LAの熱気に共鳴するオランダからの刺客!

 中世の面影を残すオランダ南部の城砦都市、スヘルトーヘンボスから世界へと羽ばたきつつあるひとりの若きプロデューサーがいる。彼の名はミシェル・ファン・ディンサージェイムスズーという名でキンドレッド・スピリッツなどのレーベルから3枚のEPを発表し、繊細なビートメイキングで注目を集めた彼は、今回のファースト・アルバム『Fool』からブレインフィーダーのファミリーに迎え入れられることになった。

 「プレフューズ73ハドソン・モホークビビオデイムライトなどが出てきたときは影響を受けたし、フライング・ロータスの『Cosmogramma』でエレクトロニックな音楽は一歩前進したと思う。ハービー・ハンコックが73年の『Sextant』でジャズを基盤としたエレクトロニック音楽に対する見解を提示したように、フライング・ロータスは『Cosmogramma』で同じことを成し遂げたんだ」。

JAMESZOO Fool Brainfeeder/BEAT(2016)

 ディープな電子音楽とインストR&B、フライング・ロータス以降のビート・ミュージックとジャズ、さらにはカンタベリー・ロックがひとつの調和をみせる『Fool』を作り上げるにあたって、ジェイムスズーは3枚の作品を発想の源とした。スティーヴ・キューンの71年作『Steve Kuhn』、アルトゥール・ヴェロカイの72年作『Arthur Verocai』、ロバート・ワイアットの74年作『Rock Bottom』――なかでも60年代より活動を続けるヴェテラン・ピアニストのスティーヴ・キューンと、近年はクァンティック&ヒズ・コンボ・バルバロなどのストリングス・アレンジを手掛けてきたブラジルの伝説的アレンジャー、アルトゥール・ヴェロカイは今回の『Fool』にも参加している。

 「スティーヴとアルトゥールから学んだのは、作品には即興や雰囲気だけでなく、歌や構成というものが存在しているということ。今回の作品で重要だったのは、単なる音遊びではなく、曲にしっかりとした構成を持たせることだったんだ」。

 バックにはホセ・ジェイムズのバンドで腕を振るってきた名手リチャード・スペイヴン(ドラムス)やお馴染みのサンダーキャット(ベース)ら精鋭たちがズラリ。ジェイムスズーは「ジャズ・ミュージシャンだけでなく、さまざまなミュージシャンを起用したかった。過去一緒に演奏して馴染みのあるクァルテットやクインテットはあえて選ばなかったんだ。ミスマッチな人たちを組み合わせてみたらどうなるのかやってみたかったんだよ」と話すが、既存のフォーマットを単純になぞらず、常に新しい領域を開拓していこうという彼の姿勢は、実にブレインフィーダーのニュー・ファミリーに相応しいものともいえる。

 〈ビートメイカー〉から複雑かつ独自のアレンジメントを構築する〈音楽家〉へ。成長の過程において、ジェイムスズーもまたジャズから多くのヒントを得ている。

 「ジャズはとてもオープンで、ジャズほど幅広いスタイルがあるジャンルはない。ジャズ・アーティストは他のアーティストを探し求めてさまよっているし、時にはアーティスト同士が上手く噛み合い、とてつもなく最高の演奏を聴けたりする。そういうことがジャズの重要な点だと思う」。