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©Jeff Katz

いつ聴いてもタイムレス

 77年に録音された先述の“I Am You”は、後のザ?タイムを思わせるプレ・ミネアポリス・ファンク的な一曲で、まだファルセット・ヴォーカル縛りで歌っていた頃の瑞々しいプリンスを体感できる。デビュー作『For You』(78年)よりはそれに続いた初ヒット作『Prince』(79年)に近い躍動的な作りで、『Prince』といえば同時期にソウル・チャートで競い合っていたのがマイケルの『Off The Wall』でもあった。それに続く81年録音の“Tick Tick Bang”は、後に『Graffiti Bridge』(90年)で発表される“Tick, Tick, Bang”のプロトタイプとなるヴァージョン。既出版とはまったく異なるパンキッシュなニューウェイヴ調という一時期の殿下がよくやっていた性急なスタイルで、こうした聴き比べをできるのが未発表音源集を聴く楽しみのひとつでもあろう。既出曲の別ヴァージョンという意味では、順序は変わるが91年に録音された“With This Tear”で、これは世界的にブレイクする前のセリーヌ・ディオンに提供したホーリーなバラード曲の殿下歌唱版である。こうした『Originals』的な企画もまた聴いてみたいものだ。

 85年の録音となる“Heaven”(スザンナ・メルヴォワンが参加)、そして89年録音の“I Wonder”もそれぞれの時代ならではの粘着ポップを聴かせていて、かねてから人気が高かった曲である(どこで?)。さらに95年録音のファンク・チューン“Stone”は、『Emancipation』(96年)に収録された“Soul Sanctuary”と同じ成り立ちで、サンドラ・セイント・ヴィクターのお蔵入りアルバムに入っていた曲をプリンスが申し出てリサイクルしたうちの一曲にあたる。そして、『Musicology』(2004年)に通じる2003年録音の“Calabama”(ジョン・ブラックウェルが演奏)、2007年録音の直情ロック・チューン“The Guilty Ones”、2012年の“Bestest Friend”に至るまで、プリンスの足取りを辿ることができる『Timeless』。そんなベタなタイトルの通り、彼の音楽は時代を余裕で超えて響くはずのなので、誰がいつ触れても構わないものではある。ただ、なるべく早く聴かないと、その頃にはまた膨大な初出音源が出てきているかも……。

プリンスの作品を一部紹介。
左から、90年作『Graffiti Bridge』(Paisley Park/Warner Bros.)、96年作『Emancipation』、2021年作『Welcome 2 America』(共にNPG/Legacy)