日本人アーティストとのコラボも精力的な南ロンドン発プロデューサー、エドブラック。ネオ・ソウルを背景に洒脱なローファイ・ビーツを編む鋭才が、創作の矜持を語る!

 ジャズからR&B、ヒップホップ、インディー・ロックまで盛況の続くサウス・ロンドン・シーン。同地出身のedblことエドブラックは、2019年の初リーダー作を皮切りに、大きな支持を集めつつあるソングライター/プロデューサーだ。彼の手掛けるメロウなビートは、ここ数年の〈ローファイ・ヒップホップ〉の浸透にも重なる耳馴染みの良いものでありながらも、南ロンドンらしいフレッシュなジャズの要素もふんだんに盛り込まれており、単なる〈新時代のBGM〉にとどまらないクォリティーを備えている。

 ギタリストの磯貝一樹との共作『The edbl x Kazuki Isogai Sessions』やiriの『Go back / friends』のプロデュース、イハラカンタロウ“つむぐように(Twiny)”のリミックスなど、エドブラックは日本人アーティストとのコラボレーションも盛んに行ってきた。そんな彼が、エドブラック&フレンズ名義で新作『JPRK』をリリースする。これまでの経歴や本作の制作について話を訊いた。

edbl & friends 『JPRK』 Pヴァイン(2023)

 「大学に進学して、ディアンジェロ、エリカ・バドゥ、ローリン・ヒル、ア・トライブ・コールド・クエスト、ジュラシック5、JディラといったR&Bやネオ・ソウル~ヒップホップ系のアーティストを初めて聴いたことで、〈音楽の目覚め〉を経験したんだ。彼らの表現は何よりもソウルフルで、その音楽を〈感じる〉ことができるよね。とても影響を受けている」。

 本作のタイトルは、エドブラックの長年の友人であるプロデューサー、JPRKの名から取られており、実際に各トラックで彼を大々的にフィーチャーしている。二人はどんなふうに出会ったのだろうか。

「アディ・スレイマンという素晴らしいシンガーの録音で、セッション・ミュージシャン同士として出会ったんだ。お互いイングランド北部出身でロンドンに移り住んでいたので、すぐに意気投合して、それ以来本当に仲が良い。JPRKは僕が出したミックステープやビートに必ず参加してくれているよ」。

 1曲目の“Primo”や3曲目の“5k”ではトランペット奏者のジャクソン・マソッドをフィーチャー。オーセンティックなジャズの語法も咀嚼したプレイが、エドブラックのトラックと巧みに調和している。

 「ジャクソンの演奏はすごくセンスが良くて、彼のアイデアやリフは僕が作る音楽のスタイルに完璧にマッチしているんだ。フレーズもすべて彼にお任せだよ」。

 そうした生楽器とエレクトロニクスの自然な融合ぶりも、本作の魅力だ。

 「特に意識していたわけじゃないけど、今回のプロジェクトでは、初日の時点からサンプリング/プログラミングされたドラムと、生のギター/ベース/キーボードがブレンドされていたんだ。ヒップホップのビートにソウルを感じさせるサウンドを混ぜ合わせるのは、僕のお気に入りの手法だね」。

 日本のコンビニエンスストアと同じ名の7曲目 “Seven Eleven”は、どこかしらシティ・ポップ風のテイストも感じさせる。

 「日本のアーティストやレーベルと仕事をするなかで、〈シティ・ポップ〉という言葉を目にすることはあるんだけど、実はあまり聴いたことがないんだ。でも、君に指摘されてちょうどいま山下達郎の音楽を聴いてみたんだけど、僕の好きな1970年代から80年代のジョージ・ベンソンのようなジャズ・ソウルを彷彿とさせる感じで、とてもいいね!」。

 日本人アーティストとリモート環境で共作することのおもしろさについても訊いてみた。

 「お互いに地球の裏側にいながら何かを作り上げるという作業は、適応するのに大変さもあったけど、いまはバッチリだよ。日本語で何が歌われているのかをきちんと理解できるわけじゃないから、あくまでメロディーやサウンドで気持ちを伝える必要があるんだ。でも、それってクールなことだよね」。

 ロンドンのマルチ・カルチュラルな環境にも日々刺激を受けているという。

 「自分とはまったく異なる音楽的背景を持つアーティストと仕事をする機会も多くて、彼らのためにハウスやアフロビートといった普段の僕の作品にはないスタイルのサウンドを作ることもある。文化の多様性に富んだ街で活動するのはとても素晴らしい体験だね」。

エドブラックの過去作を一部紹介。
左から、エドブラック&フレンズ名義の2022年作『James Berkeley』、磯貝一樹との2022年のコラボ作『The edbl × Kazuki Sessions』、2022年作『Brockwell Mixtape』、2021年作『South London Sounds』(すべてPヴァイン)

エドブラックの参加作品を一部紹介。
左から、iriの2023年のシングル『Go back/friends』(ビクター)、イハラカンタロウの2022年のシングル“つむぐように(Twiny)”(Pヴァイン)、RiE MORRiSの2022年のEP『Here With You』(RiE MORRiS)