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 近年のジャズやヒップホップへの接近をさらに拡張し、本作ではアフリカやブラジルからの影響も感じられ、“マシンの風”はトーキング・ヘッズばりのパンク・ファンクに。朗々と歌い上げるようなヴォーカルも新鮮だ。

 「“マシンの風”はアフロ・ジャズやアフロビート、南アフリカのアマピアノとか、ああいうビートの曲が欲しいと思って作りました。ブラジルの音楽やスピリチュアル・ジャズもよく聴いていて、そういう音楽からの影響もあると思います。この一年は自分の声や歌とも向き合って、爆音でバチーンとぶつかる音楽も引き続きやりつつ、もう少し楽器と声と言葉が共鳴するようなイメージにもしたくて。そうなるともう少ししなやかな歌じゃないと、他の楽器と関係を持てないんじゃないかと思ったんです」。

 アルバムを締め括る“Y.O.M.I.”はヴォコーダーを用いた前半から、途中で生の声に切り替わる構成がコンセプチュアルな仕上がり。ゴーストとマシーン、つまりは、精神と肉体について見つめたアルバムを見事に締め括っている。

 「実はこの曲が最初に出来た曲で、ちょうど新しいヴォコーダーを手に入れたタイミングだったんです。これは〈胡蝶の夢〉じゃないけど、霊魂のないはずの機械が死後の世界にいる夢を見るっていう曲で、アルバムの最後にこの曲が来ると、ゴーストが宿ってるマシーン自体が主体となって歌っているように聴こえる。そこから転生して、東京で目覚め、また1曲目に戻るイメージ」。

 新しいメンバー/新しい家族との〈生活=制作〉な一年を経て完成した『GHOST IN THE MACHINE DRUM』は、ボアズの新境地にして傑作だ。そして、結成から15年を経て、さまざまな変化を経験しながらも、ボアズがボアズであることを証明する作品でもある。

 「十代の頃から〈転がるがままに転がってみせる〉ってことこそがロックンロールなのかもしれないと思っていて。停滞したり、どこか居心地のいい場所を見つけたりしてしまったら、それはロックンロールとは言えない気がする。スタイルとかジャンルはいろいろあると思うけど、転がり続けることが自分たちの宿命だと思うので、ジャズが入ろうがヒップホップが入ろうが、ロックの矜持は全然キープできてると思いますね」。

SuiseiNoboAzの近作を紹介。
左から、2020年作『3020』、2021年のDVD『MARK 3020』(共にSuiseiNorecoRd)、2017年作『liquid rainbow』(SuiseiNorecoRd/Village again)