2019年、2020年、2021年と続けてきた、タワーレコードスタッフが選ぶ今年のマイベストレコード。2022年も、もちろんお届けいたします! 今回は、過去最多の24人が全国の店舗から参加。今年の代表作からメディアの年間ベストでは取り上げられないようなマニアックな作品、レジェンダリーな再発盤まで、ジャンルを問わず、各々がレコードで聴いてほしいおすすめ盤、お気に入り盤を紹介してくれました。年末年始は、この記事をガイドに、お近くのタワレコでレコードディグはいかがでしょうか?
そして、今年もMikikiをご愛読いただき、ありがとうございました! また来年もどうぞよろしくお願いいたします。 *Mikiki編集部
【目次】
1. TANAKAHMANN(新宿店)、田之上 剛(TOWER VINYL)、山口勝朗(なんばパークス店)、石黒 亮(横浜ビブレ店)
2. 吉原裕也(札幌パルコ店)、T藤瀬雅文(京都店)、平林大樹(仙台パルコ店)、髙橋直樹(TOWER VINYL)、柴野直史(池袋店)
3. 廣川 奏(商品統括部)、小畑雄巨(神戸店)、中上雅夫(新宿店)、平井篤紀(新宿店)、森山慶方(新宿店)
4. 村越辰哉(新宿店)、中本颯一郎(新宿店)、具嶋美保子(福岡パルコ店)、寺本将巳(福岡パルコ店)、福島輝之(福岡パルコ店)
5. 清水真広(梅田NU茶屋町店)、梶原颯人(渋谷店)、小嶋千夏(TOWER VINYL)、塩谷邦夫(TOWER VINYL)、天野龍太郎(Mikiki編集部)
TANAKAHMANN(新宿店)
いまやアジアも含めた海外でも人気のコンテンツとなったシティポップ。ただ、逆輸入でバズっているという楽曲の数々を聴くにつれ〈でもこれって歌謡曲じゃね?〉と違和感を感じたりしている皆さまにレコメンドしたい一枚がコチラ!
いまから42年前に大学生のアマチュアミュージシャンたちが集まり、卒業記念で制作されたという、so niceやはちみつぱい、YAMAMOTOなどの自主盤シティポップにも勝るとも劣らないクォリティーを誇る本作。当時、なんと7畳間の個人宅にメンバーが集まりわずか2週間で録音・制作されたという逸話もびっくりの素晴らしい内容で、演奏・アレンジ、ボーカルに録音まで、すべてにポップスの魔法が掛ったかのよう。
冒頭、オープニングを飾るブリージンなAOR①“ニューヨークなんて行かない”から始まり、ギターカッティングから始まるファンキーグルーヴ②“One Night Darling”メロウフローター③“Forget and Forgive”、さらに女性ボーカルがリードをとるミッドチューン④“ほほえみの中で”、続くニューソウルを彷彿とさせるアルバムタイトル曲⑤“Feeling Like A Child”……いやはや、この調子で全9曲すべてが水準以上の楽曲が続くんですよ。
正直、シティポップってアルバム通して全曲グッド!な作品ってホント一部なんですけど、そういった意味でもレアな作品だと思います。なにより彼らの若さ、そして音楽への愛がこの作品をスペシャルなモノにしていると思うんですよね。
今回のリイシューに際しての永井博氏による新装ジャケット(オリジナル盤のチープなジャケットも味わい深いですが!)、そしてオリジナルのマルチテープをヴィンテージのアナログ機器に通してリミックスした新マスター音源の音質も優秀だと思います。
個人的には〈シティポップ〉という狭い括りではなく、洋楽フュージョンやAORマニアにもオススメしたい〈アナログレコード今年の一枚〉に迷わず挙げたい一枚でした。
気になった貴方はオフィシャルサイトからチェックしてみてください。きっと一生モノの作品になりますよ!
田之上 剛(TOWER VINYL)


