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『De La Soul Is Dead』(91年)

DE LA SOUL 『De La Soul Is Dead』 Tommy Boy(1991)

名声をひっくり返す渾身のギャグ、シリアスな問題を巧みに聴かせるスキル
by 渡辺志保

ソフォモア・ジンクスを蹴散らしリリースされたセカンドアルバム。前作にも登場するジェフ少年がゴミ箱からデ・ラ・ソウルの新作テープを拾う、というオープニングスキットや自虐的なジョークまでをも交えて展開するストーリー、そして何より〈デ・ラ・ソウルは死んだ〉と宣言する強烈なタイトルを見れば分かる通り、ヒップホップ界隈のみならずメインストリームの音楽シーンにまで衝撃を与えたデビューアルバムで得た名声を自らひっくり返すというデ・ラ・ソウル渾身のギャグが溢れ出す作品だ。

いつ聴いても心が踊る、Q・ティップを迎えたファンキーな週末アンセム“A Roller Skating Jam Named “Saturdays””、ウザい売り込みから逃げるために留守電を流す、というある種生々しい内容を描く“Ring Ring Ring (Ha Ha Hey)”など、名匠プリンス・ポールのサンプリング手技が光るビートの数々はどれも美しい。

91年作『De La Soul Is Dead』収録曲“A Roller Skating Jam Named “Saturdays””“Ring Ring Ring (Ha Ha Hey)”

また、ファニーな魅力だけではなく、コミュニティに蔓延するシリアスな問題をも巧みなライミングとストーリーテリングのスキルで聴かせるのが本作の醍醐味でもある。“My Brother’s A Basehead”では9歳の頃からクラック中毒になってしまった〈ブラザー〉について語る形式でコミュニティに巣食うドラッグの愚かさを歌い、“Millie Pulled A Pistol On Santa”は、同居する父親(〈俺たちの前ではクールなオヤジなのになぜ?〉という描写が余計にリアルだ)から性的虐待を受けている少女・ミリーがピストルを構え、公衆の面前で父親を撃ち殺すまでを5ヴァースにわたって語る。

91年作『De La Soul Is Dead』収録曲“My Brother’s A Basehead”“Millie Pulled A Pistol On Santa”

 

『Buhloone Mindstate』(93年)

DE LA SOUL 『Buhloone Mindstate』 Tommy Boy(1993)

爆発寸前、でもセルアウトはしない​。初期の終わりと次のフェイズの始まり
by 天野龍太郎

4人目のメンバーと言っていいプリンス・ポール(カバーアートに写ってもいる)がプロデュースした最後の作品で、次作でムードとモードが変わることを考えると、無邪気さとインテリジェンスと諧謔に満ちた初期の終わりと次のフェイズの始まりを感じさせる。傑作に挟まれているため地味な印象だが、刻印された時代性を含めて確実に重要作だ。

タイトルの〈Buhloone〉は、〈Balloon〉の綴りを発音に合わせて変えたもの。〈風船の精神状態〉とは、“Intro”で歌われているとおり、〈爆発するかもしれないけれど、破裂(go pop)はしないぜ〉の意で、〈セルアウトはしない〉というアティテュードがクールな言葉遊びで示されている。

93年作『Buhloone Mindstate』収録曲“Intro”

客演はネイティヴ・タンの仲間ブラック・シープのドレスや先輩ビズ・マーキーのほか、特筆すべきはメイシオ・パーカー、フレッド・ウェズリー、ピー・ウィー・エリスというレジェンドを迎えた“Patti Dooke”“I Be Blowin’”“I Am I Be”の3曲(このうち、“I Be Blowin’”はメイシオ・パーカーのサックスをフィーチャーしたインストゥルメンタル)。当時、ギャング・スターのグールーが牽引していたジャズラップ(日本で言うところの〈ジャジーヒップホップ〉)に果敢にアプローチし、アフリカンアメリカンの音楽史をレプリゼント、セレブレイトしている。

93年作『Buhloone Mindstate』収録曲“Patti Dooke”

マイケル・ジャクソン“I Can’t Help It”とスモーキー・ロビンソン“Quiet Storm”という大ネタを引いたメロウな“Breakadawn”や、先達ウルトラマグネティックMC’sに敬意を払いつつアイロニーに満ちた“Ego Trippin’ (Part Two)”の素晴らしさ、あるいは全体的に迷いを感じさせなくもない複雑なリリックなど、語るべき点は多い。

が、日本のリスナーにとってはスチャダラパーと高木完が“Long Island Wildin’”に参加していることが、やはり重要なトピックだ(短いスキットの体だが日本語でがっつりラップしており、Boseの〈英語でなんだか言ってるよ〉というラインはやけに批評的)。ネイティヴ・タンに範をとったLBネイションが憧れの存在と同時代的な交流を持ったことは、日米両国のヒップホップ史において重要な意義がある。

93年作『Buhloone Mindstate』収録曲“Ego Trippin’ (Part Two)”“Long Island Wildin’”