時代を越えてニュー・タイトルが続々と登場してくるソウルの世界。どこまでも現実が地獄であろうと音の中は天国!?ってことで、今回は2025年の収穫を総決算しておきましょう。多彩なリイシューや発掘などでひしめく宝の山から、いまこそ聴いておきたい珠玉のアルバムとは!?
恒例のソウル復刻&発掘の個人ベスト、2025年版です。諸事情から例年以上にレギュラーな連載回が休みがちになってしまった年で、とんでもない大発掘などは少なかった気もしますが、それでも連載でフィーチャーした直後に逝去したスライ・ストーンのサウンドトラックをはじめ、いくつもの話題作は記憶に残っているところでしょう。
2025年にはそのスライを筆頭に、ロイ・エアーズやクリス・ジャスパー、ドン・ブライアント、ウェイン・ルイス(アトランティック・スター)、ジョン・エドワーズ(スピナーズ)、ジェリービーン・ジョンソン(ザ・タイム/ザ・ファミリー)、スティーヴ・クロッパー(ブッカーT & ザ・MG’s)のような本連載の過去回でメイン・フィーチャーしたことのあるレジェンドたちの訃報が次々に届き、他にもロバータ・フラックやブレントン・ウッド、サム・ムーア(サム&デイヴ)、グウェン・マクレー、ウォルター・スコット(ウィスパーズ)、カール・カールトン、キャビン・ヤーブロー(ヤーブロー・アンド・ピープルズ)、アン・セクストン、チャールズ“スリック”スティル(スライ・スリック&ウィキッド)、ステッドマン・ピアソン(ファイヴ・スター)、クラレンス“チェット”ウィリス(オハイオ・プレイヤーズ)、マイケル・ベアード(バーケイズ)のような時代を創ったアーティストたちがこの世を去りました。その他にもソーラーで名を馳せたデイナ・メイヤーズやエンジニアのレジー・ドジャーといった往年の名裏方たちもいれば、80〜90年代以降に登場した世代のアーヴ・ゴッティやボー・ドジャー、さらにはドウェイン・ウィギンスやアンジー・ストーン、ディアンジェロといった人たちも早すぎる生涯を終えています。
ただ、いずれにせよ、いつ生まれた曲であろうと、その作品に初めて出会うリスナーにとってはそこがリアルタイムなわけで、そう考えればやはり2025年も注目すべき復刻や発掘は多々ありました!
2025年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれだ!
選・文/林 剛
現行フォー・トップスでも古参となった奇才が70年代前半にミッキー・スティーヴンソンのもとで吹き込むもお蔵入りとなっていた音源がアルバム化。既発曲の初期ヴァージョンやファンキーな名曲カヴァーも含めて才能の萌芽を感じさせる作品集で、硬質なノーザン・ビートにメロウネスを合体させたこんな良質なモダン・ソウルが2019年に発掘されるまで眠っていたことに驚いた。シンセを駆使した実験的なインスト・ジャムも興味深い。

ブリット・ファンクとUKソウルの架け橋となった80〜94年の英国産ブギー&ソウル集は、12インチ再発のサンプラー的企画ではあるものの、シーンの流れを俯瞰できることからしても意義深いものだった。ソウルIIソウル加入前のキャロン・ウィーラーが歌うラ・ファミーユを筆頭に、ポーズやキャンディ・マッケンジーなど、当時のUSブラック・コンテンポラリーへの憧憬が露わになったマイナー音源が息を吹き返し、新たに光り輝く。
後にマクラリーズ名義で活動するファミリー・グループの2作目にして世俗第1弾。原盤はインディー発で少量プレスだったが、メンバーの協力でリマスター復刻されたのは喜ばしい。メロウでミスティックなソウル、クラヴィネットが躍動するファンク、レゲエ〜カリビアン路線の曲など、73年にしては洗練されたサウンドに男女混声の美しいハーモニーを乗せてポジティヴなメッセージを放っていくニュー・ソウル期の隠れた秘宝だ。