毎年恒例となっているマイベストレコード記事の依頼の季節になりました。今年もメジャー、インディーにかかわらず、ジャンルもソウル系を中心にロック、ジャズ、レゲエ、ラテンなどなど多岐にわたって聴きましたが、個人的には昨年以上に良質な作品のリリースが多く選盤にとても時間が掛かりそうな感じでした。
毎年レコード棚を整理する事も踏まえA to Zで何を買ったかを見直すのですが、タイミング悪くレコードの収納棚変更中で足の踏み場もない状況。そのため、単純に最近でも良く聴いている盤の中からアルバム1枚とシングル1枚に絞りオススメ盤をご紹介することにしました。
2003年に“Suga Suga”が大ヒットしたベイビー・バッシュを覚えてますか? そのベイビー・バッシュが手掛けたソウルバンド、バッシュトーンズの『Souldies Are Forever』が素晴らしい。チカーノソウルの重要人物ジョーイ・キニョーネス参加というだけで気になりますよね。しかも、良盤を数多くリリースしているマンゴー・ヒルからの発売です。1曲目の“Maybe It’s Time”を聴いてもらえればスイートソウル、チカーノソウル好きなら間違いなく刺さるはず。他にも盟友フランキー・Jやキッド・フロストが参加。近年のチカーノソウルの中でもアルバムとしてクォリティーが高いです。
そしてシングルではダップトーンから発売されたジェイレン・ンゴンダの“Just Like You Used To”が最近のお気に入り。印象的なファルセットではじまりパーカッションが心地よく入ってくる感じ、どこかで聴いた事があるこの雰囲気、完全にマーヴィン・ゲイです。情報が全くない状況で聴いたら、現行のシンガーだと思えないですよ。今、アルバムの発売が一番楽しみなアーティストです。
山口勝朗(なんばパークス店)

初めて自分のお小遣いで買ったCD作品で、初めてライブに行ったバンドという個人的に非常に想い入れの強いバンドのファーストアルバム(88年作)が、初頭にアナログ盤が再発され震えました。
80年代後半のUKシーンといえばニューウェーブやブリットポップ前夜の時代感の中で、このプリミティヴズが奏でる60年代風のレイドバックした3分間ポップスはむしろ新鮮で、短い楽曲の中に詰め込まれた極上のポップメロディーとノイジーなギターをアナログで聴くと一層レトロ感を演出してくれます。
冒頭収録のキュートなボーカルとノイジーなギターが絡むブレイクのきっかけとなったシングル“Crash”からラストのガレージーな“Buzz Buzz Buzz”まで、疾走感とワクワク感がレコードをB面に裏返すことすら楽しくさせてくれるかのようです。このリリースでメンバー監修によりリマスター音源が採用されており、音源もクリアになったことで今になって聴き取れていなかったアレンジも再発見。ターンテーブルに乗せてゆっくり音楽を聴く、という時間の大切さを改めて痛感しました。
石黒 亮(横浜ビブレ店)

伝説のギタリスト〈ジェフ・ベック〉、名優〈ジョニー・デップ〉、奇跡の共演! それだけでも聴いてみたいという衝動に駆られた一枚で、俳優ではなくアーティストとしてのジョニーを存分に堪能できる作品です。2020年にデジタル配信されたジョン・レノン“Isolation(孤独)”、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのクラシック“Venus In Furs(毛皮のヴィーナス)”やマーヴィン・ゲイのソウルクラシック“What’s Going On”も収録された全13曲! ジェフ・ベックのギターと絡み合うジョニー・デップの伸びやかな歌声は、俳優の音楽業という枠にははまらない圧巻な歌声でした。ジャケットもカッコいいので、インテリアとしても活用してます。
吉原裕也(札幌パルコ店)
今年も札幌の夏はあっという間に終わり、だいぶ肌寒くなってきた頃に届いたブラジルの若き奇才の待望のセカンドアルバム。2017年に発売されたファーストアルバム『Recomeçar』ですぐに彼の虜となり今後の動向に注目と思いつつもあれから5年、すっかり忘れていたところへの南国からのハートウォーミングなアンサンブルポップの曲の数々に再び耳と心を奪われた2022年となりました。デジタルやCDでのリリースもありますが、彼の声や奏でる楽器の音色のきめ細かな抑揚をじっくり奥深く堪能するにはやはりアナログがおすすめな作品。できる限り雑音をシャットアウトし幻想的な音世界に奥深く入り込んでください。個人的にはB面の⑤”Meus 26”~⑥”Falta”が至高のひととき。時間も場所も超越させてくれる美しき逸品です!
藤瀬雅文(京都店)

