COLUMN

マックス・リヒターやルドヴィコ・エイナウディら、ポスト・クラシカルの静かな潮流〈NaturaRhythm〉を代表する音楽家ガイド

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LUDOVICO EINAUDI
9月公開の福山雅治主演・是枝裕和監督作「三度目の殺人」の音楽を担当!

(C)Decca/ Ray Tarantino

 ヨーロッパでは既に絶大な人気を誇る作曲家/ピアニスト、ルドヴィコ・エイナウディの音楽性と特異なポジションについてまずは少し触れておきたい。ルチアーノ・ベリオに師事し、現代音楽作曲家としてキャリアを始めたエイナウディだが、クラシックの作曲の範疇に留まる事は彼の理想とする音楽像からはかけ離れていた。特に少年時代に触れたビートルズには非常に感銘を受け、忘れられない記憶として刻み込まれていた様だ。クラシックの正統な教育を受けながら、自らの興味の対象を自在に取り入れて行き(ライヒらのミニマルや民族音楽といった要素にも及ぶ)現在の独自のスタイルに辿り着いた。コンポーザーピアニストであり、様々な音楽要素を独自にブレンドしていった点、また映画の世界でもひっぱりだこという点でもマイケル・ナイマンとある種近い存在と言えるかもしれない。

 様々なリスナーから愛されるエイナウディの音楽は、配信売上がCD売上をはじめて上回った作曲家として、さらに世界で最もストリーミングされたクラシック作曲家として知られている。また特筆すべき事として、エイナウディの音楽はダニエル・ホープを始め、オランダの注目すべきハーピスト、ラヴィニア・マイヤーや指揮者シャイーの妹、チェチーリア・シャイーといったクラシックの演奏家にも度々取り上げられており、その音楽は正に垣根を超えた広がりを見せている。映画の仕事として特に有名なのは、フランス映画『最強のふたり』だろう。日本でも非常に大きな話題となったが、この映画はエイナウディの音楽無くして語る事はできない。

 そんなエイナウディの音楽に初めて触れる方はぜひ『エッセンシャル・エイナウディ』をお手に取ってみて欲しい。HQCDの高音質で2枚組に渡って多くの代表作品を愉しむ事が出来る。そして『時の移ろいの中で』は日本に於いてもポスト・クラシカルシーンや、耳効きの間で非常に注目された1枚だ。精緻な楽曲構成と、抑制された美しい旋律、様々な民族音楽のエッセンスが融合したエイナウディの面目躍如たる存在感を示している。

 最新アルバム『エレメンツ』はエイナウディの自宅スタジオで制作された。エイナウディ・バンドのメンバーやダニエル・ホープといった奏者達と共に、ロバート・リポックがエレクトロニクスでクレジットされているのも注目したい。リポックはエレクトロニカ~ポスト・ロックのトゥ・ロココ・ロットのメンバーとしても知られており、エイナウディの音楽性の幅広さを伺い知る事ができる人選と言えるだろう。土、水、空気、火という自然の四大元素をテーマとし、カンディンスキー、クレー、クリムトらの作品からもインスパイアを得た本作はプライヴェートな空間で制作された事もあってか、これまでの作品と異なるアンビエンスや音響構成を聴く事が出来、またも新境地を見せてくれている。

最新アルバム『エレメンツ』収録曲“Night”

 この4月に来日公演も終え、ここ日本でもいよいよエイナウディの音楽が大きな話題となることだろう。  (タワーレコード新宿店 池田敏弘)

 

ルドヴィコ・エイナウディ LUDOVICO EINAUDI
1955年イタリア生まれ。映画、CMなどでエイナウディの名前を聞かない日はないと言えるほどヨーロッパでは絶大な人気を誇る知的コンポーザー。日本で は、エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督作映画『最強のふたり』(2011)のスコアを担当したことで有名。

 

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