フー・ファイターズ、通算10作目となるアルバム『Medicine At Midnight』のリリースを記念して、タワーレコードではフリーマガジン〈別冊TOWER PLUS+〉を発行! ここではその中面に掲載されたインタビューを掲載いたします。別冊TOWER PLUS+は、タワーレコード全店にて2月5日(金)より配布中です!
※タワーレコードオンラインは除きます。※別冊TOWER PLUS+は無くなり次第終了となります。※天候や交通事情により配布が遅れる場合がございます。

FOO FIGHTERS 『Medicine At Midnight』 RCA/Sony Music Japan International(SMJI)(2021)

結成25周年を迎えたフー・ファイターズが、10枚目となるニュー・アルバム『メディスン・アット・ミッドナイト』をリリース! デイヴ・グロールへインタビューを敢行した。

〈ロック〉という音楽ジャンルが誕生して半世紀以上も経過し、各年代に〈ロック〉を象徴する多くのバンドが存在する。フー・ファイターズは、2000年代を代表するモンスター・ロック・バンドの1つに間違いなく入ってくるだろう。95年にフー・ファイターズ名義で『フー・ファイターズ』をリリースして以来25年間、世界中を回り続けながらも、ロック史に輝く数々の大ヒットアルバムを生み出し、その生みの苦しみとも対峙しながらバンドを続けてきた彼ら。今回はデイヴ・グロールに、紆余曲折を繰り返しながらも前に進んできた25年間を振り返りつつ、10作目となるアルバム『メディスン・アット・ミッドナイト』の制作の過程を語ってもらった。

――結成25周年おめでとうございます! フー・ファイターズのこれまでの25年をひと言で表現するとしたら、どのような言葉になりますか? またバンドの未来のヴィジョンについても聞かせてください。

「25年という年月はあっという間でもあったし、長い年月でもあった。大変なことよりも本当に素晴らしいことの方が多かった。この25年を振り返ってみると、これって俺の人生の半分に相当するんだよね。自分の半生をパット、ネイト、テイラー、ラミ、クリスと過ごしてきたわけだ。だから単なるバンド以上の意味があるよ。人生でもあるし、ファミリーでもあるし、親友でもある。25年前の自分たちの写真を見ると、ただのクソガキなんだよね(笑)。当時、このバンドがこれほど長く続くなんて正直思ってもみなかった。だから、夢が実現したような感じなんだ。

バンドの未来についてはね、わからないな。でもそれが最高なんだよ。俺は常にこんな風に思ってる。自転車に乗って、長い丘を登ってる時って、丘の頂上のことは考えないよね。自転車の前輪を見て、ひたすら自転車をこぎ続けるだけだよね。最終的に丘の頂上にたどり着いたら、休憩できるわけだけど。だから、今の俺たちは丘の頂上に向かって、まだ自転車をひたすらこぎ続けてる状態なんじゃないかな(笑)」

――ニュー・アルバムはめちゃくちゃノリが良くて踊れる、ロック・ダンス・アルバムに仕上がりましたね。結成25周年をお祝いするような意味合いもあるのですか?

「2020年は25周年イヤーになるし、俺たちにとってビッグな年になるはずだったんだよ。だから、今までにやったことのないことをやりたいと思ったんだ。それでいろいろ昔の音楽を聴いてみたり、パンク・ロックやハード・ロックを聴いてみたり、素敵なバラード・スタイルの曲を聴いてみたりしたんだ。そこで気づいたのは、俺たちは今までにグルーヴをメインにしたアルバムを作ったことがないっていうことだったんだよ。俺自身小さい頃から、ダンスしたくなるようなロックンロールを聴いて育ったんだ。スライ&ザ・ファミリー・ストーンとかデヴィッド・ボウイ、ローリング・
ストーンズのような、ロックなんだけど、ファンクやダンスの要素が入った音楽を好きで聴いてたんだ。だけど今までそういう音楽にチャレンジをしたことがなかったんだ。それで決めたんだよ。メロウで素敵な音楽を作るんじゃなくて、昔のロックのように、パーティのノリのアゲアゲの音楽を作ろうってね。

それで2019年9月にレコーディングを開始して、2020年1月にレコーディングは終わってた。さあ、これから25周年イヤーだ。パーティしよう。世界中を回ろう。スゴくデカいことになるぞ。……なんて思ってたら、すべてが止まってしまったんだよね(苦笑)」

――新型コロナウィルスの影響ですべての予定が狂ってしまったんですね。

「本当そうだよ。でも実は今回、俺がスゴく影響を受けたことがあってね。それはナンディというイギリスの10歳の女の子と俺との間で繰り広げられたドラム・バトルなんだ。ナンディのことは、TVでニルヴァーナの曲“In Bloom”を叩いてたのは見たことがあってね。10歳なのにスゴいドラマーだと思ったよ。彼女のエネルギーと情熱、それにドラムを叩いてる時に叫ぶのにもヤラレてしまったしね。その女の子が俺にドラム・バトルで挑戦してきたんだ」

「ちなみに、彼女に会ったことは一度もないし、知り合いでもない。そんな俺たちがこれをやった唯一の理由は、楽しみたかったからだし、その楽しさをみんなと共有したかったからなんだ。そこで俺は、音楽っていうのはこういうことのためにあるんだって、改めて思わされたよ。

俺たちは他の人たちに聴いてほしくて音楽を作るし、他の人たちに歌ってほしくて音楽を作るし、他の人たちに踊ってほしくて音楽を作ってる。それがフェスであろうと、5000人規模のライヴ会場であろうと、一人でいる自分の部屋の中であろうと、ワインを飲みながら踊ってる場面であろうと変わりのないことで、音楽を通してそういう楽しさを共有することこそ、俺たちがやるべきことなんじゃないかって思ったんだ。ナンディとドラム・バトルを始めてすぐに、俺たちのアルバムを出さなきゃってことに気づかされたよ。みんなが必要としてるのは、現実から逃避すること、解放されること、幸せを感じること、喜びを感じることで、音楽はそのためにあるわけだし、俺たちはそのために音楽を作ってる。この気づきこそが、2020年にもらった最大のインスピレーションになったね」

――ワールドツアーが行えるようになったら、また是非日本にも来てください。その際は是非タワーレコードにも来てください。お待ちしております。店頭での大プッシュ以外に、タワーレコードにやってほしいことはありますか?

「何だろう……。日本の女の子とのドラム・バトルかな(笑)」

これまでの25年という歴史の中で、〈オルタナ〉と評されてきた自身たちの音楽が、近年は、ロックの歴史や様々なロックのエッセンスを取り込んで昇華した〈王道〉なロック・アルバムにシフトしてきた感が強かったが、今作は更なる深化を果たし、〈ロック〉というフィールドの神髄(原点)に立ち返ったフー・ファイターズ流のロックンロールアルバムと言えるだろう。1人でも、大人数でも、体が自然に乗ってしまうそんな魅力に是非はまってみてほしい。