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Homecomings
好きなものをピュアにアウトプットできるようになってきた

 

 Homecomingsが2枚目のフル・アルバム『SALE OF BROKEN DREAMS』を完成させた。これまでの彼らはキラキラしたギター・ポップネオアコのイメージが強かったが、〈これじゃピンカートンも帰ってこられないよ〉という歌詞でウィーザーへオマージュを捧げた昨年のシングル“HURTS”以降の自由な創作モードによって、本作には多彩な楽曲が収録されている。

Homecomings SALE OF BROKEN DREAMS felicity/SECOND ROYAL(2016)

 「Homecomingsはもともと大学のときに〈ペインズ(・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート)みたいなギター・ポップをやろう〉っていうところから始まってるんで、最初はそっちにガーッて行ってたんですけど、だんだん自分が好きなものをピュアに何でもアウトプットできるようになってきたのかなって。ここ2年くらいは、ペイヴメントとかダニエル・ジョンストンのいいメロディーを抽出して、デス・キャブ(・フォー・キューティ)みたいな感じでやりたいっていうのがありました。『Plans』あたりの、もはやエモでもなく、プロダクションもちゃんとしてて、あんまりジャンルで言えないような、あの感じはひとつの目標でしたね」(福富優樹、ギター:以下同)。

 ウィーザー~デスキャブあたりのパワー・ポップ寄りの曲があれば、〈デ・ラ・ソウルの“Eye Know”をペイヴメントがコピーしたイメージ〉という“DON'T WORRY BOYS”があり、アヴァランチーズキャンディ・フリップがモチーフになったというマンチェ風味の“PERFECT SOUNDS FOREVER”のようなループ感がある曲も。その一方では、洋楽を聴きはじめた高校生の頃に聴いていたというスノウ・パトロールブロック・パーティなど、2000年代のリリース作品からの影響も自然と本作に反映されている。

 「今回は曲を作り溜めて出来たアルバムではなくて、1年くらいじっくりと考えて、1か月くらいでバーッと作った感じなので、シンプルに好きな曲とか、やりたいことがスッとできるようになった感じはします。僕と畳野(彩加、ヴォーカル/ギター)さんは高1から一緒で、今年でもう10年になるんで、お互いの好きなものとかはかなり共有できてるんですよね。なので、集大成ではないですけど、自然とジャンルとかは気にせず、いままで聴いてきたものをスルッと出せたのかなって」。

 シャムキャッツの作品も手掛けるイラストレーターのサヌキナオヤと、畳野と福富によるユニット、MURRAYが担当したアートワークにも反映されているように、アルバム全体のイメージは〈街〉を舞台とした物語のサウンドトラック。中心には大きな野球場があり、その周りで暮らす人々の心模様を13曲でじっくりと描き出していく。

 「僕、昔から映画の『メジャー・リーグ』がめっちゃ好きで、あの芝の色とかも大好きなんです。デスキャブ、ペイヴメント、アメリカ、野球みたいな、その感じをやっと出せたなって(笑)。いままでとは歌詞の書き方も変えて、前のアルバムとかは夜に散歩して〈自分が寂しい〉みたいな感じが濃く出てたけど、今回のはもっと映像的というか、ちょっと引いた視点で、フィクションかノンフィクションかわからないような、短編小説っぽいイメージで書いていったんです」。

 日曜日のデーゲームが終わって、みんなそれぞれの生活へと戻っていく様子を描いたラスト・ナンバー“BASEBALL SUNSET”が象徴しているように、アルバムにはどこかメランコリックなムードが通底している。それはかつての彼らのキラキラとした青春感と隣り合わせのメランコリーというよりは、少しだけ大人になった現在の彼らだからこそ描くことのできる、より人生と寄り添った、深みを増したメランコリーだと言えよう。

 「僕も今年25歳で、そういうのが自然と滲み出てくるようになったというか、そういうお年頃なのかなって(笑)。このアルバムを作るちょっと前くらいって、これからどうするかをいろいろ考えすぎちゃって、(地元の京都を離れて)〈東京に行っちゃおうか〉とか、変に気合いが入ってたんです。でも、それが結果的にはプラスになって、すごくいいアルバムが出来たと思うし、いまはあまり考えすぎず、やっぱりいい曲を作って、いいライヴをするのが一番楽しいから、そこに重きを置けたらなって。そう改めて思えるようになりましたね」。 *金子厚武