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Laura Mvula “Church Girl”

天野「続いて、ローラ・マヴーラの“Church Girl”。ローラ・マヴーラはUKのR&Bシンガーで、アルバム『Sing To The Moon』(2013年)『The Dreaming Room』(2016年)はいずれも高い評価を受けました。スナーキー・パピーやロバート・グラスパーの作品に参加するなど、国境を越えた活躍をしていることも優れたシンガーである証拠。この“Church Girl”は、7月2日(金)にリリースされるサード・アルバム『Pink Noise』からのシングルです」

田中先に発表された“Safe Passage”にも同じニュアンスがありましたが、“Church Girl”は80年代のR&Bやシンセ・ポップ色が強い楽曲ですね。ゲート・リヴァーブを効かせたドラムのサウンドと煌びやかなギター・カッティングに、ウキウキせずにはいられません。彼女自身、ニュー・アルバムについて〈私は踊る喜びを再発見したんです。いま、ダンスせずにはいられません〉と語っているようです(笑)。この曲は、まさに最高のダンス・ポップ。うーん、端的に言って、めちゃくちゃ好き……。個人的にはこの曲が〈Song Of The Week〉でもよかったですね!」

天野「そうですか? この超80sでノスタルジックなダンス・サウンドが大好きっていうのも、めちゃくちゃ亮太さんらしいなと思いました(笑)」

 

WSTRN “Mama Stay”

天野「続いては同じUKのアーティストですが、だいぶ趣のちがう楽曲です。この“Mama Stay”は、英ウェスト・ロンドンのWSTRN(ウェスタン)の新曲。WSTRNのメンバーは、ハイレ(Haile)、ルイ・レイ(Louis Rei)、アケレ・チャールズ(Akelle Charles)。2015年のデビュー・シングル“In2”でヒットを飛ばしたトリオで、スタイルはアフロスウィング(afroswing)です。WSTRNは、アフロスウィング版のミーゴスというか……(笑)」

田中「キャラが立っている感じは似ていますね。アフロスウィングについては、天野くんが〈アフロビーツを知るための10曲〉で紹介していました。UKで発展した音楽で、アフロビーツと同様にダンスホール風のビートが特徴。WSTRNのサウンドも、まさにそうです。この“Mama Stay”では、トラップ調のハイハットも入っていて、サックスのサンプルや西アフリカ音楽的なギターの音色が印象的。甘い声で歌い上げるハイレ、歌とラップを行き来するエレガントなアケレ、太く低い声でラップするルイと、三者三様の個性を楽しめるのもWSTRNの魅力だと思いました」

 

JAE5 feat. Skepta & Rema “Dimension”

天野「続けて、こちらの曲もアフロスウィングです。ジェイ5がスケプタとレマをフィーチャーした“Dimension”。ジェイ5といえば、僕が大好きなアフロスウィングのドン、J・ハス(J Hus)の楽曲を手掛けるプロデューサーです。“Did You See”(2017年)など、ハスの代表曲はジェイ5の仕事ですね」

田中「この“Dimension”は、ジェイ5のソロ・デビュー・シングル。フィーチャーされているスケプタは言わずと知れたUKラップ界のスターで、レマはナイジェリアン・ポップの新星。先ほども言及した〈アフロビートを知るための10曲〉でも取り上げられていましたね。タイトなスケプタのラップと伸びやかなレマの歌が好対照で、ジェイ5のプロダクションと見事に溶け合っています。細かいリズムの作り込みとリリカルなメロディー、奥行きのある音像にはジェイ5の手腕を感じられますね」

天野「なお、MVはガーナで撮ったものなのだとか。近年注目されているアフリカン・アートの潮流とも共振するような、意味深長で美しく、詩的な映像作品ですね」