「これを描かなければ、人生終われません」と自ら語る。これまで〈家族〉をテーマにほのぼのエッセイ漫画や最愛の人を亡くした哀しみを描いた「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」の漫画家が初めて明かした、長年引きこもっている兄の存在。しかも15歳も年が離れている。ゴミ屋敷と化した実家へ帰ると変に兄貴ぶった態度を取られる。作者の視点で見ると隠したい存在と言える兄から取り返しがつかない被害を受け続けた人生と言える。犯罪被害者による手記を読むと「前に進むためには赦しが必要」という言葉が共通して出てくる。家族を描く作品で高い評価を受けた稀有な才能を持つ作家が避けて通れない道を、勇気を持って歩み始めた。