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WE REMEMBER POO~日本ジャズ史動かした起点の一つ、菊地雅章による70年代の8作品がリイシュー

WILL HE REMEMBER US?

 1980年に発表された名盤『菊地雅章/Susto』への起点となった故菊地雅章、70年代前半に制作したアルバムが復刻された。70年3月録音の『再確認そして発展』にはじまり、菊地の愛称であるPOO-SUNがそのままタイトルになった 『POO-SUN』、山本邦山ゲイリー・ピーコックとの共演『銀界』といった代表作や、エルヴィン・ジョーンズとのピアノトリオ『ホロー・アウト』など、73年3月に公開録音された『エンド・フォー・ザ・ビギニング』を括りとする8枚である。

菊地雅章 再確認そして発展 ユニバーサル(1970)

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 留学から帰国後制作された『再確認そして発展』のライナーには、POO-SUNが当時の思いを綴った短文が収録されている。「我々の周囲において、ほとんどのジャズは音楽の意味を失いつつある。」と始まり、音楽の起源にまで遡りジャズのルーツを考えることが「ジャズのみならず音楽全般のヒューマニズム回復への道と思われる」と締めくくられる。新しい音楽の可能性をジャズに垣間見てしまった人の創造することの怖さを綴ったかのような文章だが、彼の終生消えなかったそんな不安と期待の最初のサイクルがこの8枚から聴こえてくる。

菊地雅章 POO-SUN ユニバーサル(1970)

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 このアルバムと『POO-SUN』から始まるツイン・ドラム、ツイン・キーボード(p&el-p)を軸にした編成による試行は、80年代の三部作『ススト』『ダブル・レインボウ』『ミステリアス・トラヴェラー』に結実し、2000年代にはもうひとりの菊地(菊地成孔)のdCprGというさらなる飛躍の前衛を形成することになった。いわば日本ジャズ史を動かした起点の一つだ。エルヴィンとの『ホロー・アウト』においても、ピアノトリオながら、重厚でアーシーなリズムのレイヤーが生み出されこのときPOO-SUNが求めたグルーヴ感がなんだったのか、その答えのようなものが聴こえるようだ。ドラマーの富樫雅彦とのデュオ『ポエジー』や、邦楽ジャズの名盤と称された『銀界』は、POO-SUNの、耽美的なロマンティークの響きが現れ、消える。そう、喪失の中に希望を聞こうとした彼の始まりのいくつかがここにはある。

菊地雅章セクステットによる“DANCING MIST”のライヴ音源
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