DISCOGRAPHIC JAMES TAYLOR
ジェイムズ・テイラーを知るための10枚
ビートルズ以外でアップルの契約第1号アーティストとなったジェイムズ・テイラーの、ロンドン録音による初のソロ作。初々しいが、すでに彼のスタイルはほぼ確立されている。60s的なストリングスやホーンの鳴りに賛否はあるものの、改めて聴くと本作ならではの個性になっていて悪くない。
〈シンガー・ソングライター・ブーム〉の口火を切った重要作だ。一聴するとシンプルなフォーク風。だが、聴き入るうちにジャズやソウル、カントリー、ブルースといった要素がさり気なく散りばめられた、音楽性の豊潤さに気付くはず。内省的ながら湿り気がないのもJTらしい。
バックに後のセクションの面々やメンフィス・ホーンズを従え、キャロル・キングやジョニ・ミッチェル、実妹のケイトら女性ゲスト陣を適所に配したことで、より鮮やかなサウンドを提示した名作。初の全米1位を獲得した“You've Got A Friend”での無上の優しさが沁みる。
内省さが薄れたぶん、明るく開放的な雰囲気に包まれたこの6作目は、マーヴィン・ゲイ〈How Sweet It Is〉のカヴァーなど朗らかな曲が多く、ニック・デカロによる微糖加減のストリングスも美しい。オーガニック~サーフ・ロック系が好きな人は、まず本作から聴いてみてほしい。
ボビー・ウォマックの絶品メロウ・カヴァーやスティーヴィー・ワンダーとの共作曲など、軽やかなソウル・マナーを内包した一枚。全体を覆う休日感覚と淡いバーバンク風味も最高だ。本作がいちばん好きというJTファンは多く、〈Free Soul〉的な耳で聴くのも◎!
みずからのイニシャルを表題に冠していることからも窺える通り、この移籍盤には自信と力強さが漲っている。久しぶりにピーター・アッシャーと組み、馴染みのセクションを中心とした少数精鋭による無駄のない音が、心地良い緊張感を湛えながら真っ直ぐ耳に届く会心作。
デビュー時から独自のクロスオーヴァー感覚を備えていたJTは、ある意味AORの先駆者的な存在と言えなくもないが、とりわけ本作に横溢するマイルドネスとメロウネスは格別で、西海岸の腕利きによる演奏も洒脱。極めつけはJD・サウザーとの甘美なデュエットか。
離婚や怪我など苦い経験を経て、ふたたび前向きに進み出した時期の一枚。ブラジル音楽風から、バディ・ホリー曲の大胆な解釈、戦前のスタンダードにバート・バカラック曲など雑多な内容ながら、70年代の黄金期を思わせるサウンドで見事にJTカラーに染め上げている。
見過ごされがちな作品だが、実はこれが結構良い。珍しくフュージョン的なアプローチのサウンドを敷き詰めていて、いま聴き直すとシャキッとした音作りが意外とネオアコっぽかったり。レゲエやラテン風のほんのりトロピカルな曲が目立つのもおもしろく、この機会に再評価を!
ライヴ作品や企画盤を除けば2000年代で唯一となる本アルバムは、ライ・クーダー、ジョン・ピザレリ、デイヴ・グルーシンなどツボを心得たゲストの助演も光る内容だ。ここでのJTのジェントリーな歌声とメロディーメイクは、まさにワン&オンリーな名人芸の域に達している。