管弦楽、ピアノ、パイプオルガン総動員の〈伊福部昭総進撃〉
東宝の特撮映画「ゴジラ」のサウンドトラックの熱狂的マニア、“日本狂詩曲”“リトミカ・オスティナータ”など今や日本の交響楽団の定番メニューに収まった純音楽作品の聴き手のいずれにとっても作曲家、伊福部昭(1914-2006)は特別な存在に違いない。
キングレコードは1981年にLP盤『伊福部昭 映画音楽全集』をリリースしたのを皮切りに、伊福部作品の録音に特別な情熱を注いできた。中でも1983年に東京交響楽団を起用した音源制作の公開演奏会、8月5日に東京・日比谷公会堂で行われた〈伊福部昭 SF特撮映画音楽の夕べ〉は大反響を呼んだ。伊福部は周囲の度重なる説得に根負け、東宝特撮映画のために作曲した自身のスコアを再構成し、3曲(第1~3番)からなる管弦楽“SF交響ファンタジー”を完成。さらに吹奏楽曲“ロンド・イン・ブーレスク”も管弦楽用に編曲した。指揮者は2025年に亡くなった汐澤安彦。当時最新のデジタル技術を駆使して録音した2枚組LP盤は大ヒット、2024年には同時に収めたアナログ音源にDSDリマスタリングを施したSACD/CDハイブリッド盤をリリースした。
1995年には存命だった作曲者監修の下、CD〈伊福部昭の芸術〉シリーズがスタート、2025年までに13タイトルを発売した。こうした蓄積は再び演奏会の現場に還元され、2024年に〈キング伊福部まつり〉が始まった。〈伊福部昭総進撃〉は2025年5月26日、東京オペラシティコンサートホールの〈まつりの夕べ〉第2回のライヴ録音で、オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。前半では東京音大学長だった時期の伊福部に直接の指導を受けた和田薫が“SF交響ファンタジー”全3曲を指揮、冒頭には和田がパイプオルガン用に編曲した第1番が、石丸由佳の演奏で収められている。後半は先ず、松田華音がピアノ独奏曲の冴え渡った演奏で客席を熱狂させる。次にベトナム国立交響楽団音楽監督の本名徹次が“交響譚詩”“シンフォニア・タプカーラ”“ロンド・イン・ブーレスク”を指揮する。いずれも 〈まつり〉の名にふさわしい華やかな演奏で、伊福部音楽の不滅の価値を立証している。