今時アナログ4枚組(CDだと2枚組)の超大作とは思い切った作品だな、と思いつつ聴いたビーチ・ハウスの8枚目にして初のセルフプロデュース作品。全4章で構成されるコンセプトアルバムで、アナログだとそれぞれの面が1つの章になっているという構成なので、アナログで聴くと作品の意図がよく分かるし、章ごとに聴くことで一つの物語を読んでいるような感覚を覚える。ドリームポップを主体に、シューゲイズやチルポップで彩られたメランコリックで浮遊感のある現代的なサウンドを有しているが、アルバムの構成や意図が70年代のプログレ的なセンスに溢れた不思議な作品。セルフプロデュースだからこそ到達した、現代のプログレッシブミュージックとも言うべき超大作にして彼らの最高傑作。
平林大樹(仙台パルコ店)

edbl, Kazuki Isogai 『The edbl x Kazuki Isogai Sessions』 The College Music/Pヴァイン(2022)
アナログリリース量増加がうれしいこの頃、先日渋谷店限定販売で思わず買ってしまったカールトン&ザ・シューズ『This Heart Of Mine』復刻アナログも改めて聴き惚れる名盤でしたが、2022年は磯貝一樹氏の心地よすぎるネオソウルギターサウンドにどっぷり! 毎作、最高のメロウ&ソウルフルサウンドで楽しませてくれるエドブラックが何と今大注目の日本人ギタリスト、2022年にSANABAGUN.加入も果たした磯貝一樹氏とタッグ。トム・ミッシュ以降のネオソウルギターを奏でる日本人トップクラスのセンスが刺ささりまくる本作、サウスロンドンサウンドど真ん中のこのコラボは相性抜群、文句なしの大傑作です!
髙橋直樹(TOWER VINYL)
年代問わずUKジャズのアナログレコードの収集を行っていたつもりでしたが、近年のUKジャズ作品にはあまり触れてこなかったので、反省の意味も込めてエズラ・コレクティヴの新作(セカンドアルバム)を購入しました。コレオソ兄弟(ドラムス/ベース)を中心にソウル、アフロビート、ヒップホップ等、様々なジャンルをバランスよく融合させた新スタイルは、これまで自分が描いていたUKジャズの概念を覆すほど、とてもエキサイティングで衝撃を受けました。間違いなく現代を代表するUKジャズグループの一角で今後の活動も楽しみですね。2020年にリリースされた『Blue Note Re:imagined』(UKジャズミュージシャンたちによる名曲カバー集)でウェイン・ショーターの名曲“Footprints”をカバーしていますので、興味がございましたらそちらもぜひ♪
柴野直史(池袋店)
新星なんて言葉はこれまで何度も聞いてきたが、正に2022年にその名に相応しいデュオが登場した。SNSを中心に展開された素晴らしいテクニックと演奏力で期待値は高まり、このご時世において久々にCDやアナログのリリースをどれだけ待ちわびた事か。そりゃアンダーソン・パークもほっとかない! 名門ブルーノートとの契約も音楽ファンのトピックに。フリージャズをベースにチルヒップホップ的な要素も加わった心地よく優しさ溢れる一枚にとにかく癒されました。“TAKE A CHANCE”は私の今年のベストソング! 音楽って幸せ♪
廣川 奏(商品統括部)

