ワンネスと多様性が入り交じる、2016年のネオ・ソウルと周辺
制作陣もややかぶる『In My Mind』と合わせて聴きたいのはもちろんこの傑作。ドクター・ドレーの抜擢によって脚光を浴び、最近アフターマス入りも発表されたアンダーソン・パックのセカンド・アルバムだ。“The Waters”にはBJをフィーチャー。薄くも濃くもない絶妙な耳触りが多くの耳を惹く理由か。
ウォーリン・キャンベル周辺と縁深いということで、BJとも繋がってくるのがこのエリック・ロバーソン。こちらの最新作にはキングを迎えた“Just Imagine”(プロデュースはパリス)を収めたほか、ジョン“ジュブ”スミスやドウェレの参加もアリ。日本ではあまり評価されてないけど、やってることはド真ん中です。
キングのメンバーも招いた前作『The Light Of The Sun』で復権したフィリーの女帝。トラディショナルな部分も強調したこの最新作ではシメの“Beautiful Love”にてBJを抜擢していた。旧知のアンドレ・ハリスを片腕に、ドンテ・ウィンスロウやテラス・マーティン、ジャイラス・モジーらの起用も光る。
独特の美意識を出し入れしつつ10年かけて我流を王道と認めさせてきた天才の、現時点での最高傑作。今作ではキングならぬ“Queen”で女性を賛美し、ソウルフルな“Baby Come Back”ではBJとジャイラス・モジーを制作に起用している。トラディショナルな本質をモダンな感覚で表現するのがネオ・ソウル。
BJの『In My Mind』で腕を揮ったギタリストのジャイラス・モジーは、こちらのBJによるネオ・スムース・ソウル作にも貢献。他にもジョン“ジュブ”スミスやロブ・ベーコン、ドウェレらが演奏し、ストークリーのヴォーカル曲も収録されているので、ソウル好きにこそ引っ掛かるジャズ盤と言えそう。
メインストリーム色の強い歌い手は意識高い系リスナーの視界に入りにくいのだろうが、本来そういう分類が謎だ。ジョン“ジュブ”スミスを参謀に据え、ジャイラス・モジーらも助力した柔らかな演奏と美麗な歌声が素晴らしい。往時のネオ・ソウル文脈を吸収したモダンな王道のR&B。
才気デリック系でいうとこのロマンティック野郎も忘れられない。本作はマシーンドラムがプロデュースにあたった濃密オルタナティヴ異能作。そういえば彼の“B4 The Night Is Thru”がジャイルズにピックされた『Brownswood Bubblers Seven』には、クリス・ターナーやキングの“Hey”も並んでいた。
THE FOREIGN EXCHANGE Tales From The Land Of Milk And Honey Foreign Exchange(2015)
元リトル・ブラザーのフォンテがニコレイと組んだ、〈東のサー・ラー〉的な折衷ソウル・ユニット。70年代的な美意識を基盤に早くから80年代サウンドを導入してきた連中だけに、ブギーもマシーン・ファンクもスムースな自然体でマイルドに聴かせてくれる。