パーヴォ・ヤルヴィが語るドイツ・カンマーフィルとの20年
「今振り返れば、すべての経験を経てシューベルトに戻ってきたことは、私たちにとって円が閉じるような、非常に意味のあるプロセスだったと感じています」
まるで天からの啓示のように、その交響曲は突然始まる。フルートとオーボエのユニゾンによるわずか4小節の導入に続いて、ヴァイオリンが沸き立つメロディをなめらかに奏でる……。
パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン(DKAM)によるシューベルトの交響曲全曲録音の第2弾となる最新盤は、聴き手を一瞬で引き込むこの第5番と“小ハ長調”の愛称を持つ第6番という中期のカップリング。精緻なフレージング、透明感を保ちながらも時にロマンティックなまでによく歌う、このコンビならではの極め尽くした感のある逸品だ。

シューベルトの8つの交響曲へのインタヴューの中で、ヤルヴィはこう語る。「交響曲第5番は、(若々しい活力に満ちた初期から)ロマン派のシューベルトへと続く架け橋のような存在です。彼がそこから第6番、そして“未完成”と交響曲第8番“グレイト”へと向かう明確な方向性が感じられます。ですから、私にとって第5番は、二つの様式をつなぐ架け橋なのです」
この4月末、私はパーヴォ・ヤルヴィとDKAMを集中的に取材する機会に恵まれた。欧州ツアーの最終日となったハンブルク・エルプフィルハーモニーのコンサートを聴いた2日後、ブレーメンの本拠地〈カンマー=フィルハーモニー・ホール〉に場所を移してパーヴォにインタヴューした。実はここは、ブレーメン東総合学校の体育館。彼らはこの学校との共同による音楽教育プロジェクトに関わりながら、リハーサルやレコーディングを行なっている。第5番と第6番の最新盤もここで録音された。
パーヴォがDKAMの首席指揮者に就任して22年。そして今年は、このコンビの名声を飛躍的に高めたベートーヴェンの交響曲全集のリリースが始まって20年の節目を迎えた。
「実は私たちは、ベートーヴェンの交響曲ツィクルスのすぐ後にシューベルトに取りかかりたいと考えていたんです。結果的にはシューマン、さらにブラームスの交響曲を先に録音することになったわけですが、今振り返れば、すべての経験を経てシューベルトに戻ってきたことは、私たちにとって円が閉じるような、非常に意味のあるプロセスだったと感じています」
長期的な視野に立ち、ひとりの作曲家の作品に集中的に取り組む。地域に密着した活動を行いつつ、数多くのツアーをこなし、それが終わると今度は集中的なレコーディングセッションに臨む。そのような独自のコンセプトで、いくつもの高峰を登り詰めてきたパーヴォとDKAMが、彼らの原点であるベートーヴェンから最も近しいシューベルトに戻ってきたというのは、なるほど、音楽人生の不思議な縁という気がする。