©Dave Stapleton

デヴィッド・ボウイからのアドヴァイスでエレクトロニック路線に!

 デヴィッド・ボウイの遺作『』に参加し、マリア・シュナイダーのオーケストラでも重用されるダニー・マッキャスリン。前作『I Want More』で自らのサックスにエフェクトをかけるなど予兆はあったが、14作目となる『Lullaby For The Lost』は、エレクトリックでロック色濃厚な仕上がりだ。

 「『★』に参加した時、ボウイからは電気的な環境で演奏することにもっと慣れてもいいんじゃない?という助言をもらった。その時はピンとこなかったけれど、アコースティックな音楽はやりきったという実感があり、そろそろやってもいいかなと思った。それで、前作からサックスにディストーションやディレイをかけたり、ピッチを変えるようになったんだ。今ではライヴでギタリストのように足元にペダルボードを置くようになった(笑)。それともうひとつボウイから、これから録音する作品がロックと呼ばれるのかジャズと呼ばれるのかポップスと呼ばれるのか、そういうことは一切気にしなくていいって言われたんだ」

DONNY McCASLIN 『Lullaby For The Lost』 Edition/ユニバーサル(2025)

 それでもあえて、今回のアルバムを言葉で形容すると? とやや意地悪な質問をしてみた。

「うーん難しいね(笑)。でも2つのキーワードがある。まず、ロックとジャズのハイブリッドということ。それから、エレクトロニックな音楽とジャズのその混合ということかな。エレキギターが入っているので、よりロックに寄ったと思うよ」

 アルバムではメイン・ミキシングを、マーキュリー・レヴやフレーミング・リップスやナンバーガールなどを手掛けたデイヴ・フリッドマンが担当。彼がジャズのレコードに関わったのはこれが初めてだという。

 「彼はサックスという楽器をリード・ヴォーカルのように扱っていた。普通のジャズのレコードだと、サックスがフロントにいればサックスがフィーチャーされていて、他の楽器は少し引き気味のバランスにミックスするけれども、そうすると、音がちょっとこぢんまりした印象になってしまう。でも、デイヴはサックスを少し後ろに置くことで、全体のサウンドに存在感を出すんだ。1曲の中でもパートごとに違うエフェクトをかけたりするのも面白いしね」

 なるほど、ニール・ヤング、ナイン・インチ・ネイルズ、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの音楽から影響されたというのも納得のアグレッシヴなサウンド。ダニーの最新型が本作にはある。