『THE ANYMAL』と併せて聴きたいクラシック・ロックの名作群とその後の潮流

とりわけビートルズを彷彿とさせる“In The Zoo”を聴いて、これほど歪で美しいブルース・ロックと出会えるなんて、と吃驚。幻惑的なギターのリフレインや、次第に混沌を極めていく曲構成など、共振するポイントがところどころに見受けられる。 *桑原

THE JIMI HENDRIX EXPERIENCE Are You Experienced? MCA(1967)
ブルース感覚に多彩なエフェクトをまぶしてコズミックに仕立てる手法や、独特なメロウネスの発露。新作でのSuchmosは、実験的なプロダクションを駆使してトリッピンな音像を生み出すあたりにジミヘンの面影が重なる。 *桑原

モータウン内に設立された同名レーベルの第1弾となったロック・バンド。とりわけ本作は17分を超える冒頭のサイケデリック・ジャムから最高なので、『THE ANYMAL』好きは必聴と言いたい。黒さと洗練のバランス感覚もSuchmosと近いかと。 *土田

例えば“Indigo Blues”あたりに見て取れる浮遊感溢れるダークな色調、あるいはギターのどこか幻想的なトーンなどは初期ピンク・フロイドの特徴と言えるもの。またSEの効果的な使用方法などにも彼らからの影響が窺えたり。 *桑原
海外勢のみならず、ジャパニーズ・ロック黎明期の伝説的なバンドとSuchmosを並べて語ることに感慨を覚えずにはいられない。彼らの長尺のジャム・ナンバーはヘヴィーなサイケ&プログレを得意としたFTBと間違いなく地続き。 *桑原

ベースとドラムスのポリリズミックなアンサンブルをはじめ、ニューウェイヴ色の濃い“ROMA”から感じられるのはブライアン・イーノ期のヘッズの匂い。思えばそこでのYONCEのヴォーカルも、どことなくデヴィッド・バーンっぽい。 *桑原

JACK WHITE Boarding House Reach Third Man/Columbia/ソニー(2018)
音楽とのオルタナティヴな向き合い方がSuchmosと通じる希代のブルースマンが、R&B/ヒップホップ経由で自身のルーツを示した最新作。彼が主宰するサード・マンにも新鮮なブルース解釈盤が多いので、ディグも一興かと。 *土田

THE FLAMING LIPS Oczy Mlody Warner Bros./ワーナー(2017)
“ROLL CALL”でのサイケ色豊かなサウンドメイクやノイジーなギター、そしてメロトロンっぽい響き。それらはビートルズとフロイドのカヴァー集も送り出した本バンドや、そのプロデューサーのデイヴ・フリッドマン関連の諸作でも出会えるものだ。 *桑原

TAME IMPALA Innerspeaker Modular/Fiction/HOSTESS(2010)
我流のブルース/サイケを鳴らすことで、自身の内にあるビートルズの遺伝子がよりくっきりと露になった印象の『THE ANYMAL』。ビートルズ × サイケと言えば……アリエル・ピンクと並んで近年のインディー・サイケ界隈を牽引するこのバンドも。 *土田

『THE ANYMAL』と同じくジャズやトリップ・ホップといった多様な音楽性を孕みながらも、全編から一貫して聴こえてくるのはゆるやかな退廃を纏ったブルース感覚。聴き進むほどに沈み込んでいくような、不穏な空気が漂うスモーキーな音像もまた共通。 *土田

KCEEの最近のフェイヴァリットは、主に劇判で多くの名曲を残しているこの作・編曲家だそう。特にお薦めは、フル・オーケストラで贅沢な南国風情を立ち上げる“Lujon”。『THE ANYMAL』同様、随所に散らばるエキゾな音がスパイスに。 *土田

THE CLAYPOOL LENNON DELIRIUM South Of Reality ATO/ソニー(2019)
今年の作品では、ショーン・レノンとプライマスのレス・クレイプールによるユニットの2作目も推薦。プログレ~サイケ趣味をビートルライクに増長させたサウンドを聴くことができる。ボートラには別掲のFTBのカヴァーも! *土田