
また新しいエド・シーラン
が、2021年の4枚目となるオリジナル・アルバム『=(イコールズ)』では、これまで以上にポップに弾けた作風で驚かせる。カラフルな音色が飛び交い、エレクトロニック・ビートがバウンス。歌詞には父親としての顔もたっぷり投影された。お馴染みのジョニー・マクデイドや、前作にも参加したフレッド・アゲインが制作に協力。リード・シングル“Bad Habits”(全英1位、全米2位)、スティーヴ・マック関与の“Shivers”(全英1位、全米4位)などがチャートを席巻し、“Overpass Graffiti”(全英4位)、さらに“The Joker And The Queen”(全英2位)はテイラーとのデュエット・ヴァージョンなどもヒットした。なお、2021年には自身のレーベルからメイジー・ピータースが『You Signed Up For This』でアルバム・デビュー。12月には師匠エルトン・ジョンとのクリスマス・ソング“Merry Christmas”も全英1位をマークしている。
2022年には2人目の娘ジュピターちゃんが誕生。幸せいっぱいかと思っていたら、実は妊娠中の妻に腫瘍が見つかったり、親友ジャマル・エドワーズが突然他界したり(“F64”と題されたナンバーが捧げられた)、盗作を巡る裁判など、さまざまな苦難が降り掛かり、精神的にもすっかり参っていたと、ようやく最近になってエドは語り始めている。そんな逆境下、無我夢中で作りはじめたのが今回のニュー・アルバム『−(サブストラクト)』だったという。数学タイトル・シリーズの最終作となるこのアルバムは、ずっと以前からアコギ作品にすると決めていたが、ありのままの心境を音楽にしていった結果は随分違っているそうだ。プロデュースを主に手掛けているのは、ザ・ナショナルのアーロン・デスナー。アーロンがコロナ禍にテイラーと制作した彼女のアルバム『folklore』と『evermore』などをエドはたいそう気に入っていたそうだ。が、だからと言ってフォーク一辺倒のアルバムでないのは、ひと足先に発表されたリード・シングル“Eyes Closed”(全英1位)からも明白だろう。いまや結婚して2児の父となり、朝まで飲んだくれのパーティーはやらなくなったという彼は、今年で32歳。現時点で詳細はほぼ明かされていないものの、5月に届けられるニュー・アルバム『−』では、僕らがこれまで知らなかったエド・シーランと対面することになりそうだ。

エド・シーランの『−』に参加しているアーティストの作品。
左から、4月28日にリリースされるナショナルのニュー・アルバム『First Two Pages Of Frankenstein』(4AD/BEAT)、フレッド・アゲインの2022年作『Actual Life 3(January 1-September 9 2022)』(Warner)