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【西山瞳の鋼鉄のジャズ女】第24回 こんな時こそ、メタルを! オジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)とセパルトゥラ(Sepultura)の新作を聴く

メタラーのジャズ・ピアニストによるHR/HM連載

大のメタル・ファンとしても知られるジャズ・ピアニスト、西山瞳さんによる連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。〈メタラーのジャズ・ピアニスト〉の視点からHR/HMのおもしろさを綴っていただくMikiki屈指の人気連載は、もうすぐ2周年を迎えます。

昨今は、新型コロナウイルスによる影響がさまざまな業界に波及しどうにも落ち着かない毎日。今回は、そんな日々の中メタル聴取量が増えているという西山さんが、〈こんな時こそ、メタルを!〉の想いを胸に、近々にリリースされたHR/HMベテラン勢の新作を紹介してくれました。 *Mikiki編集部

★西山瞳の“鋼鉄のジャズ女”記事一覧

 


こんな時こそ、メタルを!

いやあ、2020年はじめから大変な出だしですね。
私も、規模の小さいジャズライブこそキャンセルにならないものの、レッスンしている学校の休校などが相次ぎ、自宅で過ごす時間が増えています。
私はまだ大丈夫なんです、毎日違う場所に演奏に行くし、応援して下さるリスナーの方々がいるから。しかし、イベンター、会場のスタッフ、音響さん、照明さんなど、普段から顔の見えない場所で支えてくれているスタッフは、キャンセルが続くと本当に大変なことになります。出口が早く見えればいいなと思っています。

落ち着かない日々の中、メタル聴取量が増えています。
こんな時こそメタルを聴きたくなるし、メタルを聴くべきだとも思うんですよね。

メタルは、怒りを代弁してくれる音楽。

音楽ジャンルは数多くあれど、怒りを体現する音楽は、やはりロック。
その中でも、メタルはマジで怒ってる。
「音楽は音を楽しむと書く。楽しいものだ」とよく言われますが、子どもの頃からその意見には疑問を持っていました。
もちろん楽しい時間も多いですが、私が今まで音楽に救われてきたのは、主に楽しい時間ではなかった。喜怒哀楽に寄り添ったり、その全てを増幅したり、自分の気づいていない感情に気付かせてくれる、豊かなアンプリファイアが音楽。メタルはしかも爆音で増幅してくれて、怒りと寄り添い、なおかつ癒してくれるのです。大声で!

怒りを代弁してくれる強い音楽を聴くと、闘志が湧きます。圧倒的なパワーに身を委ねると、心の持ち方、自意識が変わる。でも、自分が強くなったと勘違いしてはいけません。「弱い自分でも闘志はあるのだ! 奮い立たせるのだ!」と教えてくれる、それがメタルだと思っています。

そして、首を振ったり、動いたり、フィジカルと相当連動した音楽ですから、体に良い! もう一度言います、メタルは絶対体に良い!

 

ということで、今回はここのところよく聴いていた、2月リリースのベテランの新譜2枚を取り上げたいと思います。

 

セパルトゥラ『Quadra』

SEPULTURA Quadra Nuclear Blast/ワード(2020)

 以前にもこのコラムで書いたことのあるブラジルのバンド、セパルトゥラ、15枚目のフル・アルバムをリリースしました。

★セパルトゥラなどブラジリアン・メタルを取り上げた連載 第5回の記事

いやあ、格好良すぎて変な声が出ましたよ。ちょっとこれは参りました。まだ3月ですが、年間ベストに入れるぐらい好きです。
私、メタルを聴いていた高校時代に、友達に『Roots』(96年)を聴かされて、なんかヤバイものを聴いている気分になったというか、見てはいけないどこかの儀式を覗いてしまったような、不気味な怖さがあったんですね。
90年代以来全く聴いていなかったので、あまり思い入れもなく新譜をなんとなく聴いたら、ドチャクソに格好良くて、降参しました。

なんというか、とても洗練されているのに暴力性も研ぎ澄まされ、めちゃめちゃダイナミックなんですよ。聴いていてどんどん前のめりで展開を追っていく楽しさもあれば、純粋に頭を振って身を委ねる楽しさもある。
最初は鬼のように格好良いスラッシュかと思えば、7曲目“Guardians Of Earth”の頃にはいつの間にか壮大なプログレッシヴなサウンドに連れてこられて、8曲目“The Pentagram”なんてすごく緻密なインストゥルメンタル曲なんですが、セパルトゥラらしい野蛮なサウンドはそのままで、全然頭でっかちじゃない。これが超クールです。

そのあとのトラックでも、トライバルなサウンドをさらにOn、これぞセパルトゥラなサウンド、だけど新しい。暴力的なのが洗練されるって、書いていて意味がわかりませんが、とにかく前進しまくっているわけです。
2月頭の発売から、かなりヘヴィロテしています。

『Quadra』収録曲“Means To An End”

 

オジー・オズボーン『Ordinary Man』

OZZY OSBOURNE Ordinary Man Epic/ソニー(2020)

オジーの10年ぶりの新作。まずメンバーがすごくて、ガンズのダフ・マッケイガン(ベース)、レッチリのチャド・スミス(ドラムス)、それに加えてスラッシュ(ギター)に、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ(ギター)、なんとエルトン・ジョン(ヴォーカル/ピアノ)です。そして、ポスト・マローンのプロデューサーのアンドリュー・ワイアット(ギター)、何ですかこの布陣は……。

