけに曲調もさまざまで、運のなかった面々も多くいるとはいえ一定以上のクォリティーなのは流石。

ソーラー音源の何度目かの復刻キャンペーンが英国と日本で別個に始まった2018年。その動きはまだ続いている最中だが、ひとまずの収穫となったのはレーベルきってのディスコ・クイーンが系列レーベルに残した全アルバムを含む6in3のセットで、すべて単体で20年近く前にCD化されて以来の復刻となる。ウィスパーズやレイクサイド、シルヴァーズ、フェンデレラら各時代の人気者たちが裏方となって手掛けた華やかな佳曲揃い。“I Gotta Keep Dancin'”(77年)や“Dance With You”(79年)を筆頭に、これまたディスコ再評価の流れで聴かれてほしいタイトルだ。

ボビー・ブラウン久々の新曲も届いた2018年……その原点にあたるバブルガム・グループの金字塔もリイシュー。アーサー・ベイカーが主宰するストリートワイズの復刻シリーズの一環で、スタイリスティックスのモーリス・スター制作盤『Some Things Never Change』『A Special Style』と並んでの登場となった。当時のヒップホップ(エレクトロ)を大胆に導入した瑞々しいポップさはいまも変わらない。10年前の25周年時にもリイシューはあったが、これは言うなれば35周年記念盤と言ったところで、表題曲の〈Sing-A-Long Version〉などシングル音源も追加収録されている。

世界初CD化もまだまだ出てきた2018年。これは〈Ultimate Breaks & Beats〉収録の“Love And Affection”で知られるレアなニュー・ソウル盤で、収監中だった主役が刑務所内で5年かけて制作したという唯一のアルバムだ。ジェリー・ゴールドスタインの指揮下でグレッグ・エリコ(元スライ&ザ・ファミリー・ストーン)がプロデュースとドラムスを担当し、ダグ・ラウチ(元サンタナ)がベースを弾いた演奏は相当タイト。現代にも通用する長尺メロウ・ナンバー“Changin' Times”やストーン・ローゼズを連想させるリズミックな“Comin' Home”など、いま聴いても新鮮な閃きでいっぱいだ。

THE SPINNERS While The City Sleeps -Their Second Motown Album Plus Bonus Tracks Real Gone(2018)
このあたりは時流と関係なくマストと言っておきたい、モータウン傘下のVIPに残された名盤『2nd Time Around』(70年)に初出の10曲+初CD化の3曲という蔵出し音源をプラスした増補盤。60年代的なスタイリングで整えられた未発表音源の数々を聴けば、スティーヴィー・ワンダー作の“It's A Shame”がいかに画期的だったかもわからんではない。初作の同形態によるリイシュー『Truly Yours - Their First Motown Album With Bonus Tracks 1963-1967』(2012年)と比べれば驚きは小さいものの、ケント・ソウルらしい明快な解説もあって毎度の発掘ロマンが広がる。

シック名義で久々にアルバムを発表したタイミングに合わせてナイル・ロジャーズが監修した決定盤。シックの1~3作目とシスター・スレッジのブレイク作『We Are Family』に、別エディットや12インチ・ミックス音源集〈Original '77-'79 Remixes & Edits〉を加えた5枚組ボックスで、英アビー・ロード・スタジオでのリマスタリングも話題になった。オリジナル作品の価値そのものについては言うまでもないが、この機会にもう一歩進んで『Real People』(80年)以降のアルバムも含めた単体のリマスターやノーマ・ジーンのソロ作なども再復刻を願いたいところではある。

よく考えれば生誕60周年だったプリンス。そんな年に届いたニュー・タイトルは、83年にカセットテープに収められたピアノ弾き語りの楽曲たちを作品の形に整えてきたもの。完成型に近い蔵出し音源なら他にもあるのでは……という気もしなくもないが、プロトタイプ状態の“Purple Rain”やジョニ・ミッチェルらのカヴァー、完全な初出の未発表曲も含むスケッチやデッサンが殿下のプライヴェートに近い姿を記録した歴史的な資料として価値があるのは確かだ。入手困難だったNPG時代も含む過去音源の配信もスタート済みで、順次フィジカル化が始まる新年の展開にも期待したい。
リイシューは甘い真冬の舌先で踊る
海外作品のリリース量が減る年末年始ではありますが、1年間を振り返ってチェックし損ねていたあれこれを堪能するのには打ってつけの期間かもしれませんね。ってことで、ここ最近の紹介し損ねていたブツも含めてご案内しましょう。

まずは、上掲の『Westbound Disco』にも“Devil's Gun(Tom Moulton Mix)”が収録されている、CJ &カンパニーの未発表音源集『Ain't It Amazing(The Unreleased Westbound Masters)』(Westbound/Solid)を大推薦! 彼らは短命ながらもデトロイトを拠点に活動した男女混声グループで、サウンド面はデニス・コフィとマイク・セオドアのコンビが統率、前述の勇ましい“Devil's Gun”やヘヴィーDのネタ使いで知られる“We Got Our Own Thing”などで77年当時のディスコ・チャートを席巻した5人組です。今回は“Devil's Gun”のオリジナル・ミックスも含む12曲の未発表音源が収録されており、いわゆるディスコ狙いの典型に終わらず、人気の“Free To Be Me”にも通じるブライトな青春ソウル・ナンバーも披露。そもそも彼らはオリジナル・アルバム2枚が未CD化のままなので、この先はそれらの復刻にも期待したいところですね。

お次はこれも70年代後半にディスコ時代を彩ったユニット、ウルトラファンクの75年作と77年作を2枚組で収めた『Ultrafunk/Meat Heat』(Robinsongs/Solid)です。こちらはロンドンのソウル/ファンク・レーベルであるコンテンポが送り出したスタジオ・プロジェクトで、当時のディスコらしいノヴェルティー・ソング的な“Kung Fu Man”をはじめ、スティーヴィー・ワンダー“Living For The City”やビル・ウィザーズ“Use Me”などのカヴァーをゴリゴリ骨太なインストで聴かせてくれます。音が流麗になった『Meat Heat』ではバットマンを下敷きにした“Gotham City Boogie”など軽薄なカッコ良さが全開になっていたり、絶賛する必要は皆無ですがなかなかの聴きモノ揃いですよ。

最後はナウ・アゲインのモダン・ソウル・コンピ『Soul Cal: Disco & Modern Soul 1971-1982』に楽曲が収録されて好事家のドギモを抜いたNYのデュオ、キー&クリアリーの編集盤『Love Is The Way』(Now-Again Reserve)をオススメ! 70年代後半から80年代半ばまで彼らがひっそり推進してきたモダン・ソウル/ブギーの旅をイーゴンが丹念に監修した渾身の楽曲集となっていますので~! *出嶌孝次