「出来るもんなら何でも作るよ」いつかは行ってみたい深夜食堂
いつ行っても変わらずそこにある。
新宿の花園神社付近の路地裏で深夜0時から7時まで営業する飯屋「めしや」は営業時間から通称「深夜食堂」と呼ばれている。
などという説明は野暮というものか。原作は安倍夜郎の人気コミックで、2009年深夜にTVドラマ化され好評を博し、その後パート3まで製作され、今回の映画化に至った。
TVドラマ版と主要キャストスタッフ陣がほぼを同じくしての映画化。「いつ行っても変わらずそこにある」という「深夜食堂」と変わらず、映画化に際して映画だからという跳躍はあえて設けなかったのは正解である。十分にうまいのだ。
本作は松岡錠司の6年ぶりの監督作品でもある。とにかく役者たちがみな滅法素晴らしい。今回は過去の松岡映画の出演者総登場の感があり、例えば『バタアシ金魚』主演の高岡早紀と筒井道隆の、それぞれ(役柄的に)疲弊感のある佇まいには感傷ではない感動がある。
新たに松岡組となった中での白眉は多部未華子だ。東京に上京するもお金がなく灼熱の中を彷徨する多部の素晴らしさ。ほとんど「アイドル映画」といっていい多部の動きの魅力。それにこたえる演出の巧みさ(急坂と自転車!)。それは、かつて「いつ行っても変わらずそこにあった」映画の輝きに満ち満ちている。
マスターの「出来るもんなら何でも作るよ」のセリフを、松岡錠司も同じように言うかもしれない。そして出来あがったものは、変わらずに大変うまいだろう。でも次は、無謀にもお任せでと頼んでみたい。
ごちそうさまでした。