コンプトンに生まれ、コンプトンに還る?? ドクター・ドレーの足取りをまったり振り返りつつ、オマエらは『Compton: A Soundtrack』をどう楽しむ?
20世紀の思い出
DGノックアウト「オイ、どれーだけ待ったと思ってんだよ!」
ダレスタ「いきなりクソつまんねえダジャレかよ……まあ、何にせよ待った甲斐はあったってもんだぜ。ドクター・ドレーのアルバムで『Compton』ってタイトルなのも、何と言うか……感動的だよな」
DG「とにかく出たこと自体がアレなんだけど、Apple Musicの件も含めて流石に出し方も巧かった。何より、NWAの伝記映画『Straight Outta Compton』にインスパイアされた作品ってことで、そっちの相乗効果でも話題になってるみたいだ」
ダレ「タイトルのせいでややこしいけど、サントラではないんだよな」
DG「〈この街とオレの人生のサントラさ〉みたいなノリだろ。本人いわく〈これがグランド・フィナーレ〉ってことで」
ダレ「しかし、みんなずっと待ってた!みたいな感じになってるのがアレだよな」
DG「まあ、オレが待ってたのは『Detox』という名前だった気もするんだが……」
ダレ「やめとけ。ただ、『2001』を出す前はあんまり期待されてなかった気がするから、流石に16年も空いたことで、そのぶん期待が募ったというのはあるだろうよ」
DG「16年前っていうと20世紀だぜ……俺らもちょっと甘酸っぱい思い出に浸っちまうぜ。そもそもは予告していた『Chronic 2000』の名前をデス・ロウに使われたせいで付けた苦肉のタイトルだった気がするんだが、実際に21世紀を先取りする音のアルバムになったんだからな」
ダレ「最初は〈デス・ロウおもしれーな〉って笑ってたけどな。『2001』がジワジワ効いてきて、それどころじゃなくなった」
DG「でも、考えてみるとアフターマスを作ってから大当たりが出なかったことを思うと、契約したジミー・アイオヴィンの辛抱強さも凄いと思うよ」
ダレ「インタースコープの当時のボスで、後にドレーと共同でBeatsを創業して、いまじゃ揃ってAppleの偉い人だからさ。どんだけ慧眼なんだって。96年にドレーがデス・ロウを抜ける時、最初に相談した相手なんだよな」
DG「綺麗に言えばそうなるな。結果的にはベストの選択だったんだろうけど」
ダレ「一時はシュグ・ナイトとドレーの両方と契約して天秤にかけてたわけだから、一番のGって誰なんだよ……って話だぜ」
DG「デス・ロウは最初にシュグとDOCが組んだところにドレーが引き込まれた格好だから、ドレーが初めて自発的に動いて作ったのがアフターマスってことになるな」
ダレ「俺らもジミーさんには足を向けて寝られませんよ!」
DG「そういやDOCは『Deuce』(2003年)を出した時に、〈周りにいる奴のせいで、俺はドレーと仕事できない〉って話してたな。〈ドレーもシュグもゲームの駒にすぎなかった〉とか言っちゃう人だからね」
ダレ「とはいえ、デス・ロウ末期について〈音楽と関係ないチンピラがスタジオにたむろするようになって邪魔だった〉と言ってるから、ドレーも単純に環境をリフレッシュしたかったのは確かだろうよ」
DG「実際、94~95年のドレーは一気に寡作になっていったんだよな」
ダレ「ちょうど94年にはアイス・キューブと“Natural Born Killaz”で再会して、翌年には亡くなる直前のイージー・Eと和解もしてるから、ちょっとスロウバックしたドレーの気分が周りの血気盛んな環境と合わなくなっていったのはあるかもな」
DG「そこに2パックも入ってきたからな。俺らの大好物な“Can’t C Me”もドッグ・パウンド用の曲をパックに回したものだったし。まあ、いまは聖人になってるからアレだけど」
ダレ「“California Love”もドレーのアルバム用だったんだよな。キューブの映画『フライデー』(95年)に提供した“Keep Their Heads Ringin’”も最高だったし、そのまま『The Chronic II』を仕上げてたら、それはそれで凄いG皿になったと思うぜ……」
DG「そんな幻のアルバムもあったな。ただ、まさに95年の映画『ザ・ショウ』でドレーは〈全部エンターテイメントだ〉って言ってるけど、それに反して周囲がシャレにならない状況になっていった」
ダレ「東西抗争とかな。ここでドレーがデス・ロウを離れて、俺らが楽しみにしてたレディ・オブ・レイジとドレーの絡みとかもなくなったんだよな」
DG「ともかくアフターマスが出来て、最初に『Dr. Dre Presents The Aftermath』(96年)が出たけど、当時はどう聴いた?
ダレ「メル・マンやRBX、ヴェテランのキングTとかが参加してたけど、無理矢理メンツを揃えた感じは否めなかった。スヌープを筆頭にデス・ロウの連中は最初から無名でもガツンときたからさ。ただ、ビートはデス・ロウ時代から変わったし、新しいドレー・ファンクのツボみたいなのが見えてくる部分もあるとは思ったぜ」
DG「後期NWAの時もキューブがいなくなったことから劇画的なサウンドが生まれたから、必要は発明の母なのさ」
ダレ「そこからキングTの『Thy Kingdom Come』を98年に出すはずだったのが、未知数の新人だったエミネムを優先したせいで出せなくなって……」
DG「残酷だけど、結果だけ見ればそれが適切な選択だったわけだ」
ダレ「というか思い出をダラダラ話しすぎだろ。早く21世紀に行こうぜ」