アルバムという作品を作ることが生業
――ところで、中村さんは〈曲を常に書き溜めたり、ストックしたりしない〉ことをポリシーに掲げているそうですが、今回の最新アルバムでもそうでしたか?
「デビュー20年で10枚ということは、合計すると100曲くらいすでに書いてきたわけですよね。さすがに急に新しいアイデアが浮かぶようなことは起こりません(笑)。
確かに常日頃から曲作りをしていれば自然とストックが溜まりますが、いささか苦痛を伴う作業なので、僕はギリギリになるまで曲を書きません。なぜなら曲作りとは、単にメロディーやギター・パートだけを構築することじゃないからです。バンド全体でプレイした状態を考えながら、最低限まとまるラインを大まかにイメージした上で完成させることが作曲だと思っているので、そのためには相当の覚悟が必要なんです。
僕の場合、完全防音のDAWスタジオを自前で持っているので、曲作りモードに入る時は部屋もそれ仕様に模様替えします。椅子から手の届く範囲内に楽器類を配置するという具合に。逆にそうやって自分を追い込まないとアルバム制作はできません」
――中村さんはアルバム制作に先立ち、デモ音源をかなり具体的に作り込むタイプだと伺いましたが、今回も同じような手順を踏んだのですか? それはバンド・リーダーであり、メイン・コンポーザーであり、プロデューサーでもあるという責任感ゆえでしょうか?
「そうですね。アルバム制作中はプロデューサー視点に徹しているので、自分がギタリストであるという認識はないですね。もちろん、ライヴ中はギタリストとしてステージで動き回っています。
でも、僕の場合、ライヴ活動するために曲を書いているのではなく、曲作りありきなんです。優れた曲をたくさん書いて、それらを収めたアルバムという作品を作ることが生業だと思っているので。
たとえば、レッド・ツェッぺリンの代表曲である“Stairway To Heaven”は『Led Zeppelin IV』(71年)の収録曲であり、“Highway Star”はディープ・パープルの『Machine Head』(72年)の収録曲であることが絶対条件なので。無謀かもしれませんが、僕が未だに挑んでいるのはその境地なんです」
HR/HMは名盤ありき
――最近はストリーミング配信の普及に伴い、音楽のリリース形態も多様化していますが、中村さんはアルバムありきの考え方なんですね。
「もしかすると古い考え方かも知れませんが、本来アーティストはかくあるべきだと思うんです。元々HR/HMは、シングル・カットされることが少ない音楽ジャンルですから。
だから僕の認識では、あくまでHR/HMは名盤ありき。名曲ありきじゃなく、名盤の中に名曲が収められているというイメージが強いですね。
僕達が学生だった頃は、なけなしの小遣いをはたいて欲しいレコードを買って、隅々まで覚えてしまうほど聴き込んだものです。なぜなら学生時代は〈大人買い〉ができなくて、大切なレコードを何度も繰り返しプレイヤーに載せるからですが、そうしたレコードが各自の心の中で名盤として残るんです。おそらく自分達がもっとも多感だったり、しんどかったり、あまりお金がなかった時期に手に入れたレコードほど、名盤として心に刻まれている確率が高いと思うんですよ」
――では、中村さんのオールタイム・ベストの名盤を3枚挙げるならば、何でしょうか?
「僕の好みでよければ、ブルー・マーダーの『Nothin’ But Trouble』(93年)、ジャーニーの『Frontiers』(1983年)、そしてレインボーの『Long Live Rock ‘N’ Roll』(79年)ですかね」
――英国産ハードロックの影響が色濃いBLINDMANの音楽性と中村さんのイメージからしてブルー・マーダーとレインボーは順当なセレクトですが、アメリカのジャーニーが入るのは意外でした。それぞれ選んだ理由を簡単にお伺いできますか?
「実のところ、ブリティッシュ・ハードロックの要素はことさら意識していないんです。言い換えると、熱心に聴いたアメリカン・バンドがジャーニーくらいだったのかも知れませんが。ただ、元々ビートルズを取っかかりにギターを始めた僕にとって、80年代当時の最先端のロックを初めて知った作品がジャーニーの『Frontiers』だったので。
それから、高校時代に地元の書店で『YOUNG GUITAR』誌の臨時増刊『ロック・ギター教室83年』を買ったところ、最初に譜面が載っていた曲がレインボーのこのアルバムのタイトル・チューンだったんです。
ブルー・マーダーのこのアルバムは90年代の作品ですが、ずっと自分にとって理想像のアルバムですね」
――最後に今後の活動プランと抱負を教えてもらえますか?
「HR/HMは、演奏テクニックや難易度を競い合う傾向に陥りがちなジャンルです。確かに僕自身も84年のアルカトラス初来日公演でイングヴェイ・マルムスティーンのプレイに衝撃を受け、当時はあんなふうになりたいと憧れたものです。
でも、BLINDMANは演奏テクニックを前面に押し出すバンドではないし、僕にとって一番大事な仕事は優れた曲を書き、優れたアルバムを送り届けること。それらをコツコツ続ければ、絶対に応援してくれるファンがついてくるんだから、とアルバム・デビュー当時から変わらず思い続けています。
広義のポピュラー音楽とHR/HMがもう少し接近して、リスナー層の裾野がもっと広がればよいですね。BLINDMANの音楽は、そのための架け橋になりえるはずなので。現在のバンドは非常に良好な状態なので、今回の最新作をすでにお持ちの方もそうでない方も、生のライヴにも足を運んでくれれば、満足していただける自信があります」
LIVE INFORMATION
BLINDMAN LIVE TOUR 2018-2019 “SURVIVE TO REACH FOR THE SKY”
2018年11月24日 (土)愛知・名古屋 HeartLand
2018年11月25日 (日)大阪・心斎橋 Bigtwin Diner SHOVEL
2018年12月23日(日)東京・目黒 鹿鳴館
http://www.blindman-official.com/schedule