インタビュー

エド・シーランが旅に出た理由―エヴァーグリーンな歌と新鮮な音作りを融合させた国際色豊かな新作『÷』の背景を語る

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各地で躍動する〈ポスト・エド〉な男たち

 レッチ32ワイリーほか、MCとのコラボで名を売ったデビュー直前のエド。ちょうどグライム系のアクトが続々と地上でブレイクしていく頃の話です。そのレッチやチップマンクラブリンスらのアルバムにエドとニアミスで客演しているエミリー・サンデーも、『+』が出た翌2012年のブリット・アワードで批評家賞を獲得。一歩早くUS進出を大成功させていたアデルに続けと、90年代後半~2000年前半のヒップホップ/ネオ・ソウルを聴いて育った世代のシンガー・ソングライターが、瞬く間にUKから世界へ羽ばたいていくのでした。

エミリー・サンデーの2012年作『Our Version Of Events』のダイジェスト映像
 

 なかでも男性に限って言えば、これまたレッチにフックアップされてメジャー行きの切符を手にしたジョシュ・クムラや、ドレイク的なアンビエント・ムードがウリのベン・ハワードをはじめ、〈ネクスト・エド・シーラン〉なるキャッチで紹介されるアーティストが雨後の筍さながらに登場。『+』で展開したフォーキーなサウンドにシンギング・ラップ風の歌声を乗せる手法は、やがてテン年代のスタイルとしてシーンに定着することとなります。そんなわけで、ここでは2016年以降に登場した〈ポスト・エド〉な最新盤を紹介していきましょう。 

 

RAG'N'BONE MAN Human Columbia(2017)

2013年のトム・オデール以来、ブリット・アワードの批評家賞は〈ポスト・エド〉な男性歌手が続くなか、今年の栄冠は彼の手に。譜割りや耳通りの良さなんて無視した、ジョー・コッカー似の太い声が素晴らしいです。クラシカルな楽器で荘厳な雰囲気を演出するオケも含め、テン年代の英国ポップのド真ん中といった感じ。

 

JACK GARRATT Phase Island UK(2016)

そして昨年の批評家賞を獲ったこの男は、ループ・ペダルなどを駆使するライヴ・スタイルでもエドと比べられてきた人物。ファルセット全開の浮遊フォークにサブベースをブンブン効かせ、2ステップやUKファンキー要素を足しちゃう変わり種で、エドの曲でもファレルと組んだ“Sing”が好き!って人にオススメ。

 

ReN Lights booost music(2016)

UKで暮らしていた時にエドを観て衝撃を受けたというこちらの日本男児も、ループ・ペダルを使った〈アコギ+α〉なソロ演奏でライヴを展開。星空に向かってス~ッと伸びていくようなソフト・ヴォイスも、ドリーム・ポップなど流行を採り入れつつ根底にしっかりフォークがある点も、エド好きなら放っておけないでしょう。

 

SHAWN MENDES Illuminate Island/ユニバーサル(2016)

動画サイトやライヴでたびたびエド曲を披露してきた彼は、この2作目でジェイク・ゴスリングと合体。ゆったりした裏打ちのリズムにギターの爪弾きが絡む“Honest”ほか、『+』期のエドを模倣したかと思えば、南国ポップやオールディーズ調の曲を通じて『÷』まで先取りしてしまった恐るべきフォロワーです。

 

L.A. SALAMI Dancing With Bad Grammar: The Director's Cut Sunday Best(2016)

ポエトリー・リーディングを交えた歌唱が格好良い、〈ポスト・モダン・ブルース〉を標榜するロンドン在住の吟遊詩人。ナイジェリアをルーツに持つだけあって、アフリカ的とも言える大らかなビートもスムースに乗りこなしていて、その自然な振る舞いにエドも嫉妬しているはず!?

 

JAMES ARTHUR Back From The Edge Columbia(Columbia)

数々の暴言でしばらく業界から追放されていた悪童の復活盤。暑苦しいくらい情感たっぷりな歌声こそ雰囲気は異なるものの、ロマンティックなストリングスなどエド好みの音飾がそこここに。〈白髪になっても君を愛すよ〉と告白した“Say You Won't Let Go”は、“Thinking Out Loud”と並ぶ名ラヴソング!

 

Capeson HIRAETH Tokyo Recordings(2016)

インディーR&Bとの親和性の高さをよく指摘されている和製シンガーですが、ドンピシャで近いのはエド! 消え入ってしまいそうなほど繊細な高音声で聴かせる冒頭の王道フォークから、2~3曲目にファンクのテイストを持ってくる流れとか、電子音と生楽器の配分とか、本作と『×』に共通項は多いと思います。

 

FOY VANCE The Wild Swan Gingerbread Man(2016)

ジェイミー・ローソンに続き、エドの主宰レーベルが契約した中年歌手。〈以降〉というよりエドがファンだったらしく、本作に漂う伝統的なアイリッシュ・フォーク感覚も『÷』収録曲“Galway Girl”のヒントになった模様。プロデュースは、ジェイムズ・ベイら多くの〈ポスト・エド〉を育てたジャクワイア・キング!

 

LEWIS WATSON Midnight Cooking Vinyl/BIG NOTHING(2017)

わかりやすい言葉選びで剥き出しの感情を表現する姿が特にエド的なオックスフォードの24歳。オー・ワンダーの片割れを指揮官に迎えたこの2作目は、半数の曲で脱・生音化。ソンあたりを意識したようなアンビエント・ポップなど引き出しがグンと増え、『×』でカラフルに化けた時のエドが重なります。

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