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16. illuminati hotties “MMMOOOAAAAAYAYA”


田中「サラ・タディン(Sarah Tudzin)を中心としたカリフォルニアのパンク・バンド、イルミナティ・ホティーズ。彼女たちの“MMMOOOAAAAAYAY”は、切れ味の鋭いギターと弾んだビート、さらにキャッチーなコーラスが最高なパンク・ソングです。この曲は、タディンがホープレス・レコーズ傘下に立ち上げた新レーベル、スナック・シャック・トラックス(Snack Shack Tracks)からリリースされています。彼女は、以前契約していたレーベルのタイニー・エンジン(Tiny Engines)との間にトラブルがあったのですが、その詳細については、この次にリリースされた“Pool Hopping”を取り上げた2011年6月11日の〈PSN〉をご覧ください」

天野「この曲、ディアンジェロの“Untitled (How Does It Feel)”(2000年)のミュージック・ビデオへのオマージュを思いっきりやっているMVもいいんですよね。半裸のディアンジェロを艶めかしく映した“Untitled (How Does It Feel)”はもともとかなり議論を呼んだビデオで、“MMMOOOAAAAAYAY”のビデオではそれを逆手に取って、女性であるがタディンが普段向けられているセクシャルな眼差しを茶化したものになっている。切れ味の鋭いユーモアは、まさに彼女が掲げる〈Tender Punk〉!」

 

15. Lucy Dacus “Hot & Heavy”


田中「15位は、リッチモンド出身のシンガー・ソングライターであるルーシー・デイカスの“Hot & Heavy”。フィービー・ブリジャーズ、ジュリアン・ベイカーとのボーイジーニアスでの活動でも知られています。彼女が6月末にリリースしばかりの傑作『Home Video』からのシングルのなかでも、突き抜けてポップなのがこの曲です」

天野「まるでブルース・スプリングスティーンのようなバンド・サウンドが力強いですよね。ルーシーの最大の魅力のひとつである歌詞も素晴らしくて、〈あなたの両親の家の地下でのホット&ヘヴィー〉とセンシュアルなイメージを喚起しつつ、〈あなたはスウィートだった/いまは群衆のなかの爆竹のよう/目を逸らそうとしてもできない/離れようとしてもスタートに戻ってくる〉と痛みに満ちた過去に囚われていることを歌い上げる。ビターだけど、胸に迫るナンバーです」

 

14. Måneskin “ZITTI E BUONI”


田中「彼らのブレイクは、2021年最大の番狂わせでしたね。イタリア、ローマ出身のロック・バンド、マネスキン。5月に〈ユーロ・ヴィジョン・ソング・コンテスト〉で優勝、この“ZITTI E BUONI(黙っていい子にしていな)”のパフォーマンスが話題を呼び、現在も複数の楽曲が各国のチャートを席巻中です。シーンをひっくり返したと言っても過言ではないでしょう」

天野「ぶっとばされましたね! ロック不遇の時代と言われることも多い現在のシーンに、こんなにヘヴィーでパワフルでシンプルなロックンロールで殴り込みをかけたことが痛快でした。とにかく、クイーンのフレディ・マーキュリーをほうふつとさせるヴォーカリストのダミアーノ・デイヴィッド(Damiano David)のカリズマティックでセクシーでグラマラスなアイコンっぷりが最高。僕はすっかりマネスキンのファンになっちゃいました」

 

13. The Weather Station “Parking Lot”


天野「ウェザー・ステーションは、昨年から続く北米インディー・ロック・シーンの勢いを象徴していますよね。カナダ、トロント出身のタマラ・ホープ(Tamara Hope)によるバンドです」

田中「13位は、彼女たちの“Parking Lot”です。〈気候変動がもたらす精神的な負荷や不安〉をテーマにした新作『Ignorance』からのシングルで、フリートウッド・マックを想起させるマチュアで洗練されたロック・サウンドと室内楽的なストリングスのアレンジが印象的ですね」

天野「〈クラブの外、駐車場で待っていた/鳥が数羽、羽ばたいて屋上に降りるのを見た〉というラインから始まるリリックは、まるで小説か映画のよう。サウンドだけでなく、ホープのストーリーテリングとアクチュアルなテーマ性にぜひ注目してください」

 

12. Arlo Parks “Hope”


天野「〈PSN〉が以前から注目していた才能が、アーロ・パークスです。僕が今年もっともたくさん聴いた作品のひとつは、彼女のデビュー・アルバム『Collapsed In Sunbeams』なんですよね。12位に選んだ“Hope”は、同作のなかでも特に感動的な曲です」

田中「〈あなたはあなたが考えるほど孤独じゃない/わたしたちはみんな傷を負っている、辛さはわかる〉と傷ついた者にそっと寄り添う、パークスのエンパシーが表現された優しいソウル・チューンですよね」

天野「何回聴いても泣けます……。バイセクシュアルである自身の性的指向について率直に歌い、音楽と社会的な活動によってLGBTQ+コミュニティーやメンタル・ヘルスに問題を抱える若者たちの支えになっているパークスは、英サウス・ロンドンのシーンを超えて国際的に重要な存在になっていると思います」

 

11. SZA “Good Days”


田中「昨年に続いて、TikTok発のヒット・ソングが生まれた2021年。SZAが昨年末にリリースしたこの“Good Days”も、TikTokやストリーミング・サービスでヴァイラル・ヒットした曲でした」

天野「そんな背景を抜きにしても、聴き手を夢見心地にさせる幻想的な音像と、とろけるようなメロウネスに聴き惚れちゃう曲ですよね。特に、ディレイがかかったギターの音色といったら! メロディ―を自由自在に歌うSZAのヴォーカリゼーションも、ドリーミーで美しい。超絶技巧のマルチ・プレイヤー、ジェイコブ・コリアー(Jacob Collier)によるコーラスも最高です。過去の恋愛の痛みと共に、希望も滲んだこの曲。コロナ禍による閉塞感が高まっているいま、SZAの歌が広く受け入れられたのは納得です」