3. Ebhoni “X-Ting”
天野「3位は連載初登場の新鋭、エボニーの“X-Ting”です。エボニーはカナダ・トロント出身のR&Bシンガーで、17歳のときに自主制作のEP『Mood Ring』(2017年)をリリースしています。浮遊感のあるR&Bサウンドと深みの歌声、ラップ風のフロウで注目されました」
田中「Instagramなどのプロフィールに〈ホット・ギャル〉と書いているのがいいですよね(笑)。2019年のシングル“TGM”以降はダンサブルなビートで積極的に歌っていて、昨年の“MIA”や今年の“Hit This”はかなりダンスホール・レゲエ風です」
天野「“Hit This”を手がけているのは、ダンスホール系のビートで最近注目されているマイアミのプロデューサー、イジービーツ(IzyBeats)ですね。今回の“X-Ting”もダンスホール/アフロビーツ風で、プロデューサーはメルナ(Merna)と、チーフ・キーフとの仕事で知られるLAのDP・ビーツ(DP Beats)。DP・ビーツは殺人未遂の容疑をかけられたこともある、ちょっとヤバい人(笑)。トラップのビートも組み入れながら、ギターのサウンドなどからはアフロビーツっぽさを感じさせます。ちなみに、曲名の〈ting〉とはカリブ系のスラングで〈thing〉の意味。というのも、エボニーはカリブ系だそうで、昨今のルーツ回帰やダンスホールの潮流を受けて自身のルーツを打ち出すようになったのでしょうか。以前よりも、いまの音楽性のほうが僕は好きです。あと、〈元カレが電話をかけてくる〉という歌詞が偶然1位の“Calling My Phone”と共振していて、ちょっとおもしろいと思いました」
田中「デュア・リパは“New Rules”(2017年)で〈元カレの電話に出ちゃダメ〉と歌っていましたが、エボニーは着信に応じたのでしょうか(笑)。“X-Ting”は今年リリースされるデビューEPに収録されるようですね。変化を遂げたエボニーの音楽を聴くのが楽しみです」