耳で聴いたピープル・トゥリー
ジェイムズ・テイラーをめぐる音楽の果実は、ここに一本のトゥリーを生んだ

CAROLE KING Tapestry Ode/A&M(1971)

シャイな彼女を無理矢理ツアーに帯同させ、デビューの契機を作ったジェイムズ・テイラーはまさに恩人。でもって永遠の友だちだ。2010年、同時期に行われたディランのライヴハウス公演より感動的だったという声も聞かれる、JTと彼女の武道館ライヴ。そこで披露された“You've Got A Friend”を思い出すたびに目頭が熱くなる。 *桑原

 

 

JASON MRAZ We Sing. We Dance. We Steal Things. Atlantic(2008)

JTも男前だが、こちらも勝るとも劣らない男前。本作で聴ける友情讃歌“Details In The Fabric”が現代版“You've Got A Friend”……っていうのは少々強引だけど、これみよがしにソウル趣味をアピールするんじゃなく、アコギの引き語りスタイルでじんわりそれを匂わせている点が、両者の共通点だと思う。 *赤瀧

 

 

BABYFACE Playlist Island(2007)

このカヴァー集で唯一JT曲を2つ取り上げた童顔。“Fire And Rain”のカントリー風な解釈も捨て難いですが、都会的なメロウネスを湛えた『In The Pocket』からのナンバーをピックアップしている点に〈らしさ〉を感じ、『The Day』期の音作りにJTが多大なる影響を与えたことも同時に気付かされるのです。 *山西

 

 

ART GARFUNKEL Watermark Columbia(1977)

サイモン&ガーファンクルは最強コンビだけど、そこにJTが入っても良いバランスが生まれることを、本作の“(What A)Wonderful World”は教えてくれる。で、その後もJTとアートは“Crying In The Rain”を取り上げ、エヴァリー・ブラザーズになりきってみたり。きっとこの2人でデュオを組んでも成功したな。 *桑原

 

 

VERONICA MORTENSEN Happiness Is Not Included Stunt(2008)

本作にてJT“Valentine's Day”をリサイクルしたデンマークのジャズ歌手。もともとジャジーな雰囲気を持つナンバーだけにその仕上がりは絶品で、カヴァー曲選びの巧さはJTにも引けを取らず。なお、適度にソウルフルな歌唱がキャロル・キングと比べられたりもしていて、いつかJTと共演してほしいな。 *赤瀧

 

 

TAYLOR SWIFT Red Big Machine(2012)

本文の最後にある〈人気絶頂の女性歌手〉は、2010年のツアーでJTとソファーに座りながら嬉しそうにデュエット。また、本作の“Begin Again”で〈こんなにJTのレコードを持っている女の子には出会ったことがない!〉と、かつて恋人に言われたことを自慢げに告白しています。彼女にとってJTは人生の一部のようで。 *山西

 

 

ED SHEERAN Warner UK(2011)

そんなテイラー嬢とお泊りデートを報じられるも、あっさり親友宣言して(マジで!?)複数のモデルと浮名を流しているエド。ギターの爪弾きが効いたフォーキーなソウル・ポップを特徴とする本作リリース時には、〈ネクストJT〉なんて評されていましたが、まさか女好きな部分まで似るとは思ってもいませんでした。 *山西

 

 

JACKSON BROWNE Standing In The Breach Inside/ソニー(2014)

同い年のライヴァルで、ジョニ・ミッチェルジャイド・バリモアと元カノが被っていたりもする兄弟。男のプライドか、これまで互いの曲をカヴァーすることはなかったが、近年ジャクソンはJT曲をレパートリーに。なお、この最新作でも社会派な歌を盛り込み、JTと同様いまなお静かに闘志を燃やし続けている。 *赤瀧

 

 

秦基博 evergreen ARIOLA JAPAN(2014)

まるで食卓を囲みながら大事な人にそっと語りかけるようにして歌を紡いでいくJT。秦の弾き語りライヴ〈GREEN MIND〉もそんなふうにして聴き手との緊密な関係を取り結ぼうとする試みがなされており、あきらかにJTの影響が見て取れる。エヴァーグリーン度の高いメロディーメイクも似ているな。 *桑原

 

 

PETER AND GORDON Peter And Gordon Columbia/ワーナー(1964)

リヴァプール・サウンドを代表するデュオの片割れ、ピーター・アッシャーリンダ・ロンシュタットを育てたプロデューサー。そもそも彼が独り立ちするきっかけは、USでJTを売り込むためだった。初期作品とコロムビア移籍後の数作を手掛けるなど、洗練度の高いJT印の音が確立できたのはこの人の影響も大きい。 *桑原

 

 

THE BEATLES 1967–1970 Apple(1973)

アップルからソロ・デビューしたJTは、この怪物バンドと深い縁がある。ジョージ作の“Something”がJT“Something In The Way She Moves”をヒントにして書かれた話は有名だし、“Hey Jude”も然りという噂。そうそう、ヨーヨー・マとJTがカヴァーした“Here Comes The Sun”も一聴の価値あり。 *桑原

 

 

DIAMOND & THE PSYCHOTIC NEUROTICS Stunts, Blunts & Hip Hop Chemistry/Mercury(1992)

バンド期のJTはヤンチャで激しかったんだな~っていうのが窺える“Knocking 'Round The Zoo”。このガツッとしたブレイクが格好良いファンク曲は、本作のイントロでサンプられたのを皮切りに、ブラック・ムーンコモンLMFAOニッキー・ミナージュも使用するなど、いまなお愛される定番ネタです! *山西

 

 

BUDDY HOLLY The Best Of Buddy Holly Geffen(1985)

自作自演歌手にしては他人のカヴァーで多くのヒットを飛ばしてきたJT。特にバディには思い入れが深いようで、“Everyday”と“Not Fade Away”の2曲をリメイクしている。また、チャック・ベリーエディ・コクラン曲にも挑戦していて、紳士的な歌声に似合わず(?)実は猥雑なロックンロールが大好物なのだ。 *赤瀧

 

 

VARIOUS ARTISTS A Tribute To Joni Mitchell Nonesuch(2007)

JTがジョニの71年作『Blue』をサポートしたことから2人は恋に落ち、同年のキャロキン作品などに仲良く揃って参加。JTのジャズ趣向は、少なからずこの年上彼女が影響していたんじゃないかな。そして破局後も良好な友人関係は続き、本作では出会いのきっかけとなった“River”をカヴァー。現妻が嫉妬しそう。 *山西

 

 

JAMIE CULLUM Interlude Island/ユニバーサル(2014)

ギターを始めた若い頃にほとんどのJT曲をマスターしてしまったというジェイミーだけど、聴き手の深部を優しく揺さぶる繊細な歌心も、きっと一緒にJTから学んだのだろう。そんな頼もしいチルドレンがライヴで披露する“Fire And Rain”は、泣きたくなるほど寂しさを湛えていて、とにかく素晴らしいんだ。 *桑原

 

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