血眼になってカラー盤を探す日々に別れを告げ、黒盤こそ至高といったフェイズに突入した2022年。印象的な作品は多々ありましたが、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン直系のノイジーなギター+甘いボーカルというイメージから一変した、ジョセフ・スティーヴンスのプロジェクトによる3作目を。
ここでは、ハイ・ラマズ(全ての作品をリイシュー希望)やヴァン・ダイク・パークスの様な桃源郷サウンド、チン・ベルナルデスの新作にも通ずる心地よき音世界が展開されており、私のツボにジャストフィット。飽きもせず何度も何度もターンテーブルの上に『Pad』をセットして休日を過ごすのが、いつしか定番のル-ティーンに。同日にリリースされたオールウェイズの新作と交互に聴きまくったものです。
過去作と同様、音楽面での参照点は明確なのにオリジナルでチルいムードが、長引く残暑を過ごしやすくしてくれたのは間違いないと断言できます。ゆるっとしたジャケットもアナログだとより映えますよ(裏ジャケも最高!)。
いつの間にか生活に寄り添って馴染んでいくような、優しい雰囲気を持った一枚。所謂名盤と謳われるような作品の風格はありませんが、自分にとってはとても大切な宝物の様な音楽です。
……とここまで書いてレコード棚を見たら、レイヴェイ、ファーザー・ジョン・ミスティ、ワイズ・ブラッドなどの新譜、サンビートルズのリイシューも最高だったな~と、キリがなく良作が挙げられる幸せな年でした。
小畑雄巨(神戸店)

今年は先鋭的な現行ものでいいのもいくつかあったけど、レコード時代の音源をレコードで聴きたいなって気分で、だから70~80年代ものをよく聴いてた気がする。その中でつい最近再発されたこのラビ・シフレのアルバムがめちゃくちゃよくて、ラビって、収録曲をエミネムがサンプリングしたりフリーソウル流れで評価されてる75年の“Remember My Song”しか聴いたことなかってんけど、未聴やったんが恥ずかしいくらいに名作。
本作は72年の3作目で、ギターの弾き語りに近いシンプルな編成による作品。ゴスペルなのか、もしかしたら父親がナイジェリアのひとなんでアフリカ的なものなのかわからんが、いずれにせよブラックミュージックがバックボーンにあるソウルフルなフォークというか、カテゴライズが難しいのだけど、とにかくギターの音色や響きが美しく、柔らかな歌声が時間の流れを忘れさせてくれる。
中上雅夫(新宿店)

スローンほどの有名バンドが日本盤リリースなしの状況、ジャケもかなり地味である。しかも円安影響?か輸入盤、特にアナログはかなり高額の部類となり購入のハードルが上がりまくっていたのだが、実際に聴いてみるとこのアルバムは彼らの近作の中では群を抜いて素晴らしい作品となっているのは明らかで、世の評価もおおむねそのような感じである。
このアルバムのリリースを知って以降、サブスクなどで騙し騙し購入欲求を抑制していたものの、この後上がることは合っても下がることはないだろう、だから買い時であろうなどという株かなにかと勘違いしているのかよ、というようなマインドにて購入に至る。
普遍的にポップで親しみやすい曲を普遍的なバンドのスタイルにて演奏するということがもはやメインストリームではなくアンダーグラウンド化しているというのは今に始まったことではないのだが、2022年もそのような状況が継続しているということを象徴するようなアルバムである。
平井篤紀(新宿店)

VARIOUS ARTISTS 『Piombo: The Crime Soundtracks From The Years Of Lead (1973-1981)』 Decca(2022)
2022年、新宿店でヒットした『Boom! – Italian Jazz Soundtracks At Their Finest』(こっちのLPも最高じゃったわぁ~)の姉妹作。『Boom!』が1950~60年代のイタリア映画を支え、普及した〈伊ジャズ黄金期〉にフォーカスしたコンピに対して、本作『Piombo』は70~80年代初期に量産された、〈イタリア産クライム映画〉のサントラにフォーカスしたコンピ。
伊クライム映画を〈ユーロクライム〉と呼ぶのを目にしますが(実際Amazon Prime Videoで「ユーロクライム!」という伊クライム映画のドキュメンタリーが配信中です)、僕はあえて〈マカロニスプロイテーション〉という呼び方を使わせていただきたい(笑)。
『Piombo』に収録されている曲たちは、疾走感溢れるビートと、(チャカポコ)ワウギターのカッティング、怪しく浮遊するローズピアノのメロディーが織りなす血沸き肉躍るレアグルーヴサウンド! そう、これは同年代のブラックスプロイテーション映画「シャフト」「コフィー」などのサントラや、東映のヤクザ映画「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」「御用牙」(こちらは東宝)などのサントラと渡り合うほどの迫力なんですわ!(DJ、ディガーの方でネタ探しとる人がおったら絶対買いの一枚じゃけん、ぜひ!)
また、映画が好きな僕としては収録されている元の映画が視聴困難(配信はほぼ無くDVDは廃盤)なものばかりなのが残念ですが、このLPを聴きながらまだ観ぬ映画のシーンを妄想するのもまたオツな楽しみ方ではないでしょうか。
森山慶方(新宿店)

