アル・シュミットらの音響マジック
TOTOが制作上、重視したのはロックとAORを合体させるキャッチーな楽曲、完璧なサウンドを形作る演奏だけではなかった。そういった音楽を最良の状態でパッケージすべく録音にも気を配った。その生涯で20回ものグラミー賞を受賞した名エンジニア、アル・シュミットを招いたのだ。これまた、名エンジニアの誉れ高いトム・ノックス、グレッグ・ラダニーという3人がチームを組んで『聖なる剣』の録音エンジニアリングを担当した。
アル・シュミットは“Rosanna”、“Africa”など主要楽曲のリズムトラックの録音、全体のまとめ役を務めた。アル・シュミットを招くことを強く主張したのは、スタジオミュージシャンとして彼と数多くの仕事をしてきたジェフ・ポーカロだった。ジェフはアル・シュミットの音響マジックのファンだったのだ。
どの『聖なる剣』よりも優れた音響空間の広がりと生々しい音質
今回の試聴に当たっては94年発売の20bitマスタリングのゴールドディスク(SRCS 6997)、良音で知られるモービル・フィデリティ・サウンド・ラボのオリジナルマスターレコーディングディスク(UDCD 747)も用意して比較試聴してみた。だがアルバムの冒頭を飾る“Rosanna”のイントロのドラムを聴き比べるだけで、音質的には今回のリイシュー盤が圧倒的に良音だと分かった。耳に自信が無い方でもすぐに分かる音質の差だ。スネアの空間への広がり感、生々しい音質はこれまでリリースされたどの『聖なる剣』のCDよりも優れている。
名エンジニア、エリオット・シャイナーが5.1chサラウンド化した今回の『聖なる剣』も再生環境があれば楽しい。“Rosanna”でスティーヴ・ルカサーのギターが5台のスピーカーから怒涛の如く迫ってきたのは圧巻だった。
音楽は安価な配信、事によってはタダで聴くのさえ当たり前になってしまっている現在、この“Rosanna”はフィジカルなディスクでなければ味わえない良音と魅力があることを教えてくれる1枚だった。
RELEASE INFORMATION


リリース日:2022年8月3日
品番:SICP-10139
価格:4,950円(税込)
日本独自企画/完全生産限定盤
■SACD層:Multi 5.1ch|Stereo 2ch(全10曲)
2003年DSDマスタリング(オリジナル・アナログ・マスターより)
Mixed for 5.1ch サラウンド by エリオット・シャイナー
Mastered for 5.1ch サラウンド by ダルシー・プロペル
日本初リリース
■CD層:Stereo 2ch(全14曲)
2018年デジタルリマスター(オリジナル・アナログ・マスターより)
Remastered by TOTO and エリオット・シャイナー
日本初CD化4曲を追加収録
TRACKLIST
1. Rosanna
2. Make Believe
3. I Won’t Hold You Back
4. Good For You
5. It’s A Feeling
6. Afraid Of Love
7. Lovers In The Night
8. We Made It
9. Waiting For Your Love
10. Africa
11. Devil’s Tower(from『Old Is New』) 日本初CD化+
12. Fearful Heart(from『Old Is New』) 日本初CD化+
13. In A Little While(from『Old Is New』) 日本初CD化+
14. Oh Why?(from『Old Is New』) 日本初CD化+
+CD層のみのボーナス・トラック
■豪華仕様と封入特典
・SACDマルチ・ハイブリッド・ディスク仕様(SACD 5.1ch & 2ch、そしてCDがこの1枚で再生可能)
・18cm × 18cmの7インチW紙ジャケット仕様
・オリジナルLP(US初版)内袋復刻
・オリジナルLP盤風レーベル面CD
・『TOTO IV~聖なる剣』1982年JAPANツアー・パンフレット(カラー44P:リサイズ)〈40年ぶり復刻〉
