今年初春に日本でのソナタ全曲演奏会を完結させたイブラギモヴァとティベルギアンによるモーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ全集。文句なしに素晴らしかった第1集に続いて今回の第2集に聴く自在で伸びやかな筆致も、実に墨痕鮮やか。一方で切所での緊迫や閃きを残像のように聴き手に刻み付ける。彼女たちの演奏を聴く楽しみは、音楽それ自体の全景を風通しよく俯瞰できるのと同時に、細部に生きる一瞬の美のいつ尽きるとも知れぬ交替が味わえることにあると勝手に思ってしまう。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタでそれが愉しめるとは! 利発さ全開の初期作を織り交ぜるコンセプトも実に有効だ。