
大滝詠一の無理難題に応えるギタリスト
北爪「そういう意味では大滝詠一さんもすごく情熱のある人ですよね。大滝さんとの仕事でも村松さんは数多く活躍していますが、その辺りのことも伺いたいです。とくに『多羅尾伴内楽團 Vol.2』(1978年)では村松さんのギターが大々的にフィーチャーされてますよね」
村松「そんなツライ話をしなきゃいけないの(笑)?」
長門「それは嫌なツラさってわけじゃないでしょ?」
村松「嫌とかいいとかではなくて、〈これ弾けないわ〉ってのがあって。弾けるまでずっと繰り返さなきゃならないじゃない」
谷口「それは大滝さんからどういう風に伝えられるんですか?」
村松「〈これやれ〉って、カセットを渡される(笑)。でも〈これは出来ません〉て言うのはいやだから、〈ハイ〉と返事して一生懸命練習するの」
谷口「ミュージシャンとして〈出来ない〉とは言いたくないですよね」
村松「しかも当時は倍速とか半速とかの細かいエディターはないから」
谷口「そうか、ゆっくり聴いてフレーズを分析するとか出来ないってことか」
長門「大滝さんは先日『EACH TIME』(1984年)のボックスが発売されたでしょ。ここでも村松くんは大活躍してるよね」
村松「『EACH TIME』はレコーディングには全部参加してるんだけど、完成してからウチで聴いたことはないかもしれない(笑)」
長門「ええっ、自分で確認してないの(笑)?」
村松「『A LONG VACATION』(1981年)は何度もかけてるんだけど、『EACH TIME』はほとんど記憶にないんだよね」
長門「いや聴いてると思うよ、そういうことにしようよ」
谷口「そういうことにしようって(笑)」
アニメでも名曲を生んだ村松邦男の仕事
長門「そういえば村松くん、テンマなんとかってアニメの曲やってたよね?」
村松「テンマ? 『らんま1/2』でしょ(第1期OPテーマ“じゃじゃ馬にさせないで”の作曲担当)」
長門「あ、そうだ『らんま1/2』。その新作が放送されるって聞いたけど、音楽は頼まれてないの?」
村松「頼まれてないね(笑)」
北爪「村松さんが音楽を手掛けたアニメだと何といっても宮崎駿監督の『劇場版 名探偵ホームズ』が好きでした。それとこれは個人的に聞きたかったんですが、出崎統監督のアニメ『ガンバの冒険』のある回でシュガー・ベイブの“風の世界”が使われていますよね? あれはビックリしたんですけど」
村松「劇中歌ってことかな?」
北爪「そうです。1975年7月に放送された回なので、まだ『SONGS』のリリースから間もないんですよね」
村松「うーん、それはわからないなぁ」