一生懸命、真面目に、良くあろう
本作『Music For Walking (Out Of The Woods)』は、コロナ禍での深い〈内省〉から〈散歩〉を経て〈再生〉していくラブサマちゃんの私小説的な作品だ。しかし同時に、いまこの世界で生きづらさを感じている人にそっと寄り添い、並走してくれる普遍性をも兼ね備えている。
「おっしゃるように、作りながら〈これはコロナ禍じゃなくても通じる作品だな〉と思いました。1人で休み、散歩をして、〈やっぱり他者が必要だった〉と徐々に気付いていく――そんな物語は、いつの時代にもきっと当てはまる。実際、オイラにとって〈生きづらさ〉やそこからの〈再生〉は、ずっと一貫した人生のテーマでもあるんです」。
また、本作には社会的なメッセージも込められている。〈千円札の顔にならない凡才が回す世間です〉〈「Hey Jude」書けない私も筆を折る必要は無い〉と歌う“OK, Shady Lane”や、トラップ・ビートに乗せ〈現実離れした消費のゲームには 一度も参加したことなかった あたし普通に清貧 どしてこんな苦しい〉と歌うシークレット・トラック“GIMME MONEY”では、競争に勝つこと、人より秀でることが正義とされる、いわゆる資本主義的な価値観から少しでも自由になることの大切さを、彼女らしいユーモアやしなやかさを交えながら訴えている。
「年齢を重ねるごとに、社会問題もどんどん目に入ってきます。〈ラブリーサマーちゃん〉を知っている人が増えれば、それだけ自分の発言や行動の影響力も広がっていきますし。〈ノブレス・オブリージュ(=社会的地位を持つ者はその立場にふさわしい責任や義務を持つべきという思想)〉的なことを考える機会も増えましたね。そうしないと、自分の考える理想の世界からどんどん遠ざかってしまうという危機感を覚えるときもあります。とはいえずっと自問自答を繰り返している感じで、ときには間違えてしまうかもしれない。それでも、〈一生懸命、真面目に、良くあろうとする〉という根本だけは失わないようにしたいんです」。
最後に、次のアルバムへの意欲を早くも語ってくれた。さらに一歩進んだテーマで曲を作り続けているという。
「テーマは〈恋愛〉。もう12曲くらい出来ていて、タイトルまで決まっています。今年中にリリースできたらいいなと思っているんですけど……そこはコロムビアさんと相談ですね。今回の売上にもかかっているので(笑)、みなさん『Music For Walking (Out Of The Woods)』を買ってください!」。