10月19日、ズボンズドン・マツオによるライヴ企画〈Voodoo Donuts〉の第5回が、東京・下北沢BASEMENT BARにて開催。このイヴェントに、鹿児島発の3ピース・バンド、水中ブランコが出演した。

井上雄太(ギター/ヴォーカル)、ヒダカユイ(ベース)、リュージ(ドラムス)の3人から成る水中ブランコは、若き日のズボンズを彷彿とさせる爆発力を持ったバンド・サウンドを武器とし、国内のみならずUSや台湾でツアーを行った実績も持つ注目のアクト。今年3月にはドン・マツオの鹿児島公演で彼のバックを務めており、その縁もあって11月5日リリースのニュー・アルバム『vero』のレコーディング/ミックス/ディレクションをドンが手掛けたことも話題となっている。

水中ブランコ vero real future(2014)

前日も地元・鹿児島でライヴだった水中ブランコは打ち上げで飲みすぎたこともあり(?)、ステージの外ではやや疲れが見えるようだが、本番さながらの爆音とタイトな演奏でリハーサルをきっちりこなす。その様子を見守っていたドンから「上手くなったな!」と声をかけられるなど、3月や『vero』を制作した7月からさらなる成長を遂げているようだ。

 

 

そしていよいよ宴が始まり、Home is fireテンパレイに続く3番手としてステージに現れた水中ブランコは、初の全国流通盤となる『vero』のオープニング・ナンバー“lowteen,lawschool”でライヴをスタート。井上のギターの切り裂くようなリフ、トリを務めるDON Matsuo Magic Mountainのリハーサルにも参加していたヒダカの太さとファンクネスを併せ持ったベース、リズムの快楽点を突きながら演奏の熱量を増幅させるリョージのドラムと、メンバーそれぞれの、そして3人が揃ってはじめて生まれるマグマのようなエネルギーが一気に放出される。

 

 

1曲目でフロアの空気をがらりと変えると、間髪入れず新作のタイトル・チューン“ベロ”を投下する水中ブランコ。ハネるリズムと独特のポップネス、そしてサビの開放感がオーディエンスをさらに揺さぶっていく。続くスロウ・ナンバー“ice”では重厚なアンサンブルを聴かせ、ドン・マツオがアルバム制作に参加したことでさらに広がったであろう、表現力の豊かさも存分に発揮していた。

 

 

バンドは井上の「今日は友達になって帰ってください」という言葉が印象的だったMCを挟み、彼の絶唱から始まる疾走チューン“チノメグリ”と、さらにスピードを上げて畳み掛ける“chinomegly”を続けざまに演奏。曲と曲を繋ぐ際の緊張感、全身から絞り出すような井上の鬼気迫るヴォーカル、演奏がブレイクする瞬間など、ロックンロール・バンドによるライヴの醍醐味がこれでもかと叩きつけられ、ステージからは片時も目が離せない。

 

 

 

最後に演奏されたのは、これまで水中ブランコが発表したすべての作品に収録されているバンドの重要曲“フシはアナ”。ドンのプロデュースにより、『vero』に収録されている音源がこれまでで最も納得のいく仕上がりになったとメンバーも語っていたが、ライヴの演奏にもその経験がフィードバックされていたようだ。曲が進むにつれ三位一体のグルーヴ、気迫、熱量など、すべてが膨れ上がってピークに達し、バンドの持つエネルギーの迸りが見えるようなステージは終了した。

 

 

 

トリのDON Matsuo Magic Mountain Bandは、ズボンズの“Highway A Go Go”や“Mo' Funky”、ジョン・レノン“Jealous Guy”のカヴァーを含むセットリストでファンキーなサウンドをまき散らし、集まった観客をいつまでも躍らせる。そのステージと、ドン・マツオのパフォーマンスを食い入るように見つめる井上の表情も印象的だった。

 

〈Voodoo Donuts vol.5@下北沢BASEMENT BAR 2014.10.19〉セットリスト
【水中ブランコ】
1. lowteen,lawschool
2. ベロ
3. ice
4. チノメグリ
5. chinomegly
6. フシはアナ

【DON Matsuo Magic Mountain Band】
1. Highway A Go Go
2. Plasticity
3. Stormy
4. Mark 1 (of Love)
5. Jealous Guy (John Lennon cover)
6. Mo' Funky