・『TOTO IV~聖なる剣』1982年JAPANツアー 5月17日(月)日本武道館公演チケット(原寸大)〈40年ぶり復刻〉
・『TOTO IV~聖なる剣』1982年JAPANツアー告知ポスター(リサイズ)〈40年ぶり復刻〉
・『TOTO IV~聖なる剣』からカットされた日本盤7インチ・アナログ・シングルジャケット4種(原寸大)〈40年ぶり復刻〉
・『TOTO IV~聖なる剣』オリジナルLP(国内盤)帯2種(被せタイプ帯と再発盤:リサイズ)〈40年ぶり復刻〉
・『TOTO IV~聖なる剣』国内再発盤LP(1984年)に封入された、TOTOメンバーのセッション・リストBOOK(リサイズ)
・1982年発売のオリジナルLPライナーノーツと84年再発盤LPライナーノーツに加え、2018年発売の「AOR AGE」(シンコー・ミュージック)『TOTO IV』総力特集号に掲載されたメンバー自身による『TOTO IV』全曲解説、さらに新規ライナーノーツと歌詞対訳を掲載した日本語ブックレット(モノクロ44P)
PROFILE: TOTO
ボズ・スキャッグス『Silk Degrees』(76年)のレコーディングに参加したジェフ・ポーカロ(ドラムス)、デヴィッド・ペイチ(キーボード)、デヴィッド・ハンゲイト(ベース)に、ジェフの弟スティーヴ・ポーカロ(キーボード)とその同級生のスティーヴ・ルカサー(ギター)が加わる形で結成。米LAのスタジオシーンで引く手数多だった腕利きの若手セッションミュージシャン集団による、高い技術とセンスに裏打ちされた斬新で緻密なスタジオワーク、洗練された都会的なサウンドメイキングによる親しみやすい楽曲で一世を風靡、声高にイデオロギーを掲げるロック的なものとは異なる、心の機微を感じさせるサウンドとメロディーで“Africa”“Rosanna”“99”など世界的なヒットを連発し、70年代後半から80年代のウェストコーストシーン/AORを象徴するバンドとなった。この数年間のTOTOの人気は、キャリアのこの時点にあるバンドとしては極めて珍しい大きな復興期にあった。2018年の結成40周年は、新しいグレイテストヒッツアルバム(『40 Trips Around The Sun』)のリリースと、バンド史上最高の成功を収めた世界ツアーによって特徴づけられた。レコード音楽の歴史において、個人またはグループとして、TOTOのメンバー以上にポップカルチャーに大きな印象を残したアンサンブルは少ない。このバンドのメンバーは、個人としてなんと計5,000作以上ものアルバムに参加しており、合計で5億枚も売り上げているのだ。これらの作品のうち200作以上が、NARAS(全米レコーディング芸術科学アカデミー)のグラミー賞ノミネートによって称賛されている。70年代後半~80年代半ばにかけては、当時数多くの日本人アーティストもTOTOサウンドを参照したり、メンバーを実際にレコーディングに起用したりと、現在世界中で人気沸騰中のシティポップの音像形成に大きな影響を与えた。グループとしてのTOTOは世界中のすべてのストリーミングサービスにおいて20億回以上の再生回数を誇る。最大のヒット曲の1つ“Africa”は、2020年のわずか1年間でプラチナシングルから最近の6xプラチナシングル再認定にまで躍進し、彼らは新世代のファンを獲得した。結成40年以上を経て、マイケル・ジャクソンの『Thriller』という史上最高の売上を誇ったアルバムを含む、文字通り何千もの作品への参加クレジットを重ね、さまざまな栄誉を冠したTOTOは、いまも世界屈指の売上を誇り、ツアーを行うレコーディングアーティストの1組であり続けている。多くのアーティストがサウンドやプロダクションの基準とする彼らは、音楽的信用性の純然たる代名詞として、音楽コミュニティー全体が設けた基準を引き続き超越していく。彼らはポップカルチャーそのものであり、トレンドやスタイルの移り変わりを生き延び、時代性を保ちながら多世代にわたる世界中のファンを享受している数少ない70年代のバンドのひとつなのだ。なお、2022年は結成45周年、2023年はデビュー45周年というビッグイヤーを迎える。