AEGトーンシュライバー/ビング・クロスビー

蓄音機以前から現代の音楽配信やサブスクリプション型サービスまで!

 すごい本が出た。タテ25cm、ヨコ22cm、厚さ3.5cmという百科事典なみの大きさで計351ページ。持ち運びには不向きだが、リヴィングで好きな音楽を聴きながらじっくりと眺めるのには最適の1冊だろう。そう、読むというよりは眺めて楽しむ。とにかく、見たこともないような珍しい写真や図版がページを繰るたびに次から次へと登場する、録音/音響にまつわる豪華ヴィジュアル・ブックなのだ。音楽技術関係の資料収蔵数としては世界一と言われる英EMIアーカイヴ・トラストの全面協力の下で、掲載された写真/図版は850点以上。もちろんオール・カラーだ。

テリー・バロウズ, 坂本信 『アート・オブ・サウンド 図鑑 音響技術の歴史』 DU BOOKS(2017)

 19世紀半ば、フランスのエドゥアール=レオン・スコット・ド・マルタンヴィルが人間の声を初めて録音した〈フォノートグラフ〉から、現在のMP3を中心とする音声ファイルまで、録音や音響の技術進化の歴史を、〈機械〉〈電気〉〈磁気〉〈デジタル〉という四つの章で区分して概説し、重要なイノヴェイターたちに関してはその業績をバイオグラフィ的に紹介するというのが大まかな構成。登場するのは、トーマス・エジソン(フォノグラフ)を筆頭に、エミール・ベルリナー(グラモフォン)、リー・ド・フォレスト(ラジオ/テレビ)、アラン・ブラムレイン(ステレオ音響)、トーマス・ストッカム(デジタル・サウンド)、カールハインツ・ブランデンブルク(MP3)、ショーン・ファニング(ナップスター)など。各章の頭には、簡潔な説明と写真による年表もあるので、さっと流れを把握できる。

 だが、改めて言うが、もちろん主役は、大半を占める美しい写真や図版(機器だけでなく、その研究開発や生産工場の現場写真、ポスターやレコ・ジャケ等々)であり、そのひとつひとつに付けられた詳細なキャプションだ。ちょっと高価ではあるけど、限定1000部なので、売り切れる前に入手しておきたい。