スウィートなヴォーカル&ハーモニーに焦点を当てたソウル・グループ中心の隠れた名曲集。モーメンツなどの甘茶ソウルも登場するが、ファルセットやテナーのリードをドゥーワップ・スタイルの甘いコーラスが支える曲が多数並び、チカーノ・ソウル文脈で親しまれる曲も登場する。別の編集盤で話題を集めたパフォーマーズ“Girl I Tried”など当時の未発表音源も含む、ケントらしい発掘/編纂センスに今回も脱帽。ブックレットも充実。
シルヴァー・コンヴェンションやキャロル・ダグラスを看板としたミッドランド/ミッドソングの国内復刻シリーズは初CD化も多く、賑やかだった。なかでもNYのバンドがジョン・デイヴィスの制作で吹き込んだ唯一のアルバムは、MFSBのメンバーも一部参加したフィリー・ディスコの良作として改めて再評価したい一枚。“Can You Get Down”はフィリー類型の美とも言える流麗なダンサー。50年前の作品だが十分〈モダン〉だ。
91年発売のスタックス・レヴュー(65年)の実況盤CDが60周年を記念して初出の8曲を加えた拡大版で登場。オーティス・レディングを除く主要スターたちがメンフィスとLAで行ったステージは熱気に満ち溢れるが、LA公演がワッツ暴動の数日前に近くの会場で行われていたと思うと、ある種の緊張感を覚える。バック演奏も務めたブッカーT & ザ・MG’sは、昨年12月に他界したスティーヴ・クロッパーの名技にも改めて感じ入る。
〈混じりけのない〉という意味での〈スウィート〉。ポール・ウェラー監修のソウル・コンピは、ヘッドハンターズからダレル・バンクスまで、カルトなメンフィス産ヘヴィー・ファンクなども交えながら60〜70年代のディープかつモダンな曲を越境的なセンスで紹介していた。ここに並ぶ曲はスタイル・カウンシル以降のウェラーの音楽にも影響を与えたはずで、モッズ・リヴァイヴァル世代のソウル体験ドキュメントとして捉えてみるとおもしろい。

英ブライトンのレーベルが編纂した表題通りのサイケデリック・ソウル&ファンク集。カーティス・メイフィールドやテンプテーションズら有名どころの当該曲に加えて、映画絡みで再評価されたロドリゲス“Sugar Man”などの古典が並ぶが、そこにエル・マイケルズ・アフェア、クルアンビン、マーシーらの現行ファンク/ソウルを交えた選曲は、そのルーツを辿り、過去と現在を接続させるという試みだ。現代らしい啓蒙コンピとして秀逸。
ギャンブル&ハフのソングライター仕事にフォーカスした本作は、外部レーベルで制作したフレディ・スコットやジョー・サイモンらの曲に加えて、彼らが制作に関与していないエルヴィス・プレスリーによるカヴァーなど、ヒネリの効いた選曲が光っていた。サード・ワールドやジョージ・フェイスがレゲエ〜ダブ解釈したオージェイズの曲などでフィリー・ソウルの波及力も改めて実感。ジェリー・バトラー“Lost”の未修正版は初公開だ。
丁寧な復刻が続くシルヴェスター、78年のセカンド・アルバムも7種のリミックスを追加した拡大盤が登場。ゴスペル・ソングを想定して作られたディスコ・クラシック“You Make Me Feel (Mighty Real)”を含む出世作で、エディ・ケンドリックス似のファルセット歌唱、パトリック・カウリーのシンセ捌き、制作を手掛けたハーヴィ・フークアのモダンなソウル・センスに改めて感服した。トゥ・トンズ・オー・ファンのお披露目作としても重要。
2025年のソウル復刻&発掘タイトル、私的ベスト10はこれや!
