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〈ありのままの自分でいる〉という美容

――ところで、青柳さんはF.I.B JOURNALの新作『現象 hyphenated』を聴かれました?

青柳「はい、聴きました」

山崎「大丈夫でした?(笑)」

青柳「いやいや、素晴らしかったですよ。昔よりもさらに言葉が凝縮されている感じがしました。たとえば〈花がきれい〉という言葉があったとして、子供がその言葉をどう捉え、年寄りがどう捉えるか、意味合いがだいぶ変わってくるんですね。自分も年齢を重ねるごとにそういう違いを感じるようになっていて、そのあたりの感覚も響き合っていると思いましたね。シンプルな言葉にも奥行きがあって、滲むような感覚があるとも感じました」

――青柳さんは詩人としての円城さんの魅力はどんなところにあると思いますか。

青柳「言葉選びが個性的で独特ですね。あとは世に対する発表の仕方がすごく自由だなと思います。アウトプットの方法がいくつもあって、言葉についてそういう活動のやり方をしてる人ってあまりいないと思うんですよ」

山崎「ありがとうございます(笑)」

――今回の新作『現象 hyphenated』はOSAJIの茂田正和さんとのコラボレーションという形で制作されたわけですけど、どのような経緯でコラボすることになったのでしょうか。

山崎「茂田さん自身、OSAJIを立ち上げる前は音楽のエンジニアをやっていたり、高崎でクラブを経営していたので、以前からお会いする機会があったんですね。

昨年、茂田さんがやっている〈理想論〉というメディアで対談する機会があって、そのとき茂田さんが〈音を聴くことで人の身体や精神が整えられることもあるわけで、広く見れば美容にも繋がるんじゃないか〉というお話をされていたんですよ。そこから話が広がり、〈聴く美容〉というテーマでアルバムを作ることになりました」

――具体的にはどのようなプロセスで作っていったのでしょうか。

山崎「そのテーマで作品を作ることになったものの、俺、美容のことはまったく分からないんですよ。実家は美容室なんだけど(笑)。ただ、茂田さんと話していたとき、茂田さんは〈世の中における美容とはアンチエイジングだと捉えられているけど、それは違う〉と言うんですね。〈ありのままの自分でいることが美容だ〉と。

その話を聞いて、だったら自分のままでやればいいんじゃないかと思ったんですよ。起点だけ茂田さんと確認しておけば、作るうちに自然といい方向に向いていくんじゃないかと」

――今回の作品、円城さんの言葉に〈光〉というか、〈救い〉みたいなものを感じました。それは〈聴く美容〉という当初のテーマと関連しているのかなと思いました。

山崎「誰かにとっての救いになるかどうかは分からないですけど、自分にとっては光のようなものを集めたところはあるかもしれませんね。自分が綺麗だと感じた石を並べている感じなので」

 

詩のイベントでリセットした日本語と音楽の関係

――曲は普段どのように作っていくんですか? 言葉が先にあるのか、音が先にあるのか。

山崎「家でギターを弾きながら浮かんできたフレーズを歌ってみたり、ムニュムニュやったものをそのまま録るんですよ。で、スタジオでそのムニュムニュをメンバーに聴かせるんです。みんな慣れているので、それを自分のパートにあてはめていくんですね。そこからセッションしたり、軌道修正したりしながら作っていく感じです」

――ムニュムニュの段階で言葉は入っているんですか?

山崎「入っていることもあります。2曲目の“君の選択 - What do you want to do”はデモのときからあの歌詞だったと思います。〈What do you want to do〉と繰り返している箇所はそのままですね」

――〈What do you want to do〉というあのフレーズは楽器的であり、念仏的でもありますよね。

山崎「自分が一番影響受けた音楽は祭りのお囃子であるとかお経なんです。ああいうものって同じ言葉をループさせるじゃないですか。そこにすごく影響を受けています。ばあちゃんの葬式でお経に触れてから、英語に極端に興味がなくなっていったんですよ。今も英語を使っていますけど、基本的には日本語でやりたくて」

――日本語に対して意識するようになったのはいつごろからなんですか。

山崎「2005、2006年ぐらいですかね。2009年に『Calm & Punk』っていうアルバムを出したんですけど、そこに入ってる“セコハン(Seco-han)”っていう曲にはお経のイメージがありました」

――その意味でいうと、青柳さんも2007年の『たであい』以降、日本語の歌に取り組んできましたよね。青柳さんはどのような意識のもと日本語に取り組むようになったのでしょうか。

青柳「やっぱりBOOKWORMを何年かやった経験が大きかったと思います。BOOKWORMでたくさん日本語の言葉と出会ったし、日本の音楽にも興味を持つようになりました。かつては海外の音楽一辺倒だったけど、徐々に日本語に対する意識が高まっていって、あるタイミングで〈今なら自分の言葉を音楽に乗せられる〉と思った瞬間があったんですよ。日本語が自分の中で満ちたような感覚で。今思うと、日本語と音楽の関係性をBOOKWORMでいったんリセットされたような感覚もあったと思います」

山崎「俺も完全にそうですね。BOOKWORMがなかったら日本語でやってない」

――なるほど。BOOKWORMの時期におふたりとも脳内のOSを日本語にインストールし直したような感覚だったんですね。

青柳「そうそう。まさにそういう感覚でした」

山崎「BOOKWORMを通して何千冊の本を読んだんだろう?という感じでしたね。自分はあそこで言葉が入れ替わったんですよ」