カテゴライズ不能、混沌と洗練がせめぎ合うソーリー
ロンドン北西部のカムデンを拠点とする新世代のインディー/オルタナティヴ・ロック・バンド、ソーリーがデビュー・アルバム『925』を発表した。グランジからフォーク、R&B、ジャズ、エレクトロ、ノイズ……etcを飲み込んだカテゴライズ不可能なサウンドで、ファット・ホワイト・ファミリーやシェイムといったサウス・ロンドン・コミュニティーとも共鳴する彼らだが、Dazedが〈UKでいま最も独創的なギター・バンドのひとつ〉と称するように、欧米の音楽業界/メディアからの期待値はすこぶる高い。混沌と洗練がせめぎ合うソーリーの魅力を、5つのアングルから切り取ってみよう。
①ヒップホップ・カルチャーとも共振するユニークな活動スタイル
ソーリーは、7歳の頃からの幼馴染みだったアーシャ・ローレンツ(ヴォーカル/ギター/ベースほか)とルイス・オブライエン(ヴォーカル/ギター/ホーン/プログラミングほか)が中心となり2016〜2017年に結成。そこに同級生のキャンベル・バウム(ベース/サックス)、リンカーン・バレット(ドラムス)の2人が加わり、アルバムにはクレジットされていないものの、前身バンド=フィッシュ時代からの古い友人でもあるマルコ・ピニ(キーボード)も合流。現在は5人編成となっている。
最初のデモ音源は2017年にデジタル・リリースされた『Drag King/Prickz』で、ざらついた男女ヴォーカルの掛け合いと退廃的かつローファイな生音/打ち込みのコラージュが、同郷のウルフ・アリスに続く逸材としてインディー・ロック界隈で大きな反響を呼んだ。
また、同年11月にドロップした“Wished”では、スマッシング・パンプキンズにも匹敵するエレキ・ギターの爆発とエイフェックス・ツイン的なビートメイキングに胸がざわめいたものだが、ソーリーの真骨頂は〈宅録→即アップロード〉のヒップホップ的なマインドにこそある。その証拠に、2017年には複数のインタールードと共に構成された実験的なミックステープ『Home Demo/ns Vol I』を、翌年3月にはその続編となる『Home Demo/ns Vol II』をリリース。小綺麗にまとまったサウンドよりもその時の〈気分〉を瞬間パッケージングすることを重視し(良い意味で優柔不断?)、自分たちの本能の赴くまま断続的に楽曲を発表していくスタイルは、ラップ全盛の時代に生きるロック・バンドとして実に理想的だ。