TODAY, TODAY, TODAY I,M FINALLY ON MY WAY
13年ぶりのオリジナル・アルバムが完成したいま、JTは何を思う?

 近年もカヴァー集やクリスマス・アルバムをリリースし続けてはきたものの、オリジナル作品は長らく発表していなかったジェイムズ・テイラー。まずは、「久しぶりに新曲を書き、レコーディングするという作業はやりがいがあって楽しかった」と現在の心境を語ってくれた。

 「気持ちを一新し、自己に厳しくなることが必要だった。曲が固まっていく最終段階というのは、とても特別なエナジーを必要とする。まず今回は、ニューポートにある友人のアパートメントを借りて、ひとり孤独に1週間ほどこもって作業した。それは自分でコントロールできる作業ではなく、自然に湧き上がる音楽を受け入れていく作業なんだ」。

 その後、スティーヴ・ガッドルイス・コンテラリー・ゴールディグスらツアーに同行しているメンツなどを招いて、13年ぶりのニュー・アルバム『Before This World』を完成させた。

JAMES TAYLOR Before This World Concord/ユニバーサル(2015)

 「こんな素晴らしい仲間が一緒に演奏してくれるなんて、幸運だと思う。その音楽が最終的に僕の作品になる。何をどう演奏するのか、僕が指示できる立場にいる。自分に残された時間で、それを可能な限り追及したいんだよ」。

 これまでにも社会の流れを個人的な視点で観察した曲を多く残してきた彼。本作では戦地アフガニスタンについて触れている。

 「戦争という殺し合いの場に行くこと、その心境とはどんなものなのか。人間が置ける極限的な状況じゃないかと思う。とはいえ、僕には理解できないことだし、想像するしかなかった。兵士の心境はわからないからね。でも、考えるのを止められなかったから曲にしたんだ。音のほうは自然に浮かんできたよ」。

 音楽活動のほかに、民主党の選挙キャンペーンを応援してきたが、その動機については「チェイニー/ブッシュ時代、僕にとっては心境的に困難の時代だった。だからオバマが選出されたのは非常に重要なことだったよ。僕は政治的なライターでもシンガーでもない。政治について考えることは多いけど、エキスパートではない。市民として〈援助してほしい〉と頼まれれば、ノーと言えなかった。僕は民主党よりもずっと左寄りだけど、仲間を増やすのは重要なこと。この国は右寄りに傾く傾向が強いからね。それは進歩ではない……というのが僕の政治観だよ」とのこと。

 また、長い音楽キャリアについてもこのように話す。

 「つくづく幸運だと思うよ。音楽をやり、こうやって生きてきたことが。過去には中毒の問題などもあったのに、死なずに生きてこられて感謝している。その気持ちがいちばん大きい。奇跡だよ、こんな素晴らしい人生を送れて。だから可能な限り楽しみたいんだ」。

 

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