選・文/出嶌孝次
音楽界に足跡を残したレーベルやスタジオに焦点を当てるべくロンドンのマイルズ・アウェイが立ち上げた新シリーズ〈Echoes From〉の第1弾となるコンピで、ニュージャージーのソウル/ゴスペル系レーベルが74〜82年の間に残した楽曲を集めた一枚。これが予想以上に宝石だらけの内容で、デヴィッド・モラレス“Needin’ U”の元ネタとして名高いレア・プレジャーのクラシック“Let Me Down Easy”を筆頭に全曲ハズレなしの好盤でした。
ロバータ・フラックが天に召されたタイミングで世界初CD化が実現した、彼女の隠れたプロデュース作品。ワシントンDCを拠点に活動したフォーク歌手の佳作で、カニエ・ウェスト“Hey Mama”でネタ使いされたゴスペルの“Today Won’t Come Again”やジョニ・ミッチェルの提供した“Midnight Cowboy”など、社会派から日常系までニュー・ソウル時代の情緒を素朴な歌心に結びつけたフォーキーな内容が素晴らしかったです。
70〜80年代を代表するファンク・バンドのひとつで、現在も活動を続けるコン・ファンク・シャンの、幻のファースト・アルバム。もともと73年にメンフィスで録音されるもその時点では世に出されることなく、バンドがマーキュリーでブレイクした後の78年になってようやくリリースされたという代物で、こういう重箱の隅的な世界初リイシューも快挙。後に確立される個性はまだ見えないものの、剥き出しのアーシーなグルーヴが楽しめる好内容です。
この後にはフォーミュラVとしても活動を継続していくUS西海岸のバンドが、ヴォーカル・グループ的な佇まいで聴かせた唯一のアルバム。ケンドリック・ラマー&ドクター・ドレー“Compton”のネタとして知られる“What’s This World Coming To”も収録。MG’s脱退後のスティーヴ・クロッパーが5曲のプロデュースを手掛けており、もちろんソウル・ミュージックの進化と発展に絶大な功績を果たした彼への敬意を表しての選盤でもあります。
コンスタントながらも近年はペースダウン気味なケントのモータウン発掘シリーズが久々に到着。2016年以来となる3枚目の〈Motown Guys〉盤で、お蔵入りしていた25曲もの〈男たちの歌〉を集めたコンピです。スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズやテンプテーションズ、フォー・トップス、マーヴィン・ゲイといったビッグネームならずとも素直に楽しめる内容は毎度の凄さ。制作中に逝去したコンパイラーのキース・ヒューズにも改めて敬意を。
ずっと浮世離れした人のように感じていたのでショックはないものの、クエストラヴが監督したドキュメンタリー映画「スライ・リヴズ!」の発表に合わせたかのような逝去の報には驚かされました。そのサントラとなるこちらはスライとファミリー・ストーンの代表曲を中心にした定番集としても機能する一方、臨場感のあるオルタネイト・ミックス群が初出の音源だったりもするので、本編の意図とは切り離した部分でも必携な重要盤となっていました。
2025年でいうと『Private Dancer』の40周年記念盤リリースもデカかったティナ。一方のこちらは、初ソロ作となる『Tina Turns The Country On』(74年)に先駆けてジャック・ミルマンがカントリー・アルバムとして発案し、録音も完了していたという楽曲集。79年に編集盤という扱いで世に出たものの、つまりは幻のソロ・デビュー作と捉えたほうがいい内容で、彼女一流のソウルフルな心根で歌い上げる数々のカントリー・ソングが堪能できます。

70年代ディスコ・ブームと浮沈を共にしたレーベル、ミッドランド/ミッドソング・インターナショナルの大挙リイシューも賑やかだったなか、日本が誇るディスコマスターのT-GROOVEがコンパイルした23曲入りの本作は、評価されてこなかったレーベルの軌跡を辿れるという意味でも特に価値ある一枚に。シルヴァー・コンヴェンションやキャロル・ダグラスのような看板アクトの定番はもちろん、シングルのみで終わった面々の謎な曲も上々でした。
初来日から50周年という節目の2025年に久々の来日を果たしたウォーでしたが、まさにその50年前の来日公演の模様を収めた2CDのライヴ盤が登場したのはトピックでした。当時の最新作『Deliver The Word』(73年)からのヒット・チューン“Gypsy Man”なども繰り出しながら、まだリリース前だった名盤『Why Can’t We Be Friends?』(75年)の収録曲も披露され、そのあたりがオリジナル・メンバーの熱演で聴けるのも貴重だ。静岡の熱狂的な観客と交歓する“Shizuoka Chant”も熱い。

40周年のタイミングで届いた2CDのデラックス・エディション。リマスター音源でシングルB面曲/ヴァージョンなども網羅し、21分超の“America”も2種の“4 The Tears In Your Eyes”もバッチリ収録。未発表曲やアウトテイクなどがないのは時期的に仕方なさそうだとして、いずれ『Parade』周辺が出る暁にはいろいろ期待したいです。















