天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野による〈Pop Style Now〉。月曜日に更新日を変更しての2週目になります」
田中亮太「前回、〈前の週末にリリースされたアルバムの話もできるね〉なんて言っておきながら、海外はもうホリデー・シーズンに入ったこともあって、アルバムのリリースが急に減っちゃいました……。土日の話題は、もっぱらグラミー賞のノミネート発表だったんじゃないっすかー」
天野「って、全然興味なさそうじゃないですか! 〈Pop〉を標榜した連載をやっておきながら、その態度はいかがなものかと(怒)。チャイルディッシュ・ガンビーノやカーディ・B、ドレイク、レディー・ガガあたりは予想の範囲内で、アリアナ・グランデとテイラー・スウィフトが主要部門を逃したのが意外です。日本のリスナー的にノーマークだったのがカントリー歌手のブランディ・カーライルでは? 僕も慌てて聴きました」
田中「へー。ズバリ天野くん的に最優秀レコード賞の予想は?」
天野「やっぱりチャイルディッシュ・ガンビーノの“This Is America”かな。2018年の象徴のような曲ですし。それでは今週もスタートしましょう。まずは〈Song Of The Week〉から!」
Red Velvet “RBB (Really Bad Boy)”
Song Of The Week
天野「というわけで、今週の〈SOTW〉は韓国の5人組、Red Velvetの“RBB (Really Bad Boy)”です!」
田中「この連載、K-Popは初登場ですよね?」
天野「ですね。K-Popについてはずっと取り上げたかったのですが、今回が初。で、彼女たちは2014年デビューなのですが、TWICEなんかよりもちょっと個性派揃いというか、みんなバラバラなのが魅力的なグループです。僕が知ったのは今年1月リリースのアルバム『The Perfect Red Velvet』に収録されてるシングル“Bad Boy”でした」
田中「天野くんは“Bad Boy”をずいぶんと気に入ってるみたいでしたね。職場でこっそりMVを観てたり……」
天野「2018年ベスト・ソングの一曲だと思います! ビデオは何度観たかわかりません。そんなRed Velvetが5枚目のミニ・アルバム『RBB』を先月末にリリース。そのタイトル・ソングがこの曲です」
田中「ホーンがファンキーで、リズムはバウンシー。サウンドもアレンジも練り込まれてて、かなりいい曲ですよね」
天野「弾むようなビート、リズムがカッコイイ! 前のめり感が、ちょっとアウトキャストの“B.O.B”みたいですよね。K-Popについてはまだまだ全然詳しくないので、編集部の高見さんに訊いたりしながら追っかけていきたいところです」
benny blanco & Juice WRLD feat. Brendon Urie “Roses”
天野「2曲目は、ベニー・ブランコの新曲“Roses”です」
田中「ベニー・ブランコといったら当代屈指の売れっ子プロデューサーですよね。エド・シーラン、ジャスティン・ビーバー、マルーン5、ウィークエンド……。なんでも、彼が関わったアルバムの累計セールスは1億枚以上だとか」
天野「すごいですねー。どんだけ儲けてるんだろう……? で、この“Roses”は彼のソロ・デビュー・アルバム『Friends Keep Secrets』からのリード・シングルです。客演はジュース・ワールドと、なんとパニック・アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリー。異色な組み合わせです」
田中「“Lucid Dreams”で大ブレイクしたジュース・ワールドは、〈2018年の顔〉とも言える活躍を見せた新人ですよね」
天野「ええ。10月には来日もしてました。そんなジュース・ワールドのラップとブレンドンの歌が見事なマリアージュを聴かせる“Roses”、カッコイイです。ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンからカルヴィン・ハリスまでが参加したゴージャスなアルバム『Friends Keep Secrets』は聴きどころ満載。ぜひチェックを!」
Charlotte Gainsbourg “Such A Remarkable Day”