ブルース・スプリングスティーンが青春時代に愛聴・愛唱したソウルミュージックカバー。アナログももちろんよいし、カセットにも入れてラジカセでボワッと聴きたい(「No Nukes」もその伝で気分出ますよ!)。いかにもボスらしい、リスナーの胸をふくらませてくれる、ふところを広げたスケールの大きい歌唱。オリジナルの楽曲やアーティストに敬意を表し、現在のリスナーに偉大なソウルミュージックの素晴らしさを極めてキチンと伝え直したいという意志に、頭が下がります! 自作で明らかなように、〈ゴースト〉と対峙し〈破滅の罠〉をくぐり抜けサバイブする、不可分の厳しい生の営みの中で、愛すべきスウィートソウルミュージックの力を借りてこそ形にできた、幸福感にあふれる今回のディスクへの感謝は測り知れません! ブルース・スプリングスティーンほどのすぐれた音楽家が歌手に徹して作品に奉仕する、私たちリスナーが享受できるその精神と音楽の恵み。何と最高なことでしょうか!!
村越辰哉(新宿店)
古内東子デビュー30周年記念プロジェクト第1弾。ALDELIGHTレーベルからのオリジナルニューアルバム。曲毎に異なる6人のピアニスト(中西康晴、森 俊之、草間信一、河野 伸、松本圭司、井上 薫)と強力なリズム隊(ベース:小松秀行、ドラムス:Tomo Kanno)を擁したサウンド。シンプルな楽器編成で鳴っている音はリッチ。歌とピアノのミックスが対等なのも過去作にはないバランス……なのかな、きっと。
というのも過去作を引き合いに出すほど古内さんの音楽ついて詳しいわけではなく。というのも古内さんのことは90年代はラグジュアリー&女性の恋愛模様的世界観から近寄りがたいイメージを勝手に持っておりスルーしておりまして、以降、何回かの周年記念盤が出るたびに少しずつ耳にして、もう絶対いいことはわかっていたのですが……スミマセン、長きにわたる潜伏期間を経て、この30周年記念アルバムで晴れて入門した次第。
シティポップブームが90年代~2000年代のJ-Popに及んでいる流れでの古内さんの再評価は高まっているわけでありますが、この最新作はシティポップというサウンドではなく、シンガーソングライターとしての核の部分をピアノメインのバンドサウンドで表現しておりまして、研ぎ澄まされた楽曲とパフォーマンス、揺るぎないその世界に没入してしまいますね。
全8曲34分50秒、このタイトさが逆に贅沢ってもんです。アナログで聴くのはもう贅沢の極みです。
中本颯一郎(新宿店)