この新作、端的に言って傑作じゃないでしょうか。
クラシックなヘヴィ・ロックのにおいを残しつつ、ポップな抜けの良さと人懐っこさ、バランス感覚が見事にオジー。それは昔から変わらないかもしれませんが、今作は集大成的な内容にもかかわらず、全体的に音が超フレッシュな印象なんですね。おどろおどろしさと楽しさ、オーセンティックと現在進行形、両極を兼ね備えた、オジーの魅力全開なんですよ。

『Ordinary Man』収録曲“Under The Graveyard”
 

個人的な話ですが、随分前、20代半ばの時に、あるジャズ・ライターさんのインタビューで、彼女から〈ぶれず、頑なにならず〉と書いて頂いたことがありました。
それはとてもありがたい評価ではありましたが、同時にとても辛くなったというか、ちょっと落ち込んだ言葉でもありました。
というのは、私が当時ぶれず、頑なにならなかったのは、それしかできなかったからだと自覚していたからです。

でも、以来、〈ぶれず、頑なにならず〉という言葉は自分の目指すものの一つになっていて、オジーの新譜を聴いたとき、真っ先にこの言葉を思い出して、ちょっとグッときちゃいましたね。全然ぶれてなくて、頑なにならずに下の世代と音楽して、71歳にして最高のものを作っている!

オジーはヘヴィメタル黎明期の頃から常に先頭を切って走っていたヘヴィメタルを体現するアーティストですが、芸の基本は変わらずとも、非常に柔軟でいつも聴衆のことを向いていたと思います。それをこちらも知っているから、皆変わらずオジーが好きなんですよね。2015年のオズフェス(OZZFEST JAPAN 2015)は行きましたが、オジーのパフォーマンスも楽しかったし、観客全体の空気も本当に楽しかった。

ポスト・マローンとの“Take What You Want”なんて、まさかのコラボなのにちょっと異常に感動しますよ。
ポスト・マローン自体が、どこかのジャンルに属して存在する音楽業界の中で相当異質な存在ですが、その異質と伝説的な異質な存在であるオジーが、出会っちゃった。
異端は革新、レジェンドからつながる、エンターテイメントの強靭なつながりには、感動せざるを得ません。

ポスト・マローンとの“Take What You Want”
 
“Take What You Want”のMV
 

私の一押しは7曲目“Today Is The End”、これは本当に好き。
オジーらしいAメロ、特に2番のAメロの酩酊感からBメロにスコーンと抜ける感じが本当に持ち良いし、その後のギター・ソロに抜ける重厚さも古き良きロック。ここからパッとBメロに戻るこのキャッチーすぎるアレンジも、なんだかオジーの柔軟さとピュアさが引き立って、猛烈に感動します。
8曲目のリズムのフックも格好良いし、これはダフ・マッケイガンとチャド・スミスの価値ありまくり〜!とアガる一曲。

キリがないので一曲ずつは書きませんが、2020年の最重要アルバムになること間違いないので、ぜひ聴いてください。

 

私は2月にこれら二枚のアルバムを聴けて、本当に感激しています。

ベテランは芸の純度を高め、排他的にならず、保守的にならず、〈ぶれず、頑なにならず〉ができてこそのベテランなのだなと思いました。
私は今40歳ですが、年を重ねるにつれ、レジェンドの凄さをより実感しています。

 


PROFILE:西山瞳

1979年11月17日生まれ。6歳よりクラシック・ピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I'm Missing You』を発表。ヨーロッパ・ジャズ・ファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、横濱ジャズ・プロムナード・ジャズ・コンペティションにおいて、自己のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めてストックホルム・ジャズ・フェスティバルに招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。

以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、全世界約15,000エントリーの中から自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコード・ジャズ総合チャート1位、HMV総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自己のレギュラー・トリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『シフト』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカヴァーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、YOUNG GUITAR誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズ両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。

自己のプロジェクトの他に、東かおる(ヴォーカル)とのヴォーカル・プロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグ・バンドへの作品提供など、幅広く活動。横濱ジャズ・プロムナードをはじめ、全国のジャズ・フェスティヴァルやイヴェント、ライヴハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさの共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。

 


LIVE INFORMATION

3月13日(金)東京・新宿 Pit inn
※3月8日に新型コロナウィルス対応の一環で内容の変更が発表されました。チケットの払い戻しなど詳細は→ http://blog.livedoor.jp/hitomipf79/archives/52484306.html
西山瞳(ピアノ)、織原良次(フレットレス・ベース)、橋本学(ドラムス)
スペシャル・ゲスト:SAKI(ギター from Mary’s Blood) 牧山純子(ヴァイオリン)

3月14日(土)神奈川・茅ヶ崎 Storyville
西山瞳pianoトリオ with 小牧良平(ベース)、橋本学(ドラムス)

3月22日(日)東京・小岩 Cochi
デュオ with 馬場孝喜(ギター)

3月27日(金)東京・江古田 そるとぴーなつ
デュオ with 市原ひかり(トランペット)

3月29日(日)東京・中目黒 FJ’s
デュオ with maiko(ヴァイオリン)

★ライブ情報の詳細はこちら

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