田中「続いて、シャルロット・ゲンスブールの“Such A Remarkable Day”です。昨年のアルバム『Rest』以来となる、12月14日(金)リリースのEP『Take 2』からの新曲」
天野「『Rest』でも多くの楽曲を手掛けていたセバスチャンが、この曲もプロデュースしてるんですね。彼は2000年代中盤にフレンチ・エレクトロのプロデューサーとして、ジャスティスなんかと同時期にシーンを席巻した鋭才で、現在もプロデュースやリミックスで大活躍しています。フランク・オーシャンの『Blonde』(2016年)にも参加していたり」
田中「“Facebook Story”で恋人との別れについて、実にイマっぽいエピソードを語ってましたね。この“Such A Remarkable Day”はアタック感の強い、暴力的なキック・ドラムがまさにセバスチャン印だなと」
天野「ハープシコードっぽいシンセの音色が醸す、欧州的な耽美さもたまりません。EPには『Rest』収録曲の“Deadly Valentine”のリメイクも収録されるそうなので、やっぱり続編的な位置付けなのでしょうか」
田中「さらに、カニエ・ウェスト“Runaway”のカヴァーも含まれている模様。この一年〈カニエ通信〉をお送りしてきた〈PSN〉にとっては、必聴盤ですね!」
Men I Trust “Say, Can You Hear”
天野「4曲目は、モントリオールを拠点に活動している、メン・アイ・トラストの新曲“Say, Can You Hear”です」
田中「フロントウーマン、エマのレティシア・サディエール(ステレオラブ)を彷彿とさせるウィスパー・ヴォイスと、ラウンジーなサウンドが人気を博しているトリオですね。2017年に発表した楽曲“Tailwhip”は、インディー・クラブでもアンセム化しました。日本編集盤EP『Tailwhip』も4月に出ていますが、それ以降もコンスタントに楽曲を発表しています」
天野「へ~。亮太さん、詳しいんですね。この“Say, Can You Hear”は“Tailwhip”なんかに比べると、もっとロック感のある楽曲ですね。ピーター・フック風のベースラインがニューウェイヴっぽいんですけど、デッドなドラムやギターの音色がチルウェイヴ以降な感じで、すっごく陶酔的」
田中「もともとエマを除く2人ユニットとしてスタートした彼らの作風は、かなり幅広くて、いうなればポップ・マエストロって感じなんですよ。ただ、エマの歌が乗ることで、どんなサウンドもメン・アイ・トラスト色のポップになる。そこが凄いなと。ちなみに、上記の日本編集盤EPは田中がライナーを担当していて、バイオグラフィーについても詳しく書いていますよ!」
天野「って、宣伝ですか……」
HEALTH “SLAVES OF FEAR”
天野「最後はヘルスの“SLAVES OF FEAR”。ヘルスっていえば、LAのノイズ・ロック・バンドですよね」
田中「シャーリーズ・セロンの主演映画『アトミック・ブロンド』(2017年)で使われていた“Blue Monday”のダウナーなカヴァーを歌っていた人たち、といえばピンとくる人が多いかも」
天野「あのインダストリアルなやつですよね。彼らは今年、〈PSN〉でも取り上げたデフヘヴンとツアーをしたり、モダンEBMの雄、ユース・コードとコラボした楽曲“Innocence”をリリースしたりしてます。で、この曲は来年2月にリリースするアルバム『VOL. 4 :: SLAVES OF FEAR』からのリード・シングル」
田中「不穏さを煽るエレクトロニック・ビートとメタリックな暗黒ギター、そして火柱のごとく突如噴き上がるノイズ……聴き手を殺しにかかっているナンバーや。〈PSN〉で紹介したポピーやグライムスの新曲とも空気をシェアしている気がしましたよ」
天野「〈ヘヴィネス〉っていうのは、ここ数年重要な要素ですよね。なんでも、新作のテーマは〈死、孤独、そして絶望〉だとか。暗っ……。まあ、地獄のようなストーリーでないと救えない魂ってありますからね」
田中「それ、この間、映画『ヘレディタリー/継承』を観たときに同じことを思いましたよ。凄い作品なので、天野くんも観てください。コリン・ステットソンの劇伴もとてつもないです。では、今週はこんなところで。みなさま、良きポップ・ウィークを!」
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