シャッグス的イモキュートなジャケと安直なバンド名、〈パーティーの始まりよ!〉ってなアルバムタイトルに僕のキワモノセンサーがビビビと反応し、即チェック。ガールズガレージものかと思いきや、なんとインストバンド!? 往年のサーフロックに中東サイケ、クンビアにマンダリンガレージをチャンポンで飲み干し千鳥足で酩酊する安っぽい極上のグルーヴ、リバーブの効いたギターによるちょいダサでキャッチーなメロディーに電流が走り、一聴き惚れしてしまいました。同じ畑のクルアンビンのようなある種クールで知的な感じとはまた違う、いい意味でのチープさ、B級感が限りなく愛おしく、それでいて演奏自体はとてもしっかりしているのにグッときます。ジャケも音も含めて、このレトロな感じはアナログ盤で美味しさ倍増です。あとで調べたらプロデュースはなんとフランツ・フェルディナンドのアレックス・カプラノスでした。
具嶋美保子(福岡パルコ店)
奇妙礼太郎のファーストアルバムがレコード化! 2011年リリースのCDはもちろん買いましたが、名曲“きみが誰かの彼女になりくさっても”はアナログの方が何倍もグッと来る。哀愁が半端ないです。奇妙礼太郎のオールディーズ感とアナログとの相性が良すぎます。
寺本将巳(福岡パルコ店)
毎年、この時期になったら一年あっという間に過ぎたなと思うのですが、振り返るとアルバム、シングル、良いものが沢山ありました。今年は一つの曲を聴き込むことが多かったように感じます。気持ちを昂らせてくれる曲、リラックスさせてくれる曲、唯々良い曲、色々と素敵な曲に出会いましたが、一曲選びました。
5月にリリースされた柴田聡子『ぼちぼち銀河』は素晴らしい内容のアルバムでしたが、その中でも特に聴き込んだ“雑感”は2022年マイベストソングになりました。7インチには大胆にリミックスされた“KID FRESINO Remix”を収録。今年、目まぐるしく過ぎる日々のまとまりのない考えと気持ちの中、焦る落ち着きのない自分を冷静に落ち着かせてくれる一曲でした。
福島輝之(福岡パルコ店)

2022年は新作を連続リリース、もう何度目かわからない黄金期に突入したレッチリの〈世界最強〉伝説の幕開けを告げた99年作。強靭なファンクネスとパンクロックのメンタリティーに加え、酸いも甘いもかみ分けた哀愁まで手に入れた楽曲が並ぶ本編内容もさることながら、ディスク4面の、ライブ前に円陣(ソウルサークル)を組む4人の背中に来し方行く末の物語がにじみ出ているピクチャーに思わず胸アツ&ジャケ買い。
清水真広(梅田NU茶屋町店)
2022年を代表する邦楽作品。とにかく作品の内容が良すぎてアナログ盤を買いました。尖ったプロデューサーとコラボした楽曲は、海外音楽メディアの年間ベストにも選出されるなど国内外で評価が高い作品です。アナログは白いジャケットケースも特別感があり、重量盤ならではの重みも良いです。初回入荷は予約で直ぐに完売してしまいましたが、再プレスされたことで今は手に入れることができる状況です。購入を検討されている方はお早めに!
梶原颯人(渋谷店)

UKでネクストブレイク必至な若きシンガーソングライター、ジェイコブ・スレーター(ex-デッド・プリティーズ)による新プロジェクト、ワンダーホース。待望のデビューアルバムがドロップ。昨年、フェリックス・ホワイト(ex-マッカビーズ)主宰の〈ヤラ!〉(ウィリー・J・ヒーリーetc.)からシングルをリリースして以降、めきめき注目度は上昇。アルバムリリース後にはフォンテインズ・D.C.やピクシーズのオープニングにも大抜擢。
かつてロンドンのアンダーグラウンドパンクシーンに存在したデッド・プリティーズの崩壊後、しばらくメンタル不調に入ったジェイコブ。その時の悲痛な胸の叫びや、若さゆえに自分で消化しきれなかった怒りや悲しみを、作曲というプロセスと通して浄化。デビュー作とはいえども、その完成度は驚くもので、デッド・プリティーズが当時展開していた若気の至りのような荒々しさは良い意味で消え、一人の詩人として一層深みを増したジェイコブの成熟っぷりが見える感動の一枚に。アルバム全編を通して一切捨て曲無しな完璧な作品。今年はとにかくこのアルバムを聴きまくりました……。(おすすめ:①②③⑥⑦)
小嶋千夏(TOWER VINYL)

