デビュー10周年イヤーを怒涛の展開で駆け抜けた新体制の3人が、その先に見る新しいヴィジョンとは? 多様な夢を描いた『Beautiful Dreamer』ではエッセンシャルなfhánaらしさが改めて具現化されている!
そうそう、この感じ
「惑星直列。コンジャンクション。何年かに一度、すべての惑星が接近する現象があるじゃないですか。それが来てしまった感じです」(佐藤純一)――年始にyuxuki wagaが脱退。春にレーベル移籍第1弾のシングル“Runaway World”を発表すると、7月には新事務所のNEW WORLD LINE設立を報告。そして8月にはベスト盤『This Is The Light』も到着……と、怒涛の展開を見せてきた2023年のfhána。そのピークが10月にLINE CUBE SHIBUYAで行われたデビュー10周年ライヴだったわけだが、アンコールで披露された2曲に感慨を覚えたオーディエンスも多かったことだろう。その2曲とは、名作ノベルゲーム「ONE ~輝く季節へ~」の25年ぶりのリファイン版となる「ONE.」のオープニング/エンディング主題歌として制作された“永遠という光”と“Last Pages”。「ONE ~輝く季節へ~」とは、のちに〈泣きゲー〉の代名詞的なゲームブランド、keyを立ち上げることとなるスタッフらが手掛けた同ブランドの原点とも言える作品。そしてkeyの代表作と言えば、fhána結成の直接的なきっかけとなった「CLANNAD」である。
佐藤純一「『CLANNAD』好きの3人が意気投合してfhánaを結成したので、今回『ONE.』のプロデューサーさんにご指名いただいたときは感慨深かったですね。2曲を初披露した10周年ライヴのアンコールは次へのプロローグみたいなイメージでした。結果的にですけど、そのときに続けて演奏した“光舞う冬の日に”も今回のEPに収録されて」
それら3曲を含む6曲入りとなったfhánaの新作EP『Beautiful Dreamer』。全体から感じられるのは、初期の彼らを思い出させるフレッシュな輝きだ。
佐藤「fhánaに“いつかの、いくつかのきみとのせかい”(2014年)っていう春っぽい、温かみのある曲があるんですけど、その曲をプロデューサーさんが好きだったらしくて。ただ、『ONE.』は冬の作品なので、今回は〈ひんやりした質感の音も入れた、冬の情景が見える曲でお願いします〉っていうお話を受けて作ったのが“永遠という光”です。“Last Pages”のほうはエンディング感のある、ポジティヴに包み込むような雰囲気の曲ということで、これまでのfhánaで言ったら“white light”みたいな感じかな。ギターでガーッと押すオルタナティヴ・ロック・サウンドで、泣ける壮大さと光がパーッと射してくるようなイメージの両方がある。ゲームをきっかけに作ったけど、すごくfhánaらしい曲が自然に出来たと思います」
kevin mitsunaga「僕個人としても当時のゲームやその音楽にめちゃくちゃ影響を受けてて、fhánaの初期の曲にもそういう音を入れたりしてたんですね。だから、佐藤さんから今回の曲をもらったときも、〈そうそう、この感じ〉みたいな(笑)。スッと身体に入ってきた感じがありました」
佐藤「今回“光舞う冬の日に”を入れたのは、完全に新曲を作る時間がなかったからでもあるんですけど、この曲って、そもそもfhánaを結成していちばん最初に作った曲なんですね。『CLANNAD』の泣ける感じ、あの感動を凝縮したfhánaの始まりの曲なんです。初出の自主制作盤『New World Line』(2012年)ではボーカロイドのIAが歌ったんですけど、それが『CLANNAD』の大元となる『ONE.』の主題歌と同時にtowanaの歌で音源化されるのも、すごくいいタイミングだなと」