大きく弧を描くようなフォルムで、あたたかく幻想的な空気を存分に愉しませてくれる。また豊かな低音を響かせていることが素晴らしい。シューマン〈幻想小曲集〉作品73の第3曲の低音から高音へ駆け上がり飛翔する場面が聴きどころ。このパユの久しぶりのソロアルバムは、前述のロベルト・シューマンのクラリネット作品の他、オーボエ曲やクララ・シューマンとフェリックス・メンデルスゾーンのヴァイオリン曲、ファニー・メンデルスゾーンの歌曲を原曲とするドイツ・ロマン派の音楽をフルートで奏でている。この楽器の演奏に聴かれる空気音がなく、純度の高い音を繰り出している様は驚異的である。
エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)『ロマンス~ロベルト&クララ・シューマン、ファニー&フェリックス・メンデルスゾーン作品集』ドイツ・ロマン派の楽曲を豊かな低音と共に響かせる
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