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より大きいインパクト

 それから遡った77年、マイケルはシドニー・ルメット監督のミュージカル映画「ウィズ」に出演するため、姉のラトーヤを伴ってNYに滞在する生活を送っていた。旧知のダイアナ・ロスが主演を務めたこの映画は興行的に失敗に終わったものの、NYでの滞在期間は伝説的なクラブ〈スタジオ54〉によく通い、初期のヒップホップなど刺激的なダンス・ミュージックに触れていたという。この時の経験が自作曲でのパーカッシヴなビートボックスなどに影響を与えたのだという。また、それ以上に、映画の音楽を担当していた大御所プロデューサーのクインシー・ジョーンズに出会ったことが大きかったのは言うまでもない。

 そうやって誕生したのが、マイケルにとって通算5作目にして真のソロ・スタートともいえる金字塔『Off The Wall』(79年)である。ここで彼がみずから作り上げた楽曲や選んだスタイルは、往時のバブルガムの延長となる横並びのグループ・パフォーマンスではないソロ・パフォーマーとしての自身を確立させるものとなった。このアルバムからは、光が走るような自作の“Don’t Stop 'Til You Get Enough”と、クインシー御用達の名ソングライターであるロッド・テンパートン作の“Rock With You”が全米1位を獲得。さらには表題曲と“She’s Out Of My Life”の2曲もTOP 10入りを記録。他にもスティーヴィー・ワンダー作のメロウ・クラシック“I Can’t Help It”、ポール・マッカートニーやキャロル・ベイヤー・セイガーらの楽曲を取り上げたアルバムは全米3位まで上昇。グラミーでは“Don’t Stop ’Til You Get Enough”にて〈最優秀男性R&Bヴォーカル・パフォーマンス〉部門を受賞した。ただ、他のアワードも含めて受賞/ノミネートとなるのはソウル/R&B系列の部門ばかり。マイケルはより大きなインパクトを音楽シーンに与えられなかったことを悔しく感じていたそうで、次の機会にはその期待を超えようと誓ったはずだ。

 そしてグループがハリウッドのウォーク・オブ・フェイムに星を授与された80年、マイケルはクインシーから得た知識なども活かしてジャクソンズの『Triumph』をリリースする。ここからも多くのヒットが生まれたが、特に重要なのはマイケルが単独で書いて歌った“This Place Hotel”だろう。謂れのない汚名を着せられて愛を失うという内容のこの曲は、その後の“Billie Jean”のアイデアンにも直接的にリンクするものだろう。ヒットした同作のリリース後には北米を〈Triumph Tour〉で回り、そこから生まれたライヴ盤もゴールド・ヒットとなっている。

 なお、ジャクソン5〜ジャクソンズの活動を通じては映画ではマイケルにとっての足枷になったような部分が強調して描かれているため、特にジャクソンズについてはグループ時代の作品を軽んじる向きも出てきそうだが、そういう単純な話でもなく、それぞれの作品も素晴らしいし(特に『Destiny』と『Triumph』については傑作である)、マイケルも含むメンバー個々のグループならではの働きも楽しめる。ただ、リード・ヴォーカリストでメイン・ソングライターで歌にもダンス・パフォーマンスにも秀でたマイケルがズバ抜けて実力も人気も圧倒的だったということだ。