世界各地の〈アンセム〉を、現地の言葉で収録。新プロジェクトがスタート!
〈アンセム〉と言うと、〈ああ、サッカーの試合なんかの時にみんなで歌ったりするやつか〉と思われる方も多いだろうが、本来の意味は〈愛唱歌〉、特にその国や地域の人々にとって愛されている歌という意味では、国歌なども含まれる。その新たな録音に挑戦したのが、気鋭の指揮者・山田和樹である。
「事前調査として、まず世界の198の国と地域の国歌をすべて聴いてみました。その中では〈コモロ連合〉の国歌がいちばん音楽的に充実したものでした。Twitterでそれを呟いてみたのですが、あんまり反応がなかったのですが(笑)。でも、良い曲だと思うので、気になる方は探してみて下さい」
第一弾としての今回のアルバムの特徴は、いわゆる器楽だけの演奏ではなく、合唱が入っていること。
「国歌というのはソウル・ミュージックという面もありますので、とても責任を感じます。その背後に様々に背負っているものがある。歌も、すべて現地の言葉で歌うということを考えています。そうすると、なかなか言葉の面での困難が多くなる。歌っている東京混声合唱団は、このプロジェクトが終わったら、世界で最も多言語で歌える合唱団になるかもしれません」
今回のアルバムには近衛秀麿編曲の我が国の国歌《君が代》がオーケストラ版と合唱とオーケストラによる版が収録されているほか、エルガー《威風堂々 第1番》、ヴェルディの歌劇『アイーダ』より《凱旋行進曲》など有名曲も収録されているが、ストラヴィンスキー編曲によるアメリカ国歌《星条旗》、モーツァルト作曲のオーストリア国歌《山河の国、大河の国》など、非常に多彩な作品が収録されている。またロシアの作曲家グラズノフによる《第一次大戦の連合国の国歌によるパラフレーズ》の中にもロシア、フランスなどと並び日本国歌も入っているのに驚く。
「ストラヴィンスキーの編曲は、自分の作品の演奏会の前に国歌を演奏しなければならず、それなら自分で編曲してしまおうと考えたもののようです。他の良く知られた作品、例えばシベリウスの《フィンランディア》は合唱付きの版で、またヨハン・シュトラウス2世の《美しき青きドナウ》も合唱付き。あまり演奏されない形での録音と言えるかもしれません」
今後の展開だが。
「アルバムとしては第6弾ぐらいまでを考えていて、それを全国に広げたいと思っています。演奏会も行って行きたい。それに、オリンピックに向けて、様々な自治体が各国の練習の受け入れなどを行うと思うのですが、そういう時にも役立てて頂ければ嬉しいです」
と山田。興味深いプロジェクトがスタートした。
LIVE INFORMATION
山田和樹 指揮 東京混声合唱団
音楽で描く世界地図~アンセムプロジェクトRoad to 2020~
○2018年2/18(日)15:00開演 東北大学百周年記念館川内萩ホール
○2018年2/20(火)13:30開演 東京オペラシティ コンサートホール
出演:山田和樹(指揮) 萩原麻未(p) 東京混声合唱団
【曲目】世界の国歌集/ゆけ、わが思いよ、黄金の翼に乗って/気球に乗ってどこまでも/他
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