1. High And Dry(RADIOHEAD)
冒頭を飾るのは、ファンの間でレディオヘッドの最高傑作に挙げられることも多い95年作『The Bends』(Parlophone)からのシングル曲。ボトムは抑えめに、そのぶんエレピを前に出すことで、UKギター・ロック史に残る美メロをじっくり引き立てます。当然スタイリッシュに仕上げつつも、原曲の含む物悲しさを殺さないのがクオシ流儀。
2. Open Your Eyes(BOBBY CALDWELL)
コモンもドゥウェレもジョン・レジェンドもリサイクルした、伊達な男たちが愛して止まない同曲のオリジナルは、78年発表の『Cat In The Hat』(Clouds/TK)に収録。quasimodeは各々のソロを立てるよりも、4人の演奏を束で聴かせることに徹し、聴く者すべてがそのしなやかなメロウ・グルーヴに安心して身体を預けられることでしょう。
3. Smoke Gets In Your Eyes(JEROME KERN)
プラターズやダイナ・ワシントンらの歌唱で有名なスタンダードで、ガートルード・ニールセンが最初に吹き込んだヴァージョンは編集盤『My Best Wishes(1933-1938 Issued Recordings)』(Vintage Jazz Band)などで聴けます。『My Favorite Songs』ではスピード感のあるベースを案内役に、ダンサブルに仕立てているのが〈らしい〉ですね。
【参考動画】PLATTERSによる“Smoke Gets In Your Eyes”歌唱映像
GERTRUDE NIESEN My Best Wishes(1933-1938 Issued Recordings) Vintage Jazz Band(2000)
4. Round Midnight(THELONIOUS MONK)
ジャズ・ピアノの巨人が生涯に何度もレコーディングした同曲ですが、初録音はこの56年作『Genius Of Modern Music: Volume 1』(Blue Note)にて。quasimode版では60〜70年代のイタリア映画音楽みたいなファンク・テイストが飛び出し、きっとタランティーノもソリッドなイントロを聴いた瞬間に食指を動かすのでは!?
5. Overjoyed(STEVIE WONDER)
85年作『In Square Circle』(Motown)でスティーヴィー・ワンダーが発表した名バラード。メアリーJ・ブライジをはじめ多くのカヴァーを生み、昨年セリーヌ・ディオンがスティーヴィー本人を迎えて披露したことも記憶に新しいですね。quasimodeはサルサ風のビートを用いて軽妙に仕上げ、『My Favorite Songs』内でもとりわけTres-men好きが興奮しそうな一曲に。
6. Love Theme From Sunflower(HENRY MANCINI)
70年に公開されたイタリア映画「ひまわり」のサントラ『Sunflower』(Avco)より。誰もが一度は耳にしたことのある、胸が張り裂けそうなほど切ないあの旋律に、ゆったりとしたレゲエのリズムを合わせるアレンジがとても洒落ています。2011年作『Magic Ensemble』でこだま和文らと試みたアプローチが、ここで大きな実を結びました。
7. Day Dreaming(ARETHA FRANKLIN)
マッド・プロフェッサーによるラヴァーズ・ロック解釈も忘れ難い、72年作『Young, Gifted And Black』(Atlantic)に収録された一曲です。quasimode版はトロトロのメロディーをサックス(もしかしたらギター用のエフェクターを通したもの?)で優しくなぞりながら、終盤に向けて徐々にテンポアップ。むろん、都会の昼下がりにまどろみながら聴くのが正解。
8. Can't Take My Eyes Off You(FRANKIE VALLI)
ボーイズ・タウン・ギャングやローリン・ヒルらに歌い継がれてきた名曲中の名曲は、フランキー・ヴァリ初のソロ・アルバムとなった67年リリースの『Solo』(Philips/ワーナー)で聴けるのがオリジナル。原曲から漂う〈恋する喜び〉をキレのある躍動的なラテン・ジャズ・サウンドで助長したquasimodeのヴァージョンは、来たるべき夏のアヴァンチュール感を煽ります。
9. Cleopatra's Dream(BUD POWELL)
セロニアス・モンクと並び〈モダン・ジャズ・ピアノの祖〉とされる天才プレイヤーが、58年に残した『The Scene Changes: The Amazing Bud Powell Vol. 5』(Blue Note)からのナンバー。前曲の流れを受けてここでもラテンの香りをほんのり匂わせつつ、主旋律を強調することで、どこか影を帯びた哀感を感じさせてくれるのが流石です。
10. Unforgettable(NAT KING COLE)
51年に発表され、ナタリー・コールやナズのリメイクでも知られるナット・キング・コールのオリジナルはベスト盤『Icon』(Capitol)などでチェック可能です。その原曲のムードを引き継いだスロウテンポの序盤から、スウィッチを入れ替えて倍速化し、ドラムンベースのリズムでエレガントにドライヴしていくquasimodeヴァージョンの洒脱さといったら。
11. Calling You(JEVETTA STEELE)
87年公開の映画サントラ『Bagdad Cafe』(Island)から、後にホリー・コールらも取り上げる挿入歌をチョイス。この曲の持つ気怠いノスタルジーを引き出すのに、派手な演出は不要。シンプルだからこそ繊細さが際立つ優しいタッチのドラムに導かれ、聴き終わってもしばらく不思議な余韻を残してくれます。アルバムのラストに相応しい逸品ですね。