新しい試み
無表情に刻まれるリズム・シンセにディスコ風情のドラムが絡み、ハード・エッジなギターがその空間を泳ぐ。華やかなシンセのリフがさらに盛り立て、猛々しいヴォーカルが乗っていく――。アルバムは、ステージの上で各パートに順々にスポットが当たっていくような画を想起させる“Dry Action Pump”で賑々しく幕を開け、続いて“Vapour Cream”、永井がリード・ヴォーカルをとる“Neuromancer”と、怒涛の勢いで突き進む。そう、今作では永井が計3曲で初めてリード・ヴォーカルを担当していて、そのあたりもバンド感の強さと同時に新しいTESTSETらしさを象徴するトピックだろう。
「カラーとしてヴォーカリストが2人いるっていうのは試みとしてはおもしろいなと僕も思ったので。自分のなかでは前代未聞のチャレンジでしたけど、なるようになると思って、それがバンドだなと。基本は自分の作った曲は自分で歌うっていう、いまのところそういう感じになっています」(永井聖一)。
野生味のある今井のヴォーカルに対して、クールなようでいて熱のこもった永井のヴォーカル。このコントラストによって、アルバムの表情がより豊かになっているのは確か。“Neuromancer”については、今井が雄々しいコーラスを聴かせていて、思わず「ウルトラヴォックスみたいですね」と世代的なボキャブラリーで感想を述べたところ……。
「ウルトラヴォックスですよ(笑)。LEOくんは、コーラスワークのテクスチャーを作るのがすごく上手だと思ってます。ベストポジションに彼のコーラスとか、カウンターメロディーみたいなのを入れてくれるんで、そういうところもこのバンドの強みですね」(永井)。
そこにはウルトラヴォックスなんかのように男の声だけで仕上げている色っぽさもあって。
「この仕事を始めた頃から女性ヴォーカルのバンドで演奏することが多かったので、かっこいい男バンドもやってみたかったんですよ。成り行きはさておき、いまそれが叶ってるのがすごくうれしい」(永井)。
アルバム終盤で出てくる白根の作による“The Haze”もヴォーカルは永井。これまでのTESTSETにはあまりなかった、歌メロが際立ったロマンティックなナンバーで、どことなく映画のエンドロール感を漂わせていたりする(このあとにもう1曲あるわけだけど)。
「白根さんの曲なので、僕がヴォーカル?って思ったけど、〈永井くんが歌ったほうがハマるよ〉っていう話になって」(永井)。
「もともとの詞を書いた白根さんが〈この歌詞どう?〉っていう話から始まって、私と砂原さんがその場(スタジオ)で部分的に書き換えたりとかもして、そういうところはTESTSETの新しい転がり方だったと思いますね。この曲はけっこうアレンジのヴァージョンも変わりましたから」(今井)。
「そもそもアルバムの曲は、トータルでわりと〈音数を少なくする〉っていう共通のアイデア、コンセプトがあったんです。だから“The Haze”もすごく音数のマックスな状態のヴァージョンも存在していて、そこからかなり削ぎ落とした形になりました。このアルバムの正解として入ってるのがこのヴァージョンです。白根さんってけっこうメロウな曲を書くんですよね、さらさらっと。それは他の3人にないものなので、いい反応が起きて」(永井)。