こういう場では、レコードショップのスタッフとして〈知る人ぞ知る〉な作品を紹介したいものだけれど、大好きなバンドが最高のアルバムを作ってくれたので、もうこれしかないです! USインディーロックの雄、スプーンの記念すべき10作目『Lucifer On The Sofa』! ミニマルな構成でありながらマキシマムなロック火力を放つ“The Hardest Cut”、ダウンテンポな力強いピアノロックバラード“Satellite”などなどなど、トラディショナルだけどモダン、さりげなくスタイリッシュで驚くほどキャッチーというスプーンらしさがストレートに顕現した、無駄がなく不足もないパーフェクトなロックアルバム! 2月のリリース当時は〈ヤバイ〉〈カッコいい〉〈好き〉しか言葉を発していなかったように思います。買ったばかりのレコードを電車に置き忘れ、果ての駅まで回収しに行った思い出も含めて、2022年最も身に刻まれた一枚です!
塩谷邦夫(TOWER VINYL)

SUNNY & THE SUNLINERS 『Mr. Brown Eyed Soul Vol. 2』 Big Crown/BARRIO GOLD/MUSIC CAMP(2022)
チカーノソウルといえば、のサニー・オスーナ! 5年前にリリースされて大喝采を浴びたベスト盤の第2弾が今年の夏に出たんです。バックのサンライナーズ(サングロウズ)ともども昔から大好きな人達。とはいえもともとは全米ヒットの“Talk To Me”しか知らずでした。
時は流れ……あれは20代後半のこと。90年代も後半になった頃、レアグルーヴ系のミックスCDかCD-Rかなにかで今にして思えば多分“Should I Take You Home”や“If I Could See You Now”あたりを耳にしてあらためてカッコイイ!と。このあとコンピ『East Side Story』シリーズが始まるんですけどほとんど収録してくれなくて。そして2017年のベスト盤発売で皆喜びが爆発したわけです。
で、今回もBARRIO GOLD/MUSIC CAMPがまたまたイイ仕事やってくれました。日本語ZINを付けてくれるとは。感謝サマーでした。
天野龍太郎(Mikiki編集部)
あいかわらず中古盤はあまり買っていないのですが、今年も新品のヴァイナルをそこそこ買いました(輸入盤が高くて困る!)。といっても、再発盤が中心。なかでもよかったのは、フリーボ『すきまから』、ジョン・ブライオン『Meaningless』(水色の盤がかわいい)、裸のラリーズの再発盤3タイトル(丁寧な作りで、CDよりアナログの音のほうが好きでした)、そしてファーカト・アル・アード 『Oghneya』の4つ。
ファーカト・アル・アードの『Oghneya』(79年)は、もともとは知る人ぞ知る激レア盤。私が初めて聴いたのは去年か一昨年に、たまたまYouTubeでだったのですが(ランタンパレードの清水民尋さんも絶賛していたことは、あとから知りました)、もうぶっとんでしまって、何度も何度も聴いてしまって。そのコメント欄に、今回のリイシューを行ったレーベルのハビビ・ファンクが思わせぶりな投稿をしていたので、再発を心待ちにしていたんです。そんな経緯でようやく手に入れられました(ジャケットはオリジナルのままのほうがよかったな~)。
『Oghneya』は、ジャズやサイケデリックロックなどの要素が取り入れられた、当時のレバノンにおいては異色の作品(といっても、レバノンの音楽のことはあまり知らないのですが)。特に色濃いのはブラジル・ミナス音楽からの影響で、〈レバノンのアルトゥール・ヴェロカイ〉と呼ばれるのも納得のサウンドです。とにかく優美でうっとりしてしまうのですが、中近東的(どこか演歌的)な旋律とアラビア語の響きがそこにまた独特の味わいを添えていて、親近感とともに、聴いたことのない不思議な感覚の両方に襲われます。すごい! というわけで、生涯の愛聴盤リストに新たな一枚が加わりました。
バンドのメンバーであるイサム・ハジャリ(Issam Hajali)の『Mouasalat Ila Jacad El Ard』が同じハビビ・ファンクから2019年にリイシューされているので、『Oghneya』を気に入った方にはこちらもおすすめです。








