Page 6 / 6 1ページ目から読む

5. YNW BSlime “Just Wait”

天野「今週最後の曲になりました。YNW・ビースライムの“Just Wait”です。今週は2Kベイビー“MAD”YN・ジェイ“Biggest Fan”など、いろいろなシーンの若手ラッパーたちの新曲がよかったなと。そのなかから、ビースライムの曲を紹介しましょう」

田中「YNW・ビースライムは、フロリダ州ギフォードの若手ラッパーであるYNW・メリー(YNW Melly)の弟で、〈YNW〉コレクティヴのメンバーです。〈YNW〉とは、〈Young Nigga World〉の略。ちなみにメリーは2人の殺人罪で起訴され、現在裁判中だとか……」

天野亡くなったのはYNWの2人だそうですから、すさまじい世界です。メリーは“Murder On My Mind”(2018年)という曲で事件のことをラップしていますし。いまのアメリカにおけるラップ・ミュージックと暴力との関係性には社会の構造的な問題もあるので、いろいろと考えさせられますね。で、ビースライムはまだ13歳。昨年デビュー・アルバム『BABY GOAT』をリリースました」

田中「ラップ・シーンの低年齢化、すごいですね……」

天野「そうなんですよね。この“Just Wait”でも聴けるように、甘い歌声を活かしたエモい歌モノトラップ路線を邁進しているのがビースライム。“Just Wait”では、〈兄貴は俺のやり方に疲れている、でも大丈夫/いつか変わるよ、だから待っていて/引退はできない、これは俺の運命/事件で人生が一変した兄貴を見て、信じられないぜ/兄貴はクレイジーで、シーンで音楽を作っていた〉と、メリーへの祈りを込めて歌われています。ビデオも裁判をテーマにしたものですね。とはいえ、メリーのような状況には巻き込まれず、なんとかラッパーとしてのキャリアを順調に歩んでほしいものです」