COLUMN

モーツァルトに宿る〈もののあはれ〉――「徒然草」に影響受けたピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフによる色褪せない名演

モーツァルト×徒然草=アファナシエフ

 アファナシエフの新しいモーツァルト・アルバムと、書籍が発売された。「ピアニストは語る」と題された書籍は「人生」と「音楽」の2部構成で、CDのブックレットの執筆もされている青澤隆明氏が聞き手となっている。

VALERY AFANASSIEV トルコ行進曲~アファナシエフ・プレイズ・モーツァルト Sony Classical(2016)

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 今年生誕100年の恩師ギレリスに捧げられ、誕生日の10月19日にリリースされるモーツァルト・アルバムは、K310,330,そしてトルコ行進曲つきの331とベートーヴェン同様、有名曲が選ばれていて、アファナシエフ自身のセッション録音に対する意気込みと録音クルーとの厚い信頼関係が垣間見える。

 「作品についての人々の知見を刷新しなくてはならない」と語るアファナシエフが、それこそ数多の競合盤に直球勝負を挑んできているのである。アファナシエフは楽譜に記されたテンポには極めて忠実な姿勢を貫いた上に創造的な自由を加えている。それは1993年録音のモーツァルト・アルバムにおいても同じことを言うことができる。確かに他の演奏家より速度は遅いものの正確なテンポの裏打ちがあるので決して鈍重ではなく、今なお色褪せることのない名演である。

 学生時代「徒然草」を夢中になって読んで、人生の道しるべにしていたことはNHKのドキュメンタリー番組で紹介されていた。その中で「もののあはれ」は既に自分の持っている感覚であり、日本と自分の心に共通するものであることを告白している。果たして、このモーツァルト・アルバムにそういう感覚を感じることができるのか? 「もののあはれ」の感覚を持ち合わせた演奏家が生み出す音楽は、どんな作曲家の作品であれ少なからず滲み出るに違いないと個人的には思う。このアルバムは聴く者を広大なイマジネーションの原野に解き放っているといっても過言ではないだろう。

 2015年作〈アファナシエフのベートーヴェン悲愴・月光・熱情〉のトレイラー映像
 

INFORMATION

ヴァレリー・アファナシエフ 2016年10月日本公演日程
○10/29(土)浜離宮朝日ホール
○10/30(日)加美町中新田バッハホール
○11/3(木・祝)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館コンサートホール
www.imc-music.net/

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