「全部やったら大きな財産になりますよ」。山田和樹〈アンセム・プロジェクト〉を語る

 「2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、世界の国歌や〈第2の国歌〉のように親しまれている愛唱歌(アンセム)を可能な限り数多く演奏会、録音で網羅し発信していく」。山田和樹が提唱した〈アンセム・プロジェクト〉は2017年11月のCD第1作(キング)発売に続き第2作の録音が進行中。2019年3月17には正指揮者のタイトルを持つ日本フィルハーモニー交響楽団、音楽監督兼理事長を務める東京混声合唱団、テノールの西村悟とともに東京・渋谷のオーチャードホールへ登場、〈Bunkamura30周年記念 山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020〉に臨む。

 「最初は東混を盛り上げるための企画として発案しましたが、どんどん話が大きくなってしまいました」と、山田は笑う。98年の長野冬季五輪に先立っては小澤征爾が新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮、オープンから間もなかったすみだトリフォニーホールで〈世界の国歌〉をセッション録音(旧フィリップス・現デッカ)したが、オーケストラのみの演奏で歌は入っていなかった。山田版にはすべて、歌が入る。「発音をできるだけネイティブ(母国語の話者)に近づけようと、言語指導の講師を招き、念には念を入れています」という。山田の本拠地、ベルリンに住むポーランド人の友人にポーランド国歌の録音を聴かせたところ、「訛りがないと、驚いてくれました」。

 「全部の国歌を収録するということは、多様な原語、発声、発音に触れるということ。これをやり遂げたらものすごい財産になりますよ」。山田の情熱に周囲が巻き込まれる図式で、約200か国の国歌を収録するという壮大なプロジェクトは進行。未知のことも多く関係者は常にてんてこまいだが、山田の音楽と人に魅せられた〈チーム山田〉の結束が機能している。

 アンセムの録音と連動した演奏会の開催。デジタルストリーミングや高級オーディオ装置で聴く方が「いい音だ」とも言われる時代だからこそ、「ライヴの演奏会の良さが問われる時代」と山田は考える。「生には生にしかない魅力があります。ハプニングがあるから面白い。これもまた人間らしさの本懐です。それをどう指揮者、同僚がフォローするかとか、現場の空気に触れながら、感動が醸成されていきます。最近は付加価値の時代と言われ、プレトークや終演後のサイン会、握手会まで、お楽しみの要素も増えました。オーケストラが華やかなエンターテインメント性を究め、ディズニーランドのような夢と魔法の世界を提供することができたら、クラシックファンは確実に増えるはずです」。

 


LIVE INFORMATION

Bunkamura30周年記念 山田和樹アンセム・プロジェクト Road to 2020 オーチャードホール公演
○3/17(日)15:00開演
会場:Bunkamuraオーチャードホール
【出演】山田和樹(指揮)西村悟(T)日本フィルハーモニー交響楽団 東京混声合唱団
【曲目】ワーグナー:「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲/国歌集(君が代、J・ウィリアムズ編曲アメリカ合衆国国歌、コモロ連合)/グラズノフ:第一次世界大戦の連合国の国歌によるパラフレーズ/武満徹:さくら/信長貴富:アンセム・メドレー/シベリウス:交響詩「フィンランディア」/プッチーニ:「トゥーランドット」より《誰も寝てはならぬ》/ホルスト:組曲「惑星」より《木星》
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