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唯一無二のアイコン、ユキミ・ナガノ

2020年、そんな彼らのディスコグラフィーの新たな1行となる6枚目のアルバム・タイトル『New Me, Same Us』について、ユキミはこう説明する。「〈新しい私、同じ私たち〉、10年前やバンドを始めたときとはまったく違うように感じながらも、ユニット、そしてファミリーとして今も一緒にやり続けていること。この地球、そしてこの宇宙の一部であり続けながら、人生や物事の変化とともに変わり続けていくこと」――変わるものと変わらないもの。これは、リトル・ドラゴンが2006年のデビューから14年に渡りバンドとして常に違うサウンドを創造し革新し続けながらも、その根底に変わることのない音楽的なスタンスがあることをとてもよく表している。

自身の作品でも客演の作品でも、リトル・ドラゴンのサウンドの特長として人々を魅了するものは、何よりも鮮明でありながら豊かな表現力のあるユキミが持つ歌声だ。「二人ともヒッピーだった」という日本人の父とスウェーデン系アメリカ人の母の間にスウェーデンで産まれたユキミは、父からは〈ファイティング・スピリット〉を、母からは〈創造的な環境の中で自由に音楽をやり続ける勇気〉を学んだという。

型にはまらない両親の影響は、恐れることなく挑戦し進化し続けるユキミのヴォーカル・スタイルや、色彩豊かで自由に変化するファッション・スタイルにも受け継がれているように見える。楽器のように全体に溶け込んだかと思えば、くっきりと立ち上がって先駆してゆくその声は、どんな作品に参加しても埋もれることのない、唯一無二のアイコンとなっている。

ユキミ・ナガノが「Crack Magazine」のカヴァー・ストーリーを飾った際のドキュメンタリー映像。ナガノがファッションについて語る場面も

 

メンバー全員プロデュースもソングライティングもこなす

リトル・ドラゴンのバンドとしての起こりは、ユキミが高校1年のときに、先輩のフレドリック・ヴァリン(ベース)とエリック・ボーダン(ドラムス)と放課後にジャム・セッションをしたり、音楽を聴いたりしていたことに始まるという。そこにホーカン・ヴィレーンストランド(キーボード)を加えた4人は、今でもヨーテボリにある自分たちのスタジオに集まっては、アイデアを持ち寄ったりレコードを聴いてインスピレーションを得たりしながら、常に共同作業として曲作りをしている。

リトル・ドラゴンの2018年のスタジオ・ライブ映像

メンバー全員がプロデュースもソングライティングもこなすということも、彼らがバンドとしてのみならず、他のミュージシャンとのコラボレーションでも力を発揮できる理由だろう。「メンバー全員に共通するのは、シンセサイザーを愛していること。シンセサイザーは作れる音に限界が無いから。でも演奏した音も必ず曲に入れることで、人間的な温かみも感じられるようにしている」。そう語る4人によって作られるサウンドは、アルバムごとに進化しつつも耳なじみ良く、綿密でありながらも常に自然であり続けている。