WHAT MUST I SAY, WHAT MUST I DO
耳で聴いたピープル・トゥリー
ジョデシィをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ
デス・ロウと接近していた頃のジョデシィと縁を深めていた2パック。ディヴァンテが“No More Pain”のプロデュースも手掛ける本作からは、K-Ci&ジョジョを迎えたエロ狂宴チューン“How Do U Want It”が全米1位を記録している。この後にもマキャヴェリ名義の“Toss It Up”や疑似共演の“Thug N U Thug N Me”など、両者の雄々しいコンビネーションにハズレはなかった。
ステージで“Do Me, Baby”を披露したこともあるジョデシィだが、上掲の2パック曲で“Darling Nikki”をネタ使いしていたり、エキセントリックな万能感まで受け継いでしまった感はあるものの……資質は異なれどディヴァンテの殿下への憧れは絶大だった。ジニュワインが“When Doves Cry”を歌ったのは誰の影響?
ジョデシィの不在でできた空席にすぐさま飛び込んでブレイクしたのがこの(当時)4人組だ。K-Ciに比肩するほど強靭なノドを誇るシンガーのシスコを中心にしつつ、全員が歌える編成は先達以上にストロングなハーモニーを生み出した。なお、ここで“So Special”を手掛けたのはスウィング・モブを離脱したばかりのダリル・ピアソン。
ジョデシィとメアリーJ・ブライジが裏通りのセンスを世に広めた90年代、表通りをボーイズIIメンと闊歩していたのがマライア。とはいえ、ナスティー方向へのシンパシーは当然あったようで、自我を解放して以降の彼女は何度となくジョデシィをネタにしてみせている。本作所収の“The Impossible”では“Forever My Lady”を引用。
スティーヴィー・ワンダーやザップ、チャーリー・ウィルソンなど、ジョデシィ世界から連想できる先人は数多いが、彼らの特殊性と普遍性を担保するのはこの偉人を引き合いに出されるほどのK-Ciの歌唱力だろう。カヴァーしてソウル親爺のドギモを抜いた“If You Think You're Lonely Now”の原曲は、デカ眼鏡もよく似た本作に収録。
現時点だと本コンピで聴くのが手っ取り早いタフ・ラヴの“So Freakin' Tight”は“Freek'n You”を引用したハウス・チューンで、ジョデシィ帰還に合わせたかのように全英ヒットを記録! 同じ趣向ではエディ・トニック“I Wanna Freak U”(2008年)やリル・ジョン“Every Freakin Night”(2010年)という先例もあり、パーティー・フリークとは相性が良さそう。
DRAKE If You're Reading This It's Too Late OVO/Young Money/Cash Money/Republic(2015)
アリーヤやウータンなどの名前をイイ感じのくすぐりとして挿入してくるのが巧いドレイク。J・コールと“Jodeci(Freestyle)”を披露していたこともある彼は、“How Bout Now”にてジョデシィの“My Heart Belongs To U”をネタ使いしてみせている。本作のフィジカル化に際してのボーナス・トラックになっています!
恋人K-Ciとの名デュエット“I Don't Want To Do Anything”を初作で演じたアップタウンの女王が、その泥沼にもがきながら作り上げたのがこの2枚目のアルバムだ。背景はともかく、バッド・ボーイ勢を中心にダルヴィンやジョジョも尽力した内容は彼女の最高傑作。破局後の“Not Lookin'”(99年)ではK-Ciと再会する。
サントラ『Above The Rim』にてディヴァンテ制作の“Part Time Lover”を披露してもいたヒューストンのヴォーカル・グループ。ジョデシィの拓いた路線を受け継ぐエロティックな歌世界はいまも色褪せない。2009年のカムバック曲“Knockin' Your Heels”でジョデシィを久々に集結させていただけに、今度は彼らの新作が聴きたい!
世界的にも直球のジョデシィ・フォロワーがあまり見られないのは、やはりモダンな資質のあるストロングなヴォーカリストの不在ということもあるのだろうが、日本にはエロもピュアもK-Ci&ジョジョ編成で包み込む彼らがいる。スウェッティーな激唱で届けるアップのバウンシーなエグさはジョデシィ以上かも。
ラッパー連中のリサイクル率の高さは〈ヤバいR&B〉として受け入れられたジョデシィの特殊さを物語るもので、本作では“Cry For You”の泣き節ループが哀愁をズブズブに煽りまくる“You're Everything”を収録。ビッグ・モーやZ・ロウ、ボタニー・ボーイズなどチンピラなテキサス勢によるネタ使用頻度の高さは謎だが。
ラッパー間でのネタ人気に対し、対象としてデカすぎるせいかR&B方面でのリサイクル例は意外に多くないジョデシィだが、タンクは本作収録の“Lonely”において“My Heart Belongs To U”の劇的な導入部を執拗にループしている。ディヴァンテとの因縁深いジニュワインらと組んだTGTでは、“Freek'n You”や“Cry For You”をたびたびステージで取り上げていた。
今回ジョデシィ復活を仕掛けたスフィンクスは、MCハマーの兄弟であるルイス・バレル運営の新興レーベル。ハマーがツアーの前座にジョデシィ(とTLC)を抜擢して以来、NYLA発のサントラ『What's The Worst That Could Happen?』にディヴァンテを招くなど、縁は続いていたようだ。なお、ジョデシィとハマーはデス・ロウ時代の暗い記憶も共有している……。